全ての1等星が見れる範囲はどこからどこまでなのだろうか?

 先日は日本から見て最も明るい周極星(1年中見ることのできる恒星)はなんなのかについて書いてきましたが本日は全ての1等星を見ることのできる範囲について書いていきます。

 

1. 赤道に近いほど多くの恒星が見え、恒星の場合は天の赤道に近いほど見える範囲は広くなる

 周極星として見える恒星の範囲は緯度が高くなればなるほど広くなりますが反対に見ることのできない恒星の範囲も広くなり、北極点の場合だと天の赤道よりも北の恒星は全て周極星となりますが南の恒星は全く見えなくなります。

 反対に赤道直下だと全ての恒星が観測可能となりますが反対に周極星となる恒星は全くなくなるため、一年中見ることのできる恒星は存在しなくなります。

 そして、恒星の方に話を移しますと天の赤道に近い恒星ほど地球から見える範囲は広くなり天の赤道直下に位置している恒星は地球上のどの場所からでも見ることができますが反対に周極星として見える場所は一切なくなります

 例えば2等星で最も天の赤道に近いオリオン座のミンタカ(三つ星の一つでリゲル寄りの恒星)の赤緯-00°17′57″とほぼ天の赤道直下に位置しておりミンタカを見ることのできる範囲は北緯89°42′03″よりも南の範囲であります。これは北極点から33.2 kmまでの範囲のみで見えず、これ以外の範囲では見ることが可能となっています。

 つまり、ミンタカが見れない範囲は地球上のわずか0.0007 %の面積だけとあり、それ以外の場所ではミンタカを見ることが可能となっています。

 反対にミンタカを周極星としてみるためには南緯89°42′03″よりも南に行く必要があり、ミンタカを周極星としてみることのできる範囲はほぼ無いといえます(こちらも0.0007 %)

 その一方で天の赤道から最も遠いポラリス赤緯+89°15′51″なので南緯00°44′09″よりも南の位置では見ることができなくなり、これは地球の総面積の49.4 %に相当します。つまり、ポラリスを見ることのできる範囲は地球の総面積の半分強程度しかなくポラリスは最も周極星として見える範囲は広いものの同時に見えない範囲もかなり広いことが分かります。

 ちなみにポラリスを周極星としてみるためには北緯00°44′09″よりも北に行けば良く、この範囲は勿論地球上の49.4 %に相当します。

 以上のことより、ポラリスが周極星でも一年中見えないわけでも無い範囲はわずか1.2 %にしか過ぎず地球上の大半の地域ではポラリスが周極星、または一年中見えない恒星となっています。

 

2. 1等星が見える範囲

 次に1等星がどこまで見えるかについて書いていきます。昨日は最も北に位置しているカペラと最も南に位置しているアクルックスについて書いてきましたが本日は21個全ての1等星について書いていきます(-1等星、0等星も無論含んでいる)。

 1等星の見える範囲と周極星として見える範囲は以下の表にまとめました。

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 この表から天の赤道に最も近い恒星は赤緯+05°13′29″のプロキオンであることが分かり、反対に天の赤道から最も遠い恒星は赤緯-63°05′57″のアクルックスであることが分かります。

 そして、天の赤道よりも北に位置している恒星は10個南に位置している恒星は11個であるため、ほぼ均等に分かれています。しかし、南側に位置している恒星の方が明るいものが多く、現に最も明るい恒星であるマイナス1等星であるシリウスカノープスは両方とも南側に位置しています。

 また、ここからはこの表の見方を例を挙げて書いていきます。ここでは最も明るい恒星であるシリウスについて書いていきますがシリウス赤緯-16°42′58″であり、見ることのできる範囲は北緯73°17′02″以南となっています。

 これはシリウス北緯73°17′02″よりも南に位置している地域で見ることが可能であることを意味しており、これよりも北に位置している場所ではシリウスを見ることはできません

 しかし、これほどまでに緯度の高い地域はシベリアの北端やグリーンランド北部程度と非常に限られているため、地球上のほぼ全ての陸地でシリウスを見ることが可能となっています。

 また、周極星として見える範囲は南緯73°17′02″以南と書いていますがこれは南緯73°17′02″よりも南の地域ではシリウスは一年中沈まないことを意味しており、この範囲に含まれる陸地は南極大陸しかありません。つまり、南極大陸以外の陸地ではシリウスはかならずどこかで沈むこととなり、一年中見えることは決してありません。

 以上がシリウスの例となりますがここからはどの恒星も見える範囲について書いていきます。最も広範囲で見ることの難しい恒星は高緯度側の恒星であるため、北はカペラ南はアクルックスであります。そして、これらの恒星を見ることのできる範囲はそれぞれ南緯44°00′07″以北北緯26°54′03″以南であるため、この両方の条件を満たしていればどの恒星も見ることが可能となります。

 つまり、南緯44°00′07″~北緯26°54′03″の範囲にあればどの恒星も見ることが可能となり、全1等星を見るために移動する必要性は無くなります。更に南緯26°54′03″以南であれば周極星として見える恒星が存在してくるため、南緯44°00′07″~南緯26°54′03″の場所であれば全ての1等星を見ることが可能となる上に周極星として見える恒星も存在するようになります

 その一方で北半球で周極星として見える1等星が存在するようになるには北緯44°00′07″以北である必要があるため、これよりも南にいれば周極星として見ることのできる恒星は無くなります。加えて北緯26°54′03″以北ではアクルックスが見えなくなるため、全1等星を見ることが不可能となり北緯26°54′03″~北緯44°00′07″の範囲では周極星が無くなる上に全1等星を見ることも不可能となります

 残念ながら日本の大半の地域もこの範囲に位置しているため、このような状況となり、北緯35°地点ではアクルックス, リギル・ケンタウルス, ハダル, アケルナルを全く見ることはできず、周極星となる恒星もありません。

 このように最も北にある恒星の赤緯は最も南にある恒星のものと比較すると低いため、南半球のほうが1等星の観測には有利となります。