北極圏内にも温暖な地域は存在している

 本日は北極圏に位置しているにもかかわらず冬の気温が低くない村について書いていきます。

1. 北極圏とは

 北極圏とは北半球で白夜、及び極夜を観測することのできる地域のことを指します。そして、白夜や極夜を観測できる理由は地球の地軸が公転面に対して傾いているからであります。

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夏至の日になると北極線よりも北側の地域は太陽は常に当たり続けるため、白夜となる

 上図は北半球にとっての夏至(大体6月21日ぐらい)の太陽と地球の関係を示したものであり、太陽が当たる半面は昼となっています。そして、地球は自転をしており、太陽が当たらない方向になると当然夜となるわけですが極地に近いほど自転による移動距離が短くなり北極線よりも緯度が高いところでは最も太陽から遠い地点でも太陽に当たります

 そのため、北極線よりも緯度の高い地域では一日中太陽に当たるようになり、これこそが白夜であります。更に緯度が高くなればなるほど白夜でいられる期間が長くなり自転による移動が無い北極点では半年間白夜となります。

 反対に北半球にとっての冬至最も太陽に近い地点でも太陽に全く当たらない極夜となり、こちらも緯度が高くなればなるほど期間が長くなり、北極圏ではやはり半年間太陽が昇らなくなります。

 また、北極線とは白夜でいられる最低限の緯度を示した緯線であり、北緯66度33分線に相当します。そして、この緯線よりも北の地域は北極圏と呼ばれ、北半球全体の8.26パーセントが北極圏に属しています

 ちなみに南半球にも北極線に相当する緯線が存在しており、こちらは南極線と呼ばれています。南極線は南緯66度33分線のことを指し、これよりも南の地域は南極圏と呼ばれています。当然南極圏は北半球に当たる冬至の日、つまり南半球にとっての夏至の日には白夜となり、反対に冬至の日(北半球の夏至の日)には極夜となります。

 

2. 北極圏は太陽の南中高度が低いため、気温は低い

 北極圏は緯度が北極線よりも高い地域に位置しており、気温は全体的に見てかなり低くなっています。特にアジアの北極圏は極端に気温の低い地域となっており、北半球で最も寒い町であるヴェルホヤンスク(ロシア, シベリア, サハ共和国)もこのアジアの北極圏に位置しています。

 しかし、北極圏は夏至が近くなると太陽が一日中当たる白夜となるため、夏の気温は上がりそうでありますが北極圏の大半は年中気温の低い寒帯となっており、夏場の気温もかなり低くなっています。

 では、何故北極圏は白夜があるにも関わらず気温が低いかというと太陽の南中高度が非常に低いからであり、北極線上でも夏至の日の太陽の南中高度は46.8度しかありません。そして太陽が赤道直下に直角に正中(南中)する秋分春分になると南中高度は23.4度と更に低くなり、冬至になると南中高度が0度、つまり太陽が地平線上から半分しか出ない状態となります。

 ここで太陽の南中高度と気温の関係北緯35度地点での夏至冬至の日を例に挙げていきます。

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夏と冬では太陽の単位面積あたりの光の強さが異なるため、気温や明るさは大きく異なる

 北緯35度地点での夏至の太陽の南中高度は約78.4度とかなり高く太陽の光が強く当たるため、昼間の明るさはかなり明るい冬至になると31.6度しか無いため太陽の光があまり強くなく、昼間でもそこまで明るくはありません

 加えて、夏と冬は太陽の明るさや昼夜の長さが異なるだけでは無く、気温も大きく異なっており太陽の南中高度の低い冬場の方が気温は明らかに低くなっています。

 このように太陽の南中高度の差は季節を生み出す要因となっており、太陽の南中高度が低いと単位面積あたりの光が弱くなるため、暗く、そして寒くなります

 そのため、北極圏は低緯度側の地域と比べると太陽の南中高度が低いため、太陽の当たる光の量も弱くなります。結果として北極圏は真昼でも薄暗く、白夜の日でも日本の秋から冬にかけての明るさしかありません

 以上のことより、北極圏は夏になるにつれて昼の長さはかなり長くなりますが太陽の南中高度が低いため、そこまで暖められず、更に冬場になると太陽の南中高度が非常に低くなる上に昼間の長さも極端に短くなるため相当冷え込みます(それに加えて冬至が近づくと太陽が昇らなくなる)。

 

3. 海洋性の地域では北極圏でも暖かい

 北極圏は白夜となるものの太陽の南中高度が低いため、真夏でも気温が低く、赤道付近と比較すると年間の気温は相当低くなります。そのため、北極圏は真冬になると全域が極寒の世界になるようにも思われますが実は北極圏は地域によって気温差が非常に激しくなっています。

 北極圏は北極海を中心にアジア、ヨーロッパ、北米の3つの州が含まれており、アジアは極端に気温が低くなりますがヨーロッパはそこまで気温が低くはなりません。

 その理由はヨーロッパの西側の大西洋には北大西洋海流という暖流が流れているからであり、北海道よりも緯度が高い地域もこの暖流のおかげで気温がかなり高くなっています。

 例えばパリやロンドンは世界最寒の首都であるウランバートルよりも緯度が高いが真冬の気温ははるかに低緯度に位置している東京と大差は無く世界最北の首都であるレイキャビク(アイスランド)は北極圏に近いにもかかわらず温帯に属しています

 このように北大西洋海流の影響はヨーロッパの西側に特に大きな影響を及ぼしており、ヨーロッパを年較差の小さい気候にしています。

 しかし、北極圏にもなるといくら暖流の影響が大きくても寒冷地になることは防げないようにも思われます。確かに北極圏はほぼ全域が冷帯と寒帯になっており、それはヨーロッパも例外ではありません。

 けれども実はノルウェーの一部は北極圏に位置しているにもかかわらず温帯に属している地域が存在しており、それはRøstと言う村であります。Røstは北緯67度31分に位置しているため北極圏に属しており、ノルウェー海の島にあります

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Røstはノルウェー海に位置している島であり、非常に緯度が高い

 Røstは緯度が非常に高いため夏場の気温は非常に低く、最も暖かい月である8月でも日平均気温は11.9 ℃平均最高気温は13.5 ℃と寒帯並みの気温となっています。

 しかし、地図を見ても分かるように暖流の流れる島に位置しているため海洋性の気候が非常に強く日較差、月較差、年較差共に北極圏とは思えないほど低くなっています。

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Røstは北極圏に位置しているにもかかわらず日平均気温が氷点下の月は無い

 Røst北極圏に位置しているにもかかわらず日平均気温が氷点下の月が一切無く、最低気温の平均も1月と2月にかろうじで氷点下になっているほどです。そして、歴代最低気温も氷点下12.4 ℃ととても北極圏に位置しているとは思えないほど高く、これは緯度が30度ほどしか無いヒューストンよりも高いです(ヒューストンは平均値と比較すると逸脱しているほど歴代最低気温は低いが)。

 このように北極圏に位置しているにもかかわらず、気温が全然低くならない地域も存在しており、この原因は前述したように海洋性の気候が極端に強いからであります。

 その一方で大陸性の極端に強いシベリアのヴェルホヤンスクは緯度こそRøstと同じほどでありますが真冬は50 ℃近くも気温が違います。しかし、夏場はヴェルホヤンスクの方が気温が高くなっています

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同じ北極圏でも大陸性と海洋性では気候が大きく異なる

 上表のように大陸性の極端に強いヴェルホヤンスクは寒暖差が明白となっており、夏場は若干気温が高くなるものの冬場になると極端に低温化するため、年平均気温もとてつもなく低くなります。その一方でRøstは季節による気温差はほとんど無く、夏場の気温は低いものの冬の気温がかなり高いため、年平均気温も高めとなっています。