太陽から最も近い恒星から太陽を見るとどれほどの明るさで見えるのか?

 先日は太陽系から最も明るい恒星であるシリウスについて書きましたが本日は太陽から最も近い恒星について書いていきます。

1. 太陽から最も近い恒星は何光年離れているか?

 太陽から最も明るい恒星であるシリウスは太陽から8.6光年と非常に近く、この距離は日本から肉眼で見ることのできる恒星の中では最も近いです。そして日本から肉眼で見ることのできる恒星の中では唯一10光年以内に位置しています(無論太陽は除く)。

 しかし、日本から肉眼で見ることのできない恒星を含むとシリウスよりも近い恒星は6つもあり、その内2つの恒星は南に行くと肉眼で観測することが可能な恒星です。つまり、残りの4つの恒星は非常に近いにもかかわらず肉眼で見ることが不可能な恒星であり、太陽と比べても非常に暗い恒星であります。

 では、シリウスよりも近い恒星をリスト化していきます。ここで肉眼で見ることのできる恒星とは6.5等よりも明るい恒星のことであり、これよりも数値が大きくなる(暗くなる)と肉眼では見えません。

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近くても案外見えない恒星が多い

 太陽から近い順に恒星を並べると上表のようになっており、意外に肉眼で見ることのできる恒星は少ないです。この中で肉眼で見ることのできる恒星はリギル・ケンタウルスA, リギル・ケンタウルスB, 及びシリウスの3つであり、他の恒星は見ることが不可能です(最も明るいラランド21185でも2.5倍明るくないと見えない)。

 そして、これらの恒星は光年にすると非常に近いがキロメートルにするといずれも10兆(無論億では無い)kmを優に超えており最も近いプロキシマ・ケンタウリでさえ40兆kmほども離れています

 この距離は直径が1392億cmもある太陽の大きさを1 cmに縮めても288 kmにも及び、この距離は東京から八丈島までの距離に匹敵します

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巨体の太陽を1cmに縮めても最も近い恒星までの距離は遠い

 そして、実はこのプロキシマ・ケンタウリという恒星は最も近いケンタウルス座の恒星という意味であり、元々固有名のついた恒星ではありません。では、何故固有名がついていないかというと地球から見た明るさが極めて暗いからであり、今より66倍明るくなってようやく見えるほどの明るさしかありません。

 また、この恒星は2,3番目に近いリギル・ケンタウルスABと連星を組んでいるため、別名リギル・ケンタウルスCとも呼ばれています。そのため、最も近い恒星は恒星系で考えるとリギル・ケンタウルス系となり、この中でABは普通に明るい恒星として観測できるため、最も近い恒星は肉眼で観測することができると言うことになります。

 

2. 最も近い恒星系、リギルとはどのような恒星か?

2.1 リギル・ケンタウルスはどこに見えるのか?

 リギル・ケンタウルスは3つの恒星からなっている連星系であり、合計するとマイナス0.27等とシリウス, カノープスに次ぐ明るさであり、非常に輝いて見えます。しかし、日本では不思議とこの恒星の知名度は高くありません。

 では、何故ここまで明るい恒星であるにもかかわらず無名であるかというとこの恒星はあまりにも南にありすぎて東京から観測することが不可能だからであり、沖縄に行ってようやく観測することが可能となっています。ちなみにカノープスも非常に南に位置していますが東京からだとギリギリ観測することが可能となっています(本来の明るさでは見えないが)。

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リギル・ケンタウルスは非常に南に位置している

 リギル・ケンタウルス赤緯(恒星の緯度)がマイナス60度50分に位置しているため、北緯29度10分よりも南に行かないと観測することができません。そのため、日本では小笠原諸島や沖縄ぐらいでしか観測することができず、そこでもかなり地平線すれすれにしか見ることはできません。

 また、上図からも分かるようにリギル・ケンタウルスプロキシマ・ケンタウリはかなり位置がずれており、この理由は以下のようになっています。

そのため、同じ恒星系であるにもかかわらず場所がずれており、プロキシマ・ケンタウリのほうが更に南によっています。

2.2 リギル・ケンタウルスのデータ

 ここからはリギル・ケンタウルスABとプロキシマ・ケンタウリとの距離を書いていきたいと思いますがまず、これらの恒星がどのような恒星であるかについて書いていきます。

 リギル・ケンタウルス系の中で最も明るいリギル・ケンタウルスA(以下A)は太陽よりも若干大きな恒星であり、直径は太陽の1.23倍ほどもあります。そして、二番目に大きなリギル・ケンタウルスB(以下B)は太陽の0.86倍程度の若干小さな恒星であります。更に、プロキシマ・ケンタウリは最も近い恒星であるにもかかわらず肉眼で見ることが不可能なだけあって非常に小規模な恒星であり、直径も太陽の0.15倍しかありません。

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リギル・ケンタウルスの大きさと明るさ

 リギルケンタウルス系の恒星の大きさは上図(左から太陽, A, B, 赤色はプロキシマ)のようになっており、データは図の下に掲載しています。そして、これらの恒星はいずれも主系列星という若い恒星の段階にあり、主系列星の特徴は以下の通りになっています。

  • 質量が大きいほど表面温度が高い
  • 質量が大きいほど直径が大きい
  • 質量が大きいほど光度が強い

つまり、質量が極めて小さなプロキシマは表面温度が低いため、赤い恒星として見え、直径も光度もかなり小さくなっています。

 更に質量も大きな恒星のほうが燃料の消費が激しいため寿命が短く、将来的にはAが最も早く寿命が尽き、次いでB、その後とてつもなく長い時をかけた後にプロキシマの寿命が尽きます

 ちなみに太陽はAとBの間に寿命が尽き太陽, A, およびBはヘリウム→炭素核融合が起きるため寿命が尽きそうな段階に達すると巨星という直径の大きな恒星となるプロキシマは質量が小さすぎるため、生涯を通して水素→ヘリウムの核融合しか起きず、小さい恒星のまま寿命が尽きます。

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恒星は質量によって核融合の段階が異なる

 

3. リギルから太陽を見るとどれだけ明るいか?

3.1 リギルから見た太陽の明るさと位置

 最後にリギル・ケンタウルスから太陽を見た明るさについて書いていきます。昨日はシリウスから見た太陽の明るさについて書いてきましたがその明るさはそこまで明るくなく、せいぜい45番目に明るい恒星としてしか見えない程度です。

 しかし、リギル・ケンタウルスシリウスの2倍近くも近いため、当然ではあるがシリウスから見た太陽よりもはるかに明るく見え、太陽はおおよそ0.46等の恒星として観測されます。

 この明るさは当然1等星の中に入っており、厳密にいうと0.5等よりも若干明るいため、0等星に分類されます。ここまで明るいとリギル・ケンタウルスから見て最も明るい恒星の中に入るほどであり、リギル・ケンタウルスから見ると9番目に明るい恒星として観測されます。

 つまり、シリウスの場合だと太陽はそこまで明るい恒星として観測されなかったがリギル・ケンタウルスの場合は相当明るい恒星として観測され、太陽はカシオペア座で最も明るい恒星として観測されます。

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太陽はカシオペア座のどの恒星よりも明るく見える

 太陽はカシオペア座のWから少し離れたところに輝く明るい恒星として見え、カシオペア座の恒星はどの恒星も2等級以下であるため、太陽はカシオペア座の恒星と比較しても非常に明るく見えます

 ちなみにリギル・ケンタウルスから最も明るく見える恒星は9.52光年離れたシリウスであり、太陽からの距離よりも若干遠いため地球から見た明るさよりも少し暗いマイナス1.24等となります(地球からの明るさはマイナス1.47等)。

3.2 リギルABから見たプロキシマ

 ここまではリギル・ケンタウルスから見た太陽の明るさについて書いてきましたが今度はリギル・ケンタウルスABから見たプロキシマ・ケンタウリの明るさについて書いていきます。

 リギル・ケンタウルスABとプロキシマ・ケンタウリ(以下プロキシマ)までの距離は0.205光年も離れており、同じ連星系に属しているにもかかわらず相当離れています。そのため、天球上でもはっきりと異なるところに見え、その遠さが伺えますが太陽との距離と比較するとかなり近いです。

 そのため、いくらプロキシマが暗い恒星でも明るく見えそうであります。しかし、実際は相当暗い恒星としてしか観測されずその明るさは4.47等と太陽とは比にならないほど暗く、太陽の40分の1程度の明るさでしか見えません

 つまり、リギル・ケンタウルスABから見たプロキシマはとても同じ恒星系に属しているようには見えず、全く関係のない恒星のようにしか見えません。

 このようにプロキシマは同じ恒星系からも単なる暗い恒星にしか見えず、プロキシマが非常に暗い恒星であることが容易にわかります。ちなみにプロキシマからリギル・ケンタウルスABを見るとそれぞれマイナス6.65等マイナス5.30等の非常に明るい恒星として見え、この明るさは金星よりも明るいです

 

 以上が太陽系から最も近い恒星と太陽がどのような明るさで見えるかについての説明であり、太陽が最も明るい恒星の一つとして見えることが分かります。