極寒の巨島グリーンランドの沿岸と内陸では大きく気候が異なる

 前回は寒冷地にある首都について書いてきましたが今回はさらに寒冷な地であるグリーンランドについて書いていきます。

1. グリーンランドは何州なのか?

 グリーンランドは島の面積の大半が北極圏に含まれている極寒の島であり、大半が年中氷におおわれています。そして、極寒であること以外にも世界一面積の大きな島としても知られており、その面積はサウジアラビアの国土面積に匹敵するほどであります。

 しかし、グリーンランドはその広大さに反して人口が極めて少なく、5.6万人程度しかいません。これは言うまでもなく居住するにはあまりにも寒すぎるからであり、特に内陸部に関しては居住が不可能となっています。

 そのため、グリーンランドの居住地はまだ温暖な低緯度の沿岸部に限られておりグリーンランド最大の都市であると同時に首都(独立国家ではないが)であるヌークも低緯度の沿岸部に位置しています。

 このようにグリーンランドはその寒冷な気候ゆえに居住地としてはあまり重視されてはおらず、実際にどの州に属しているかはあまり知られていません。ここでの州とはヨーロッパ、アジア、アフリカ、北米、南米、オセアニアの6州のことであり、グリーンランドが属していると考えられるのは以下の3つであります。

  • 北米
  • ヨーロッパ (デンマーク領ゆえに)
  • どの州でもない (南極と同じ考え) 

 一見するとどの答えも正しそうに見え、グリーンランドデンマーク領(デンマーク本土よりもはるかに広大だが)な上に欧州であるアイスランドとかなり近いから欧州南極と同じように居住に適していないからどこにも属していないようにも考えられますが正解は北米であります。

 つまり、グリーンランドはカナダやアメリカ合衆国と同じ州に属している島であります。更に北米とは中米も含むため、グリーンランドはメキシコやコスタリカキューバなどとも同じ州であり、面積に関して言うとメキシコよりも若干広いため、グリーンランドを領地としているデンマークは北米で3番目に広い国家ということになります。

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グリーンランドアイスランドの間に北米と欧州のボーダーがある

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北米の面積はカナダ、アメリカ合衆国グリーンランド、メキシコで大半が占められている


 グリーンランドアイスランドの間が欧州と北米のボーダーとなっており、グリーンランドは北米の島、アイスランドは欧州の島であります。

 また、グリーンランド北米の面積の9パーセント近くも占めておりグリーンランドは北米の11分の1から12分の1の面積を有していることが分かります。

 

2. グリーンランドは二次元と三次元では形が全く異なる

 グリーンランドは北米の東北端に位置している島であると同時に非常に広大な面積を有している島でもあり、地図上でもその大きさがうかがえます。

 そして、グリーンランド二次元の地図上では北部に行くにつれて面積が広くなっていき、オーストラリアよりも広大な面積を有しているようにも見えますが実はこれは誤りであります。

 実際のグリーンランド細めの島であり、面積もオーストラリア大陸の3割程度しかありません。では、なぜ二次元の地図でのグリーンランドの面積と形状は実際のものと大きく異なるかというと三次元(球状)の表面を二次元(平面)に表したときに三次元のゆがみを修正する必要があるからであり、緯度が高い程引き延ばされるからであります。

 三次元の表面を二次元で表したとき、緯度をθとした時の長さは1/cosθ倍で表されます。つまり、θ=0度の時の赤道直下ではゆがみが全く生じません緯度30度の時は約1.15倍に引き延ばされ緯度60度では2倍に、そして極点である緯度90度では無限大に引き延ばされるため、極点を表すことはできません。

 グリーンランド最南端は北緯59度50分、最北端は北緯83度37分であるため、最南端では約2倍しか引き延ばされないのに対し最北端では約9倍も引き延ばされます。そのため、グリーンランドは北部のほうがより引き延ばされる関係上、二次元上の地図では北部に行くにつれて太くなっていき、現実の形状とはあまりにもかけ離れた形状で表されるようになります。

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グリーンランドは平面で表すと北部が非常に肥大化する

 グリーンランドの北部を二次元で表すと前述したように信じられないほどにまで拡大され、三次元では小さな領域である赤円部も二次元ではかなりの面積に拡大された上に形状にまでゆがみが生じています

 このようにグリーンランドは実際には細めの島でありますが平面で表すと北部が肥大化する関係上、北部が広大な島のように見えてしまいます。

 

3. グリーンランドは沿岸部と内陸部では気候が大きく異なる

3.1 沿岸部は意外に暖かい

 グリーンランドは非常に高緯度に位置しているため、全域が極寒のように思われがちでありますが実は極寒なのは内陸部であり、海に面している沿岸部はそこまで寒冷ではありません

 グリーンランドの沿岸部には人口が少ないため、都市とは言えないが町がいくつか存在しており、その中で最も発展している町が首都であるヌークです。ヌークは北緯64度10分グリーンランドの中では南部に位置しており、人口も2万人程度とグリーンランドの中では特に発展しています。

 そして、ヌークは一見すると真冬は氷点下何十度の世界に用にも思われそうであるが実際にはそこまで寒くはなく、真冬に当たる2月でも平均最低気温はマイナス11℃程度とそこまで寒くはありません。

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ヌークは年較差が小さく、夏は涼しいが冬も極端には寒くはない。(気温の単位は℃、降水量はmm)

 ヌークは夏場の気温こそ日本の冬並みに寒いですが冬場はそこまで寒くはなく、はるか南に位置している極東ロシアのハバロフスク(1月平均気温マイナス19.8 ℃)やシベリアのイルクーツク(1月平均気温マイナス17.8 ℃)などと比較すると寒さは厳しくありません

 その理由はヌークの近くには暖流が流れているからであり、この暖流によって冬場の気温が緩和されています。そのため、ヌークの降水量は緯度に反してかなり多めとなっており、年較差もはるか南に位置している上海よりも小さい程です。

 また、ヌークは気候でいうと寒帯のツンドラ気候に属しており、このツンドラ気候とは最も暖かい月の平均気温(ヌークでは7月)が0から10 ℃の気候のことを指します。

3.2 内陸部は非常に寒く、シベリア以上の極寒地である

 ヌークは夏場こそ寒いものの冬場になっても暖流の影響で極端に低温になることはありません。

 しかし、これはあくまでヌークが暖流の流れる沿岸部に位置しているからであり、内陸部ともなると話は別です。グリーンランドの内陸部は暖流の影響も受けない極寒の地であり、夏場は氷が溶かされるために太陽熱が使われ、冬場になるとひたすら冷やされるだけであるため、年中氷と雪に覆われている氷雪気候に属しています。

 氷雪気候とは最も暖かい月の平均気温でさえ氷点下の極寒の気候であり、この気候は言うまでもなく世界最寒の気候区分となっています。この気候区分の地域は南極大陸のほぼ全域、グリーンランドの内陸部だけに限られており、この気候区には都市はおろか村一つもありません

 そして、グリーンランドの内陸部のデータは極めて少ないですがEismitteと呼ばれる内陸部のデータが1930年分ただ1年間のみあり、今回はこのデータを参照していきます(通常は30年分のデータを参照するため、1年分だけでは情報量があまりに少なく、正確なデータは得られない)。

 Eismitteはヌークとは異なり、グリーンランドのど真ん中に位置しているため、夏場の気温も冬場の気温も極めて寒く、ヌークとは全く別の気候といっても過言ではありません。

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Eismitteはヌークとは異なり、極端に寒い。(気温、降水量の単位はヌークと同じ)

 Eismitteは1年分のデータしかないため、記録も1930年のデータだけでありますが非常に寒いことが分かり、真夏の気温もヌークの真冬を下回るほどであります。更に真冬になるとヌークとはけた違いに気温が低く、特に2月になると平均最低気温が氷点下50 ℃を下回り、この年は氷点下65 ℃を記録したこともあります

 また、この年は氷点下を上回ったことは一度もなく、文字通りEismitteが氷雪気候であることがうかがえます。

 更にEismitteの冬の気温はシベリア最寒の地であるオイミャコンヴェルホヤンスクトと非常に似ておりオイミャコンの12月,1月,2月の日平均気温はそれぞれマイナス45.5 ℃, マイナス46.4 ℃, マイナス42 ℃となっています。

 しかし、オイミャコンなどは夏場の気温が比較的高くなるため、年平均気温はEismitteのほうがはるかに低くなっています(オイミャコンはマイナス15.5 ℃)。

 このことより、グリーンランド内陸部の冬の気温はシベリア最寒の地とほぼ同じであり、シベリアのどの地よりも冬の気温が温かいヌークとは気候そのものが全く異なることが分かります。

 そのため、さらにデータを取れば北半球最寒の地であるオイミャコンの歴代最低気温以上に低い気温が得られることも十分考えられるため、グリーンランドこそが北半球最寒の地である可能性はかなり高いといえます