2等星が北極星になっていることは実はかなり低い確率である

 先日までは地球からの距離が極めて近い恒星を主として書いてきましたが本日は点の北極に近い恒星について書いていきます。

1. 天の極と赤道

 天の北極とは地球の北極点から伸びている地軸と天球との交点であり、反対に南極点から伸びている地軸と天球との交点は点の南極と言います。

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天球と天の北南極、及び赤道の図

 ここで言う天球とは説明することが難しいですが簡単に言うと星が夜空に張り付いていると仮定したときに夜空を見ると球のように見え、その球のように見える夜空のことであります(より詳しい情報はWikipediaを参照してください)

https://ja.wikipedia.org/wiki/天球

 

 そして、赤道の延長のことは天の赤道と言い、天球も地球と同じように緯度と経度を持っています

 天球上の緯度のことは赤緯と言い経度のことは赤経といいますがここでの赤緯とは地球のものとは違い、天の北極点は+90°、天の南極点は-90°のように正負の記号で表されます。また、経度の方も0時から24時時間の様に表されています

 このように赤緯の表し方は緯度経度とは異なるため、若干の注意が必要ですが緯度の方は単純で北に行くほど数値が増え、南に行くほど数値が減り、赤道直下は0、北極点は+90度、南極点は-90度と覚えておけば良いだけです(つまり、赤道より北だとプラス、南だとマイナスである)。

 以上が天球上の緯度経度である赤緯についての説明でありますがここからは極地の近くに位置している恒星、つまり北極星南極星について書いていきます。

 

2. 北極星はあるが南極星は無いのか?

 北極星は太陽に次いで有名な恒星であり、シリウスよりも知名度の高い恒星であります。その理由は古代から目印に使われてきたからであり、目印に使われてきたためかなり明るい恒星のようにも思われます。

 しかし、あまり知られていませんが現在の北極星実は1等星では無く1.97等星、つまり2等星であり、全天で50番目程度の明るさに過ぎません。そのため、北極星は北斗七星の恒星に入れてもせいぜい4番目の明るさにしかならず、それはつまり北斗七星の恒星の内、3つの恒星が北極星よりも明るいことを意味しています。

 このように北極星は最も明るい恒星の一つ(1等星)ではありませんがそれでもかなり明るい恒星の一つであることには変わらず、次章でも紹介するように天の北極近くにこれほど明るい恒星があること自体かなり低確率であります。

 では、北極星はどれほど天の北極に近いのだろうか?

 北極星赤緯+89度16分天の北極からわずか44分しかずれておらず、天の北極近くには北極星を除くとかなり暗い恒星しかありません。

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天の北極周辺部は北極星以外には暗い4等星がかろうじである程度である

 上図の円は赤緯+80度線でありますがこの円の中、つまり赤緯+80度以上の範囲には北極星を除くと暗い4等星が2つほどあるだけであり、他の恒星はいずれも5等星以下の暗い恒星しかありません。

 そして、中心の+マークは天の北極であり、北極星が非常にこの+に近いことが分かります。地球の地軸はこの+を軸に回転しているため、地球がいくら自転しようともこの+の位置は全く変わらずこの+に近ければ近いほど動きは小さくなります(つまり極から最も遠い天の赤道付近の恒星の動きは非常に大きい)

 そのため、北極星は地球が自転してもほぼ位置が変わることは無く、ほぼ同じ位置にあるように見えます

 

 ここまでは北極星について書いてきましたが一つ疑問に思うことは無いでしょうか?

 それは北極星があるからには南極星もあるのでは無いかと言うことであり、実際に南極星はあるのでしょうか?

 答えはYesともいえますしNoともいえるものであり、確かに肉眼で見える恒星の中で天の南極に近い恒星はあります

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はちぶんぎ座σ星は肉眼で見えるがあまりにも暗すぎる

 肉眼で見える恒星の中で天の南極に最も近い恒星ははちぶんぎ座σ星(シグマ星)という恒星であり、この恒星の赤緯-88度57分北極星よりかは少し遠いですが非常に天の南極の近くに位置しています(上図の円は赤緯-80度線であり、天の南極は+マーク)。

 しかし、この恒星の明るさは5.45等と非常に暗く、北極星25分の1程度しかありません。そのため、この恒星を南極星といえるかというと微妙であり、確かに天の南極近くには肉眼で観測することのできる恒星はあるものの暗すぎるため、南極星があるかという答えは明白には出せません。

 ちなみに言うまでもありませんが明るい北極星はあるが明るい南極星が無い理由は単純に偶然なだけであり、特に深い意味はありません。

 

3. 明るい北極星がある確率はかなり低い

 今となっては北極星は当たり前の存在となっていますが実は明るい北極星がある確率は非常に低く、これほどまでに明るい北極星があることは珍しい状況といえます。

 その理由は赤緯+89度以上の面積は全天球の面積と比較すると非常に小さいからであり、算出は非常に説明しにくいため省略しますが赤緯x度から赤緯y度までの面積の割合は以下の式のように算出されます

 0.5×(sin y°- sin x°)

 ここでのsinとは三角関数のsinであり、例えば赤緯0度から+90度までの範囲が全天球に占める割合は0.5×(sin90°-sin0°) = 0.5 となり(ここではx=0, y=90)、全天球の半分が赤緯0度から+90度までの範囲に収まっています(これは明らかに明白な答えである)。

 では、赤緯+89度以上、即ち赤緯+89度から赤緯+90度までの範囲は全天球の何パーセントを占めるのだろうか?

 その答えは0.0152パーセント、つまり6,566分の1であり、北極星はこの範囲の中に存在しております。そして、北極星よりも明るい恒星は50個ほどしかなく、上位50個までにこの範囲(赤緯+89°以上)の中に1つでも収まる確率は0.759パーセント、つまり132分の1であり北極星並みの明るさの恒星が天の北極1度以内に収まる確率は100分の1もありません

 ちなみに5等星以上の恒星数は約3,000個といわれており、上位3,000個の恒星の内、一つでも赤緯-89度以下に収まる確率は36.7パーセント程度であるため、実は南極星(はちぶんぎ座σ星)も確率から言うと明るい恒星といえます。

 このように天の北極に北極星クラスに明るい恒星が収まる確率は1パーセントも無く、北極星がこの範囲にあることはかなり珍しいといえます。