現在の北極星よりも天の北極に近づいた恒星はどのような恒星なのだろうか?

 本日は現在の北極星以上に天の北極に近づいた恒星について書いていきます。

1. 年月をかけて変化していく北極星

 北極星とは天の北極上に位置している恒星のことであり、この天の北極上に位置している恒星は動くことはありません。

 しかし、完全に天の北極上に位置する恒星は存在せず、現在の北極星も若干ずれているため、現在の北極星も全く動かないわけでは無く若干ではあるが天の北極を中心に動いており、真の北極星とは言えません(そのため、天の北極に最も近いある程度明るい恒星のことを北極星と呼ぶ)

 加えて地球の天球に対しての地軸の延長線上、つまり天の極点(天の北極、南極)は歳差運動という運動によって変化するため、北極星も永遠に同じ恒星というわけでは無く長い年月をかけるとだんだんと変化していきます

 例えば現在の北極星こぐま座α星でありますが年月をかけると天の北極の位置も変化しますので当然北極星も変化します。現在から100年後までにかけてはこぐま座α星は天の北極に更に近づくようになりますがこれよりも後になると天の北極からは遠ざかるようになり、1,100年後になるとケフェウス座γ星がこぐま座α星よりも天の北極に近づきます

 そのため、1,100年後になるとこぐま座α星はもはや北極星では無くなり、代わりにケフェウス座γ星が北極星となります。そして、その後も天の北極の位置は変わり続けるため、北極星も代々変わっていき、ケフェウス座γ星の後はケフェウス座β星、その後はケフェウス座α星、デネブ、はくちょう座δ星、ベガ、りゅう座α星、こぐま座β星の順に変わっていき、25,800年後には再びこぐま座α星が北極星となります。

 このように北極星は地球の歳差運動により代々変化していきますが長い年月がたつと恒星自身の移動も無視できなくなるため、この周期が永遠に続くわけではありません

 例えば60,000年前には現在の時点で天の北極とは全く関係の無い位置にあるアルクトゥルス北極星であったことがあります。

 以上のことより、このような経緯があるため数十万数百万年前の北極星の予想を立てることは非常に難しく、せいぜい数万年程度しか立てられません。

 そして、今回はこの数万年間で天の北極に最も近づいた恒星について書いていきます。

 

2. 最も天の北極に近づいた恒星はどのような恒星なのだろうか?

 現在の北極星は実は過去や未来を見通しても非常に天の北極近くにある恒星であり、これほど天の北極近くにある恒星は非常に珍しいです。現にベガは前述したように天の北極にかなり近づきはするものの極端に近づくわけでは無く、ベガよりも天の北極に近づくであろうはくちょう座δ星も現在の北極星と比較するとそこまで近づきません。

 しかし、現在知られている肉眼で観測できる恒星の中には唯一現在の北極星以上に天の北極に近づいた恒星があります。

 その恒星とはりゅう座α星のトゥバンであり、現在の赤緯+64度22分33秒とそこまで天の北極には近くはないものの5,000年前には非常に天に北極近くにまで近づいたことがあります。そして、前述したように最も近づいたときは現在の北極星が最も天の北極に近づくであろう100年後よりも更に近づいており、正確な数値は不明であるが限りなく天の北極近くにあったと考えられています。

 また、5,000年前はピラミッドのあった時代であり、ピラミッドは明らかにトゥバンを意識した作りになっていることが判明しています。そのため、ピラミッド時代ではトゥバンが北極星として非常に重要であったことがうかがえます。

 では、ここからは天の北極に最も接近した恒星であるトゥバンについて詳しく書いていきます。トゥバンはりゅう座のα星であり、α星は一般的に最も明るい恒星につけられるため、トゥバンはかなり明るい恒星のようにも思われます。

 しかし、トゥバンはα星であるにも関わらず同星座内ではそこまで明るい恒星では無く8番目に明るい恒星にしか過ぎません。そのため、トゥバンの明るさは3.67等3等星にさえ入らないほど暗く、お世辞にも目立つ恒星とは言えません。

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現在のトゥバンは天の北極とはそこまで近くはない

 そのため、現在のトゥバンは地球から見た明るさもそこまで明るくは無く、天の北極ともそこまで近くないため、そこまで面白い恒星とは言えません。

 けれども過去のトゥバンは4等星であったにもかかわらず最重要の恒星とされていたため現在からの計算と合わせて確実に天の北極と至近距離にあったことは間違いなく、現在知られている中では最も天の北極に近づいた恒星であることは確実視されています。

 では、最も北極星に近づいた恒星、トゥバンの恒星としての明るさはどれほど明るいのでしょうか?

 その答えは極端に明るい恒星ではありませんしかし、だからといって極端に暗いわけでもない中級程度の恒星であり、ベガと比較すると明るいもののポラリス(現在の北極星, こぐま座α星)よりかは暗い恒星であります。

 トゥバンは地球から303光年離れたところに位置している恒星であり、これは433光年離れているポラリスと比較すると近めであります。しかし、トゥバンは地球から見た明るさが3.67等と1.97等のポラリスの21%程度の明るさしかありません。

 その理由は前述したようにトゥバンの明るさがポラリスと比較するとかなり暗いからであり、トゥバンの恒星の実際の明るさを示す指標である絶対等級はマイナス1.17等太陽と比較すると250倍程度の明るさとなります。

 その一方でポラリスの絶対等級はマイナス3.64等もあり、太陽と比較すると2,450倍近くもあるため、トゥバンの明るさはポラリスの10分の1強しかありません。

 けれども現在25光年先に位置しており、天の北極に近づく恒星の一つであるベガは絶対等級が0.60等と暗く、太陽と比較しても50倍弱程度の明るさしか無いため、トゥバンはベガと比較すると明るい恒星と言えます

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トゥバンをベガの位置に置くとシリウスよりも明るくなるがポラリスの位置に置くとかなり暗くなる

 上表はベガ、トゥバン、ポラリスの3恒星を他の恒星の位置に置いたときの明るさを示したものであります。例えばトゥバンは303光年先からだと3.67等星であるがベガの位置、つまり25光年先に置くとマイナス1.75等シリウスよりも明るくなり、反対に433光年離れたポラリスの位置に置くと4.44等と暗い4等星並の明るさになります

 反対にベガをトゥバンの位置に置くと5.45等と非常に暗い恒星となり、肉眼で観測することが困難なほどになりますがポラリスをトゥバンの位置に置くと1.20等と堂々と1等星となり、ポラリスが非常に明るい恒星であることが分かります。

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トゥバンをベガの位置に持って行くと非常に明るくなり、反対にポラリスの位置に持って行くと暗くなる

 最後にトゥバンの表面温度について書きます。トゥバンのスペクトル型はA0であるため、トゥバンはスペクトル型がA0の巨星となります。更にベガのスペクトル型はA0なので巨星か主系列星(Ⅴ)と状態は違うものの両者ともにA0型であるためトゥバンとベガの表面温度は同等となります(大体シリウスと同じ青白い恒星である)。

 そのため、トゥバンとベガは同じ色の恒星として見え、トゥバンをベガの2.26倍先から見ると明るさを含め全く同じように見えます

 このように天の北極に最も近づく恒星、トゥバンはポラリスよりかはだいぶ暗いもののベガと比較すると明るい恒星であり、表面温度はベガと同じ程度の青白い恒星であります。