将来最も地球に接近する恒星は太陽から1光年以内に入り込む

 前回までは天の北極に近い恒星について書いてきましたが本日は太陽系に将来最も近づく恒星について書いていきます。

1. 地球から見える恒星の明るさ

 現在太陽に最も近い恒星はリギル・ケンタウルス系のプロキシマ・ケンタウリ最も明るい恒星はシリウスですが恒星は移動しているため、長い時間をかけるとこの順番も変わります

 シリウスは現在も太陽に近づいており、これは6万年後まで続きます。最接近をしたシリウスは太陽から7.8光年まで接近し、このときマイナス1.64等星と現在の明るさよりも明るくなります。しかしその後、シリウスは地球から徐々に遠ざかっていくため21万年後になると地球から最も明るい恒星(無論太陽は除く)の座はベガに譲りシリウスは暗くなる一方で二度と最輝星にはなりません

 そのため、恒星までの距離は非常に遠いものの非常に長い時間をかけてみると地球からの位置関係も大きく変わっているため、現在暗い恒星であっても将来的に地球に大接近をし、現在のシリウス以上の明るさで見えるものもあります。

 そして、太陽から見て最も明るく見えるようになる恒星の中には太陽よりも遙かに暗い恒星もあり、このような恒星は太陽系に信じられないほど接近します。

 

2. 地球に大接近をする暗い恒星

 恒星は長い時間をかけて移動するため、現在暗い恒星でも将来的には非常に明るい恒星になります。そして、本来の明るさが暗い恒星は地球からの距離が極めて近くならないと明るく見えないため、これらの恒星が最も明るい恒星となるには地球からの距離が10光年を割り込む必要があります。

 例えば現在地球から最も明るいシリウスは地球からの距離が8.6光年と非常に近く、これは肉眼で見ることのできる恒星の中ではリギル・ケンタウルスに次ぐほどです。

 しかし、シリウスの本来の明るさは太陽の23倍程度と決して明るく無いため100光年も離れると3.86等の暗い恒星となり、シリウスは近いからこそ明るい恒星であることが分かります。

 けれども将来的に最も明るくなる恒星の中にはシリウスはおろか太陽をも遙かに下回る明るさしか無い恒星も存在しており、その恒星は現在地球から肉眼で観測することはできません

 では、その恒星は何という恒星かというとグリーゼ710という恒星であり、この恒星はへび座の方向にある9.66等星であります。グリーゼ710は太陽から63.8光年離れた恒星であり、太陽からの距離は決して遠くはないものの太陽の22.3分の1程度の明るさしか無いため、肉眼で見ることはできません。

 しかし、グリーゼ710は将来太陽系の大接近する恒星として知られており、今から135万年後には0.211光年まで接近すると予測されここまで近づく恒星は500万年前から500万年後の歴史の中でもありません。ちなみに0.211光年はキロメートルに換算するとほぼ2兆キロメートルであります。

 では、135万年後、太陽系に最も接近するグリーぜ710はどれほどの明るさで見えるかというとマイナス2.74等星として見え、この明るさは太陽をほぼ1光年先から見た明るさと同等であります。そして、この明るさは現在のシリウスの明るさの3.2倍ほどであり、非常に暗いグリーゼ710でもこれほどまでの距離に近づくと非常に明るい恒星として観測できます。

 ちなみにこのとき2番目に明るい恒星はりゅう座ガンマ星であり、この恒星は現在太陽から154光年離れた位置に輝いている2.23等星であるため、元の明るさも比較的明るい恒星であります。

 また、3番目に明るい恒星はたて座デルタ星であり、この恒星は現在地球から202光年とりゅう座ガンマ星よりかは遠いものの4.70等と暗いため、相当近づかなければ明るくは見えません。

 たて座デルタ星は125万年後の最接近時には9.2光年まで近づくと推測されており、このときの明るさはマイナス1.84等シリウスよりも明るくなっています。そして、グリーゼ710の最接近の時は135万年後ですが当然10万年程度ではそこまで大きく距離は移動しないため、このときグリーゼ710、たて座デルタ星の2つの恒星が太陽系に大接近している状態となっています。

 また、グリーゼ710とたて座デルタ星は天球上では非常に近い位置に輝いています。

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天の赤道付近に見える(肉眼では無理)グリーゼ710と同時期に最接近するたて座デルタ星の位置

 

3. 非常に暗い恒星はすぐ見えなくなる

 グリーゼ710は太陽系に2兆キロメートルまで接近するため、当然グリーゼ710から見ても太陽は非常に近い恒星であります。そして、先ほども書いたようにグリーゼ710は太陽と比較してもかなり暗い恒星なのでグリーゼ710から見た太陽太陽から見たグリーゼ710よりもそうとう明るく見えます

 グリーゼ710はK型主系列星であり、K型主系列星とは太陽のようなG型主系列星よりも低温で軽量かつ暗い恒星であります。そのため、グリーゼ710の直径は太陽の64パーセント、質量は60パーセント、絶対等級は8.20等とかなり小規模であり、これよりも暗い恒星は現在肉眼で観測できる恒星の中でもはくちょう座61番星Bしかありません(しかも僅差で明るい程度)。

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主系列星は質量が軽いほど小さく、暗く、冷たくなる

 グリーゼ710はK型星としてもかなり小規模な方(K7型は最も小規模なM型に近い)であるため、表面温度は太陽の3分の2程度しかありません。そのため、グリーゼ710は低温の橙色の恒星として観測することができ現在地球から見て明るい橙色の恒星はいずれも直径が数千万、数億キロメートル級の巨星、超巨星であります。

 しかし、グリーゼ710は直径が100万キロメートルを切っており、月軌道よりも若干大きい程度の橙色の恒星が非常に明るく見えることは非常に珍しい状況といえます。

 そして、直径が100万キロメートルをも切っている暗い恒星でさえここまで明るく見えると言うことは当然グリーゼ710から見た太陽の明るさは凄まじく、マイナス6.12等の恒星として見えます。この明るさは金星の明るさよりも余裕で明るく、グリーゼ710から見た太陽は太陽から見たグリーゼ710よりも遙かに明るい恒星といえます。

 このように太陽とグリーゼ710は両者ともにそこまで明るくない恒星でありますが非常に接近するため、非常に明るく見えますがこの明るさはすぐ終わりを迎えます

 何故ならグリーゼ710は非常に暗い恒星であり、少しでも離れるとすぐ暗くなります。グリーゼ710は1光年では0.64等星とまだ1等星として見えますがわずか1.5光年で1等星では無くなり15光年も離れるともう見えなくなります

 そのため、グリーゼ710が非常に明るい恒星として見える期間はほんの一瞬であり、その後はりゅう座ガンマ星の様な明るめの恒星が最も明るい恒星に返り咲きます。