極寒のシベリアの夏場は涼しいのか?

 本日は南極とグリーンランドを除くと最も冬の厳しいシベリアの気候について書いていきます。

1. シベリアの気候と夏の気温

 シベリアは南極とグリーンランドを除くと世界で最も冬の寒い地域であり、真冬にもなると氷点下20 ℃~60 ℃にも達します。そのため、シベリアは年中寒いようにも思われがちでありますが年中寒いと森林地帯は形成されません。しかし、シベリアにはタイガと呼ばれる大森林地帯が広がっており、決して不毛の地ではありません。

 では、なぜシベリアには広大な森林地帯が広がっているのでしょうか?

 その答えはシベリアには短いながらも夏があるからであり、シベリアの夏はそこそこ気温が高くなります。そのため、シベリアには世界的に見ても非常の広大な森林地帯が広がっており、地図を見ても一目瞭然です。

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シベリアの範囲

 シベリアはおおよそではあるが黒線で囲まれた部分であり、厳密にはカムチャッカ半島樺太などは含まれていません。そして、カザフスタンやモンゴルなどは黄土色をしており、これは降水量が少なく森林が無いことを意味しています。しかし、シベリアは緑色をしており、これは広大な森林地帯が形成されていることを意味しています。

 

 ここまでシベリアには森林があることを説明していきましたがここからはシベリアの気候について書いていきたいと思います。シベリアの気候の特徴としては

  • 冬は極寒だが夏はそこそこ気温が上がる
  • 降水量が最低限ある

ことであり、このような気候のことを冷帯気候(亜寒帯気候, D気候とも言う)と言います。

 冷帯気候はシベリア以外にはカナダ、北欧、北海道等に広がっており、南半球にはありません。そして、冷帯気候の条件は以下のようになっています。

  • 最も寒い月の平均気温が氷点下3 ℃未満である (冬が極寒)
  • 最も暑い月の平均気温が10 ℃以上である (夏がそこそこ暖かい)
  • 降水量が乾燥限界を上回っている (降水量が最低限ある)

 この条件を書くと何のことかよく分かりませんがここで例を挙げて説明していきたいと思います。

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シベリアの主要都市の気温と降水量

 上表はシベリアの主要都市であるイルクーツクノヴォシビルスクの雨温図(月ごとの気温と降水量を表した図)であります。そして、これらの都市はいずれも最も暖かい月は7月で最も寒い月は1月です。

 では1月の平均気温を見ますとイルクーツク氷点下17.8 ℃ノヴォシビルスク氷点下16.5 ℃でいずれも氷点下3 ℃を下回っています。加えて7月の平均気温を見ますとそれぞれ18.3 ℃19.4 ℃で10 ℃を上回っているため、気温だけでは冷帯に属しています。

 しかし、まだ条件が残っており、それは乾燥限界です。乾燥限界とは乾燥帯か湿潤気候を分けるための指標であり、年間の合計降水量がこの値を上回ると乾燥帯では無くなります

 そして、乾燥限界の算出方法はありますが説明に時間がかかるため、結果だけ表記します。イルクーツクノヴォシビルスクの年間降水量はそれぞれ480mm 、460 mm

であり、乾燥限界はそれぞれ300 mm、174 mmであります。そのため、両者ともに乾燥限界を上回っており、乾燥帯では無く冷帯に属していることが分かります。

 

 また、冷帯気候は季節による降水量で更に細分化することができ、降水量に大きな偏りが無い冷帯湿潤気候(Df)、冬季に降水量の少ない冷帯冬季少雨気候(Dw)、夏期に降水量の少ない冷帯夏期少雨気候(Ds, ここでは省略)に分けられます。

 冷帯冬季少雨気候は夏期の最も降水量の多い月の降水量冬季の最も降水量の少ない月の降水量の10倍よりも多いことを条件としています。そして、イルクーツクで最も降水量の多い7月(夏期)の降水量は114 mm、最も降水量の少ない2月(冬季)の降水量は8 mmで10倍以上の差があるため、イルクーツクは冷帯冬季少雨気候に属しています。

 それに対してノヴォシビルスクの最も降水量の多い月である7月は66 mm、最も降水量の少ない3月は17 mmであるため、10倍の開きは無く、ノヴォシビルスクは冷帯湿潤気候に属しています。

 シベリアはこの2つの気候を主としており、寒帯である北極海沿岸を除くとほぼ霊体となっています。

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イルクーツクノヴォシビルスクの位置

 ちなみにイルクーツクノヴォシビルスクは上地図の、位置にあり、イルクーツクバイカル湖の近く、ノヴォシビルスクは西シベリアにあります。そして、モンゴル、バイカル湖満州、朝鮮はシベリア高気圧の影響を冬季に受けるため冬季の降水量が非常に少なくなり、結果として冷帯冬季少雨気候となります。

 

2. シベリアの真夏は涼しいのか?

 ここからはシベリアの真夏の気候について書いていきます。シベリアは北極海沿岸を除くと大半が冷帯気候に属しており、夏場になると気温がそこそこ上がります。そして、先ほども書いたようにイルクーツクノヴォシビルスクの真夏(最も暖かい月)の平均気温は19 ℃前後と比較的過ごしやすい気温となっており、一見するとシベリアの夏は快適なようにも見えます。

 しかし、実際のシベリアの夏はずっと涼しいわけでは無く猛暑日になることもあれば夏とは思えないほどにまで冷え込むこともあります。そのため、あくまで平均すると涼しいだけであり、日にちごとに気温は大きく変わります。

 ここで実際に例を挙げて説明していきたいと思いますがシベリアと言っても広大であり、今回は東シベリアの町を例に挙げていきたいと思います。東シベリアとはシベリアの中でも東にある広大な地域であり、この場所は世界で最も冷え込む地域でもあります。特にヴェルホヤンスクやオイミャコンといった町では北半球の最低気温を観測したほどであり、過去には氷点下70 ℃程度にまで達したこともあります。

 そして、今回はヴェルホヤンスクについて書いていきます。ヴェルホヤンスクはシベリアの中でもかなり東部に位置しており、大体広島と同じ緯度に位置しています。更に北極圏に位置しているため、夏至近くになると白夜となり、反対に冬至近くになると極夜になります。

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ヴェルホヤンスクの位置

 ヴェルホヤンスクは経度こそ日本と変わらないが遙か北方に位置しています。更に地形の影響も加わるため、冬場の気温はとてつもなく低くなり、1月の平均気温は氷点下45.3 ℃にもなります。しかし、夏場になると比較的気温が上がり、7月の平均気温は16.5 ℃にまで上がります。そのため、ヴェルホヤンスクは世界的に見ても最も寒暖差の激しい地域であり、寒暖差だけなら世界一と言っても過言ではありません。

 しかも日ごとの寒暖差も激しいため、真夏でも暑いときは暑く、寒いときは日本の真冬並みに気温が下がることもあります。

 では、ここからはヴェルホヤンスクの7月の気温を見ていきたいと思います。ここでは2019年7月の気象庁のデータを参照します(↓参照URL)。

https://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/monitor/dailyview/graph_mkhtml_d.php?&n=24266&p=31&s=1&r=1&y=2019&m=8&d=1&e=0&k=0

 

 ヴェルホヤンスクで最も気温が上がった日は2019年7月13日で最高気温は32.0 ℃、最低気温は11.9 ℃と北極圏に位置しているにもかかわらず30 ℃を超えており、以外に気温が高いことが分かります。しかし、最低気温は12 ℃程度と低く、寒暖差がかなり激しいことが分かります。

 次に最も下がった7月22日の最高気温と最低気温を書いていきます。この日の最高気温は15.4 ℃と比較的低いぐらいであるが最低気温に関しては氷点下2.5 ℃真夏であるにもかかわらず氷点下となっており、涼しいを通り越して底冷えするほどの寒さとなっています。

 このようにシベリアは真夏でも氷点下になることもあり、反対に暑いときは30 ℃を超えることもあるほどです。

 ちなみに2016年と2018年には東シベリアのサハ共和国(ヴェルホヤンスクもここに含まれる)で真夏に氷点下になっただけでは無く降雪も観測され、真夏であるにもかかわらず冬のような光景になったことさえもあります(下のURLはそのときの記事)。

https://earthreview.net/winter-came-july-yakutsk-russia/

https://jp.sputniknews.com/russia/201807205143515/

 

 以上のことより、シベリアの夏は涼しいのでは無く、暑い日もあれば氷点下にまで冷え込むこともあり、決して過ごしやすい気候というわけではありません。