寒冷な首都はどこなのか? そして意外にも平壌はトップクラスに寒い首都である

 今回からは再び気候の記事を書いていきます。そして、今回のテーマは寒い首都についてであり、世界中で寒冷地に相当する首都がどこであるかについて書いていきます。

1. 寒冷地とは

 寒冷地とは文字通り寒い地域のことを指しますが定義は様々あり、一様ではありません。例えば日本国内で寒冷地手当という言葉がありますがこの寒冷地は年平均気温が10 ℃、または12 ℃未満の地域のことを指し、年平均気温で定義されています

 そのため、トルファンのように真冬が極寒で真夏が灼熱の地域では年平均気温が高めとなるため、寒冷地になることはありませんがこのように極端な地域は日本には存在しません。

 これが日本で言う寒冷地でありますが真冬の気温で見ていませんので今回は世界的に見た寒冷地で考えていきます。

 世界的に見た寒冷地の定義は気候区分が寒帯(E), または冷帯(D)の地域のことを指します。

 寒帯とは南極やグリーンランドのように夏の気温も日本の冬並みに低い地域のことであり、簡単に言うと一年中寒いところであります。そのため、寒帯では樹木が一切育たず、コケ類がわずかに生育する程度であります最も暖かい月の平均気温でさえ氷点下となるともはやコケ類も生育できず、文字通り不毛の地になります。

 それに対して冷帯とは冬場の気温は非常に寒くなるが夏場になるとそこそこ気温が上がる地域のことであります。そのため、寒帯とは違い寒さの強い樹木は生育することができ、冷帯であるシベリアには世界最大級の針葉樹林が生育しています。

 また、寒帯の定義は最も暖かい月(最暖月)の平均気温が10 ℃未満であることが定義となっており、これ以上の定義は無く単調なものとなっています

 しかし、冷帯は以下の条件を兼ねそろえている必要があります。

  • 最も寒い月(最寒月)の平均気温がマイナス3 ℃未満 (冬寒い)
  • 最も暖かい月(最暖月)の平均気温が10 ℃以上 (夏寒くない)
  • 降水量が乾燥限界を超えている (樹木が生育できる)

 冷帯であるためには樹木が生育できる条件があるため、夏場の気温が寒くないことに加えて降水量がある程度多く無ければならず、この降水量が少ないと乾燥帯に分類されます。しかし、今回はあくまで気温だけで考えているため、乾燥帯であっても気温が冷帯であれば寒冷地に分類します(例えば最寒月の平均気温がマイナス14 ℃、最暖月の平均気温が18 ℃で気温だけ見ると冷帯であるが降水量が100 mmしかなく、乾燥限界を下回っている場合など)。

 つまり、今回寒冷地として見なされる条件は以下の場合であります。

  • 最暖月平均気温が10 ℃未満
  • 最暖月平均気温が10 ℃以上であれば最寒月平均気温がマイナス3 ℃未満

 

 また、余談ではありますがこの条件からも分かるように最暖月の平均気温が10 ℃を下回っていた場合、最寒月の平均気温が温帯並み(マイナス3~10 ℃)の場合でも寒帯となるため、寒帯は必ずしも冬が寒いわけではありません。

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寒帯は最暖月の平均気温だけで考慮されるため、最寒月が温帯(-3~10 ℃)のように冬寒くない寒帯もある

 上図は温帯、冷帯、寒帯(乾燥限界を考慮しない)のボーダーを示した図でありますが温帯の下の部分の寒帯が冬寒くない寒帯に相当します。

 

2. 寒冷地の首都

 世界には193カ国も国があるため、首都の数もこの国の数に等しくなっています。そして、この中には当然高緯度に位置している首都もあるため、このような首都では冬の気温が低く、寒冷地になっているところもあります。

 例えば北欧の国フィンランドの首都、ヘルシンキの最寒月の平均気温はマイナス4.7 ℃とマイナス3 ℃を下回っているため、冷帯に属しており、先ほども書いたように冷帯は寒冷地であるため、ヘルシンキは寒冷地に位置している首都となります。

 このように冷帯に属している首都はありますが実は寒帯に属している首都は一つもありません。それどころか寒帯に属している人口が10万人以上の首都は一つも存在しておらず人口が10万人以上の都市はいずれも熱帯、乾燥帯、温帯、冷帯のどこかに属しています

 以上のことより、寒冷地に位置している首都はいずれも夏場になると気温がそこそこ上がる地域であり、一年中寒い地域ではありません

 

 では、ここからは世界中の首都の最寒月が寒い順に並べたリストを示します。

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寒冷な首都一覧 (気温の単位は℃, 降水量の単位はmm)

 リストからも分かるように世界一冬の厳しい首都はモンゴルのウランバートルであり、明らかに他の首都よりも気温が低くなっています。しかし、ウランバートルの降水量は乾燥限界にギリギリ足りないため、冷帯では無く乾燥帯に属しています。けれどもあと5 mm多ければ冷帯冬季少雨気候(Dwb)となるため、ウランバートルは実質冷帯気候と見なせます。

 また、意外かもしれませんがウランバートル緯度に関してはそこまで高い方では無く、パリやロンドンよりも低いです。

 では、何故緯度が低いにもかかわらずここまで極端に寒いかというと以下の理由の通りになっています。

  • 標高がかなり高い (1,350 m)
  • 海からの距離が非常に遠く、大陸性が強い (最も近い海からも1,300 kmも離れている)
  • 大陸東部に位置しており、暖流の影響を受けにくい (基本的に同じ緯度では大陸東部と西部では東部の方が寒くなる傾向がある)

 このような理由があり、ウランバートルの気温は他の追従を許さないほどに低く、年平均気温に関しても氷点下となっているほどです。

 また、二番目に低いカザフスタンのヌルスルタンもモンゴルと同じように海からの距離が極めて遠くなっていますがウランバートルよりも西側に位置しており、更に標高もウランバートルよりも低いため、ウランバートルよりも幾分かはましな気温になっています。しかし、歴代の気温に関してはウランバートルよりも低く、過去には氷点下51.6 ℃を観測したこともあるほどです。そのため、ウランバートルが平均的に世界一寒い首都であるのに対し、ヌルスルタンは歴代の気温に関して世界一寒い首都といえます。

 そして、その後は北米で最も寒い首都であるオタワ (東岸に位置しているため寒い)、ヨーロッパ最寒の首都モスクワが続く形となりますが5位は意外にも北朝鮮平壌でありますが平壌の緯度は北緯40度を切っており、更に標高も高くありません

 では、何故平壌がここまで寒いかというとシベリア高気圧の影響を受けるからであり、シベリア高気圧はユーラシア大陸の冬季に発生する極寒の高気圧のことであります。そのため、平壌の真冬は北欧よりも寒くなり、降水量も非常に少なくなります

 これはウランバートルでも同じことがいえ、ウランバートル平壌、北京が寒い理由はこのシベリア高気圧が大きく関係しています。

 しかし、平壌(と北京)は緯度が低いため、夏場の気温は他の極寒の首都と比較するとかなり上がり、年平均気温は10 ℃以上とかなり高くなっています

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日本に近い国の首都はシベリア高気圧の影響がかなり寒冷となっている

 北京、平壌ウランバートルシベリア高気圧の影響で真冬の気温が非常に下がり、降水量も極端に少ない冷帯冬季少雨気候(Dw)となっています。しかし、日本は暖流が流れている日本海を挟んでいるため真冬の気温も極端には低くはならず、更に降水量もそこそこある温暖湿潤気候(Cfa)となっています

 また、平壌以降の順位は北京を除くと全てヨーロッパの国になっていますがこれは単純に緯度が高いためにこのようになっており、年平均気温は平壌と比較すると低くなっています。

 そして、寒冷地となり得る最寒月平均気温はマイナス3 ℃未満であるため、寒冷地は北京までとなり、マイナス2.9 ℃のオスロは寒冷地には入りません(温帯のため)。

 このように緯度の高いところに寒冷地は多いものの必ずしも高緯度=寒冷地というわけでは無く、シベリア高気圧が優勢な東北アジアの首都は緯度が低いにもかかわらず寒冷地となっています。