年中気温の高い熱帯も氷点下になるのか?

 本日は年中気温の高い熱帯でも氷点下になるかならないかについて書いていきます。

1. 年中気温の高い熱帯は降水量も多く無いとなれない

 熱帯気候とは年中気温の高い気候のことであり、主に赤道付近の低地がこの気候に属しています。そして、熱帯気候はケッペンの気候区分(熱帯や温帯などの気候区分)では最も赤道に近いため、Aで表されます(緯度が高くなるにつれてB, C, D, Eになっていくが例外もある)

 熱帯気候の条件は最も寒い月の平均気温が18 ℃以上であることと降水量が乾燥限界(樹木が生育するために必要な年降水量の最低限)以上であることであります。そのため、前者の条件を満たしていても後者の条件を満たしていなければ気温だけで見ると熱帯になりますが熱帯には分類されず乾燥帯(B)に分類されます

 例えばメッカやアデンの様なアラビア半島中部から南部にかけての都市は最も寒い月の平均気温は18 ℃を超えているが年間の降水量が明らかに乾燥限界に満たしていないため、乾燥帯に属しています。

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赤枠内の地域は降水量を度外視すれば熱帯となる

 加えて乾燥帯は降水量が乾燥限界に満たないかつ最も暖かい月が10 ℃を上回っていれば良いため、このような気候の場所にはウランバートルのように降水量が少ないかつ夏場はそこそこ暖かくなるが冬場になると極寒の都市も存在しています。そのため、アデンとウランバートルは明らかに気温差があるにもかかわらず両者ともにB気候に属しており、必ずしも気候区のアルファベットが若いほど低緯度に属しているとは言えません

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アデンとウランバートルは明らかに気候が異なり、緯度も異なるが両者とも乾燥帯である

 ウランバートルとアデンは乾燥限界に降水量が満たしていないため、両者とも乾燥帯となりますが図を見れば一発で分かるように明らかに気温は異なっています。年平均気温に関しては30 ℃ほどウランバートルの方が低く最も寒い月の平均気温に至っては50 ℃近くも異なっており、もし乾燥限界を度外視すればウランバートルは冷帯アデンは熱帯となります。

 ここで少し...と言うよりもかなり話がずれましたが今回はあくまで降水量も熱帯となっている地域についての話でありますのでここで熱帯を更に区分していきたいと思います。熱帯は大きく分けると3種類に分けられ年中降水の多い熱帯雨林気候(Af), 乾季と雨季がはっきり分かれているサバナ気候(Aw), その中間的な気候の熱帯モンスーン気候(Am)に分けられます。

 熱帯雨林気候の条件は熱帯気候の条件に加えて最も降水量の少ない月の降水量が60 mm以上であることが加わります。その一方でサバナ気候は最も降水量の少ない月の降水量が60 mm未満であるかつ(100-0.04×年降水量) mm未満熱帯モンスーン気候は後者の部分が(100-0.04×年降水量) mm以上となっています。

 これだけ書くと意味がよく分からないため、グラフで表します。

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熱帯は降水量によって区分される

 熱帯雨林気候はどの月の降水量も60 mm以上あるため、年間の降水量は720 mmを確実に超えます。また、式の関係上熱帯モンスーン気候は年間の降水量が1,000 mmを超えサバナ気候の降水量は360~2,500 mmとなります。

 ここでサバナ気候の降水量の下限値が360 mmとなっていますがこの理由は熱帯気候の年平均気温に関係しています熱帯気候の最も寒い月の日平均気温は18 ℃以上であるため、確実に年平均気温は18 ℃を超えます

 そして、乾燥限界の式は降水の季節による降水量によって異なり最も甘い判定である夏期少雨だと年平均気温に20を欠けた値が乾燥限界となります。そのため、熱帯で最も乾燥限界が低くなる条件はどの月の平均気温も18 ℃であるかつ夏期に降水が少ない場合となります。そのときの乾燥限界はまさに360 mmとなるため、熱帯の降水量は必ず360 mm以上となります。

 以上のことより、熱帯気候は年中気温が高いだけでは無く降水量も多い必要があり、実際に熱帯気候の降水量は非常に多くなっています。

2. 寒い熱帯マイアミ

 本章からは熱帯であるにも関わらず日本の真冬並みに気温の下がった熱帯について書いていきます。

 熱帯気候は先ほども書いたように年中気温の高い気候であり、一見すると冬がなさそうに見えます。しかし、これはあくまで赤道直下の熱帯に限った話であり、緯度が高くなると季節が現れてきます

 例えば北緯1度17分のシンガポールは赤道に非常に近いため、気温が極端に下がることは絶対にありません。しかし、緯度が高くなるにつれて冬場の気温はだんだんと下がっていき、北緯26度あたりを超えてくるとどの地域でも最も寒い月の平均気温が18 ℃を下回るため、熱帯では無くなります

 そして、これよりも若干緯度の低い地域では場所によっては最も寒い月の平均気温が18 ℃を上回っている場合もあるため、そこは熱帯気候でありますがかなりギリギリに近いものとなっているため季節も存在します。

 例えば北緯25度47分のマイアミの最も寒い月の平均気温は20.1 ℃と18 ℃を超えているため熱帯に属していますがかなり18 ℃に近くなっています。加えて最も暑い月の平均気温は29.0 ℃もあるため、年較差は小さいものの季節ははっきりとしており、明らかにシンガポールとは異なります。

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同じ熱帯だがマイアミには季節がある

 マイアミとシンガポールはグラフにしてみると明白な違いがあることが分かります。ほぼ一年間の気温が直線上(変化が無い)シンガポールとは異なり、マイアミの場合は小さいながらも季節は明白になっており、冬もきちんと存在しています。

 そして、これらの気温と降水量を数値化していきます。

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マイアミは冬になるとそこそこ涼しくなる

 シンガポールどの月でも日平均気温が18 ℃を余裕で超えており、更に最も降水の少ない月の降水量も60 mmを優に超えているため、熱帯雨林気候に属しています。

 その一方でマイアミは熱帯ではあるものの1月の平均最低気温は15.5 ℃とそこそこ低く、場合によっては半袖ではいられないほどの気温となります。加えて降水量もそこまで多くは無く、最も降水の少ない月の降水量が60 mmを下回っているため、熱帯雨林気候ではありません

 マイアミの年降水量は1,572mmなので(100-0.04×年降水量) の年降水量に1,572を代入すると37.12となります。この値は最も降水量の少ない月の降水量である41 mmよりも若干ではあるが小さいため、マイアミの気候は熱帯モンスーン気候となります。

 そして、この熱帯モンスーン気候のマイアミでありますが過去には数回熱帯であるにも関わらず氷点下になったことがあり、歴代の最低気温は1917年2月3日に観測したマイナス2.8 ℃であります。マイナス2.8 ℃というと明らかに寒く、コートを着ても寒さを感じるほどの気温であります。

 それをギリギリではありますが熱帯のマイアミで観測しており、年中気温の高い熱帯でも氷点下となる地域は存在するというわけです。

 しかし、実はマイアミよりも緯度の低い香港(実は北回帰線よりも低い)では氷点下6 ℃を過去に観測しており、マイアミ程度の緯度で氷点下を観測する地域は存在します。けれども香港は緯度の割に寒い気候であるため熱帯では無く亜熱帯(気候区分では温帯)に属しており、やはり熱帯で氷点下という意味ではマイアミは特異と言えます。

 このように地球上では熱帯であるにも関わらず氷点下となった地域も存在しており、このような地域は熱帯の中では最北端近くに位置しております。