日本で一年中見ることのできる恒星の中で最も明るい恒星はどの恒星なのか?

 本日は一年中見ることにできる恒星、つまり周極星について書いていきます。

 

1. 一年中見える周極星 

 周極星とは一年中観測することのできる恒星のことであり、いかなる時でも地平線下には沈みません。例えば現在の北極星であるこぐま座α星は北半球のほぼ全域で周極星となる恒星であり、日本ではどの季節でも観測することができます。

 しかし、反対にこぐま座α星は南半球のほぼ全域で観測することは不可能であり、その理由はいかなる時でも地平線から上に出ないからであります。

 このようにとある地域で周極星である恒星は別の地域では必ず見えない恒星となっており、高緯度側に位置している恒星ほど周極星である範囲が広くなっています。それは同時に見えない地域も広いことも意味しています。

 例えば赤道直下では周極星となる恒星は存在しませんが同時に一年中見ることのできない恒星も存在しておらず、どの恒星でも観測することは可能となっています。

 その一方で北極点では天の赤道よりも北に位置している恒星は全て周極星となっていますが反対に天の赤道よりも南に位置している恒星は一年中観測することはできません。当然南極点ではこの逆となっており、天の赤道よりも南に位置している恒星は一年中観測することはできますが反対に天の赤道よりも北に位置している恒星は一年中観測することはできません

f:id:Baikalake:20200111222849j:plain

A,Bの両メッシュがかぶっている部分は一年中見える範囲で両方ともかぶっていないところは一年中見えない範囲である

 上図は恒星が見える範囲を図示したものであり、A地点にいる場合に見える範囲は黄色のメッシュで示しています。そして、半日たって反対方向に移動した地点をBとします。B地点で見える範囲は緑のメッシュで示しています

 このとき、両方ともかぶっている範囲はいかなる時でも見ることのできる領域であり、この領域に位置している恒星は周極星として見えます反対に両方とも無いところはいかなる時でも見えることはできません

 これが恒星の見える範囲を説明したものでありますがここからは緯度によって周極星として見える範囲の計算式を書いていきます。

 まず北半球について書いていきます。北半球で緯度θ度の地点での周極星の範囲の式は以下のようになっています。

90-θ 度以上

 この式の意味を例を挙げて書いていくと北緯30度で周極星として見える範囲は赤緯(恒星の緯度)60度以上であることを意味しており、北緯30度では赤緯が60度以上の恒星が一年中見えます。また、北緯45度の場合は赤緯45度以上北緯60度以上の場合は赤緯30度以上、そして、北緯90度、つまり北極点では赤緯0度以上、要するに天の赤道より北の恒星を一年中見ることが可能となっています。

 また、南半球での式は

θ-90 度以下

となっており、南緯30度(θ=30)では赤緯-60度以下の恒星が一年中見え南極点では赤緯0度以下の恒星、つまり天の赤道よりも南の恒星を一年中見ることができます

 

2. 各地点での周極星

2.1 1等星以上の恒星が周極星として見える限界緯度

 1等星以上の恒星の数は21個あり、この中で最も北に位置している恒星は御者座のカペラであり、最も南に位置している恒星は南十字座のアクルックスであります。そして、カペラの赤緯+45°59′53″であり、アクルックスの赤緯-63°05′57″であります。

 そのため、カペラの場合は北半球で優勢となっており、反対にアクルックルは南半球で優勢になっているため、それぞれの緯度に合わせた計算式を用いていきます。

 初めにカペラについて書いていきますがカペラを一年中見ることのできる緯度の南限を北緯θと置くと以下の式が成り立ちます。

90°-θ = 45°59′53″ 

 この式を逆算しますとθは44°00′07″となり、ほぼ北緯44°線上となります。つまり、北緯44°よりも北の地点ではカペラを一年中見ることができ、この緯度の範囲には日本もほんの一部ではありますが含まれています。

 また、この緯度よりも少し北に位置している都市にはフランスのボルドー(44°50′19″)やイタリアのヴェネツィア(45°26′15″)、カナダのオタワ(45°25′29″)、満州ハルビン(45°45′)などがあります。

 つまり、これらの都市からではカペラがギリギリではあるが一年中見ることができ、これは1等星以上の恒星を一年中見ることが可能であることを意味しています。

 次にアクルックスについて書いていきます。アクルックスの場合も南半球の式を同じように用いて求めますと周極星の北限は南緯26°54′03″となり、これよりも南の地点ではアクルックスが一年中見ることができます

 そして、これ以上書きますと記事が長くなるのでこの緯度に位置している代表的な都市の紹介は省きますがアクルックスの方がカペラよりも天の赤道からの距離が遠いため、南半球で1等星以上の恒星が周極星として見える範囲は広くなります。

 反対にこれらの緯度に挟まれた地域では1等星以上の恒星を周極星としてみることは不可能となっており、日本のほぼ全域もこの範囲の中に入っています。

2.2 日本で最も明るい周極星

 日本は意外に広範囲であり、南は南回帰線よりも南に位置しており、北は北緯45°よりも北に位置しています。そのため、どこが日本かというとかなり困るため、初めに東京から書いていきます。

 しかし、東京といってもまだ範囲が広いため、今回は新宿区役所の位置で考えていきます。新宿区役所の緯度は北緯35°41′38″であり、この緯度では前述したようにカペラを周極星としてみることはできません。

 そのため、新宿区役所からだとどの1等星も周極星では無く、必ずどこかで地平線上に沈んでしまいます。つまり、最も明るい周極星は必然的に2等星以下の恒星となりますがここで2等星で最も北に位置している恒星から考えていきます。

 2等星で最も北に位置している恒星は言うまでも無く北極星であり、北極星赤緯は+89°15′51″であるため、北緯0°44′09″よりも北の位置で周極星として見えます。つまり、北極星は東京はおろか非常に赤道に近いシンガポールでも周極星となります(ほぼ地平線上となるため本来の明るさでは見えないが)。

 しかし、2等星の中には当然北極星よりも明るい恒星も存在しており、新宿区役所からの周極星で北極星よりも明るいものは2つあります。

 それは両方とも北斗七星の恒星であり、おおぐま座αのドゥーベおおぐま座ε星のアリオトであります。ドゥーベの地球から見た明るさは1.79等、アリオトは1.77等であるため、アリオトのほうが若干ではあるが明るく、新宿から見て最も明るい恒星はアリオトになります。

 ちなみにアリオトの赤緯は+55°57′36″、ドゥーベは+61°45′04″であるため、周極星として見える範囲はそれぞれ北緯34°02′24″以上、北緯28′14′56″以上となります。つまり、北緯34°02′24″よりも緯度の低い九州ではアリオトは周極星としては見えず、最も明るい周極星はドゥーベとなり、更に緯度の低い沖縄ではポラリス(北極星)が最も明るい周極星となります(九州では一部アリオトが周極星となる)。

 以上のことより、日本で最も明るい周極星は緯度によって4通りもあり、北端近くではカペラ東北や関東などではアリオト四国、九州ではドゥーベ(一部アリオト)、そして沖縄ではポラリスが最も明るい周極星となります。

 また、参照までにドゥーベとアリオトの位置を図示します。

f:id:Baikalake:20200111233312j:plain

ドゥーベとアリオトの位置