過去最高の明るさとなった恒星はシリウスと同じ星座に位置している

 本日は過去500万年から現在にかけて最も明るくなった恒星について書いていきます。

 

1. 遠くても明るい恒星は極端に明るい恒星である

 現在地球から見て最も明るい恒星は太陽を除くとシリウスであり、その明るさはマイナス1.47等と非常に明るいです。この明るさは全天で二番目に明るいカノープスの2倍に相当し、今後21万年間はシリウスが最も明るい恒星となります。

 しかし、昨日も書いたようにカノープスは過去500万年間の中で300万年近く全天で最も明るい期間があり、最も明るい恒星である期間が30万年のシリウスとは比較にならないほどです。

 しかもカノープス地球に最も接近した時の距離は177光年現在のシリウスの21倍近くも離れており、仮にシリウスをこの位置に置いたとしても5.10等級の暗い恒星となります。

 では、何故カノープスはこれほどの距離を隔てても非常に明るいかというと恒星そのものの明るさがとてつもなく明るいからであり、カノープスシリウス600倍以上も明るい恒星です。

 そのため、カノープスはそこまで地球に接近しなかったにもかかわらず、長い間全天で最も明るい恒星として輝いており、実を言うとカノープスが177光年まで接近したときの明るさは現在のシリウスはおろか最接近したときのシリウスよりも明るいほどです。カノープスが177光年まで接近したときの明るさはマイナス1.93等級であり、これはシリウスが最接近するときの明るさであるマイナス1.68等よりも1.26倍明るいです。

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カノープスは最接近時でも地球からの距離はそこまで近くないがシリウスよりも明るかった

 このように恒星の明るさが極端に明るいカノープスは比較的遠くに位置していても近場のシリウスよりも明るく、明るい恒星が少しでも接近した場合、長い期間最も明るい恒星になれます。しかし、極端に明るい恒星は暗い恒星と比較すると極端に数が少なく、地球から近いところで極端に明るい恒星は存在していません

 更に驚くべきことにカノープスは現在309光年とかなり遠くに位置していますがこれでも極端に明るい恒星の中では最も近い部類に入っており、極端に明るい恒星の中で見てみればカノープスは近いから明るく見えるだけの恒星に過ぎません

 現にカノープスよりも(恒星としての明るさが)明るい1等星であるリゲルやデネブはそれぞれ863光年1412光年カノープスよりも遙か遠くに位置しており、これを見るとカノープスが近場の恒星にしか見えなくなります。

 このように極端に明るい恒星は近くても遠く、地球に数十光年まで近づいたことはなさそうに見えますが実は北極星よりも明るい恒星が過去に地球に大接近したことがあります

 そして、次章ではこれらの恒星について書いていきます。

 

2. 極端に明るい恒星が地球に大接近したら極端な明るさとなる

 現在地球から見て最も明るい恒星であるシリウスは近いから明るいだけに過ぎず、過去300万年間も全天で最も明るい恒星であったカノープスも地球に極端に接近したことはありません

 そのため、これらの恒星は過去未来を通してもマイナス2等星以上の明るさになることはありません。

 しかし、以下の2つの条件を満たせばこれらの明るさを遙かにしのぐ明るさの恒星を見ることができます。

  • 極端に恒星の明るさが明るい
  • 非常に接近する

 シリウスは前者、カノープスは後者の条件に欠けていたため、マイナス2等を超えたことはありませんでしたが実は500万年前~400万年前にはシリウスと同じおおいぬ座の恒星2つがこの条件を満たす形で大接近しました

 その恒星とはε星アダーラとβ星ミルザム(シリウスはα星)であり、これらの恒星は現在こそ2等星でありますが過去に三十数光年まで接近したことがあります。更にこれらの恒星は北極星以上の光度を有しているため、そのときの明るさは現在のシリウスとは比にならないほど明るくなりました。

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ミルザムとアダーラはシリウスと同じおおいぬ座の恒星である

 ミルザムは現在地球からの距離が493光年離れている1.98等星であり、この明るさは地球から見た北極星とほぼ同じであります。そして、アダーラは地球からの距離が405光年離れている1.50等星、つまりギリギリ2等星でありこの恒星がつい最近まで1等星として輝いていたことがうかがえます。

 そして、気づいたと思われますが両恒星とも地球からの距離がかなり遠く、地球からの明るさも明るいものの極端なものでは無く、1等星ではありません(アダーラはほぼ1等星でありますが)。

 しかし、前述したようにこれらの恒星は過去に地球に大接近をしたことがあり、アダーラは470万年前に34光年、ミルザムは442万年前に37光年まで接近しました。この距離はふたご座のポルックスうしかい座アルクトゥルスまでの距離とほぼ等しくこれらの恒星は星としての明るさはそこまで明るくないものの近いため、地球から見た明るさはかなりのものとなっています(ポルックスは1.14等星、アルクトゥルスはマイナス0.04等星)

 つまり、この距離は大して明るくない恒星でもかなり明るく見えるほどの距離であり、極端に明るい恒星がこの距離にあれば凄まじく明るい恒星として見えることを想像することは難くありません。

 では、これらの恒星はどれほど明るく、そして過去にはどれほどの明るさで見えたかを第三章で書いていきます。

 

3. おおいぬ座の明るい2恒星はどれほど明るいのか?

 地球に大接近したおおいぬ座の恒星、ミルザムとアダーラは500万年前~400万年前に35光年ほどまで接近し、そのときの明るさはとてつもないものとなりました。その理由は前述したようにこれらの恒星が北極星以上に絶対等級(恒星の明るさを示す等級。5等小さくなると100倍の明るさとなる、つまり、小さいほど明るい)が小さいからです。

 北極星の絶対等級はマイナス3.64等級とシリウス(1.42等級)や太陽(4.83等級)とは比較にならないほど小さく北極星がいかに明るい恒星であるかが分かります。

 しかし、ミルザムとアダーラの絶対等級はそれぞれマイナス3.91等級マイナス3.97等級北極星以上に明るいことが分かり、当然これらの恒星が35光年と至近距離まで近づくととんでもない明るさになります。

 では、どれほどの明るさになったかというとマイナス3.64等(ミルザム)、マイナス3.88等(アダーラ)とマイナス4等星に分類されるほどの明るさとなり、この明るさは現在のシリウス7.4倍9.2倍に相当します。

 つまり、過去500万年前から現在までで最も明るい恒星はアダーラとなり、これ以上に明るくなる恒星は過去未来の全てを見通してもほぼ無いといえます。

 また、シリウス、ミルザム、アダーラの恒星としてのデータと最接近時のデータを記載します。

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ミルザムとアダーラはシリウスの100倍以上も明るいため、最接近時は凄まじく明るい恒星として見える

 このようにミルザムとアダーラはシリウスよりかは近づかないもののシリウスとは比にならないほど明るく見え、絶対等級がいかに強い恒星であるかが容易に想像できます。また、シリウスをアダーラの最接近時の位置に置いても実はギリギリ1等星には見えず、現在のアダーラの明るさよりも若干くらい程度の恒星としてしか見えません。

 以上のことより過去には北極星以上に明るい恒星が35光年前後に接近しており、更に同時期に2つも接近していたため、450万年ほど前の星空は極端に明るい恒星が2つも見えていました。