ユーラシア内陸の砂漠は真冬になると極寒と化す

 前回は亜熱帯地域に形成される砂漠について書きましたが今回は高緯度に位置している砂漠について書いていきたいと思います。

1. 高緯度にも砂漠が形成される

 地球上にできる最も広大な砂漠は大気の循環によって形成されるものであり、この広大な砂漠を形成する高気圧のことを亜熱帯高圧帯と言います。そして、前回の記事でも説明したように亜熱帯高圧帯は比較的低緯度にできるため、夏場の気温は凄まじく暑くなるが冬場の気温はそこまで低くなることは無く、氷点下に達することもあまりありません。

 しかし、世界の砂漠は亜熱帯高圧帯だけで形成されるわけでは無く、山脈に遮られる海から遠い近くに寒流が流れていることによって形成されるものもある。特に内陸性の砂漠の中にはかなり緯度の高いところに位置しているものもあり、例えば内陸性の砂漠として有名なウイグルタクラマカン砂漠やモンゴルのゴビ砂漠などは日本の緯度で言うと東北から北海道に相当します。

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中央アジアの砂漠は緯度が高い

 上図はアフリカ大陸北部からユーラシア大陸にかけての航空写真でありますが中央アジア(ここではモンゴルからカスピ海東岸までの地域)は緑が少ないことが分かります。これは降水量がかなり少ない、即ち乾燥していることを意味しています。

 そして、緯度に着目しますと北アフリカからアラビアにかけての砂漠は緯度が低いのに対し、中央アジアの砂漠は緯度が高く、明らかに亜熱帯には位置していません。そのため、これらの砂漠は亜熱帯高圧帯による影響では無く、海からの距離が遠いこと(と山脈に遮られている)が原因で形成されています

 このように海から遠い地域でも砂漠は形成され、これらの砂漠は緯度が高いため亜熱帯高圧帯による砂漠とは異なり、冬の気温は容赦なく下がります(夏の気温は亜熱帯性の砂漠よりかはましであるがそれでも相当暑い)。この理由は砂漠は熱しやすく冷めやすい地形であることに起因しており、実際に那覇よりも若干緯度の低いルクソール(エジプトのピラミッドのある都市)でさえ真冬の朝は5 ℃近くにまで下がります。

 

2. 極寒の砂漠

 高緯度の内陸に形成される砂漠は緯度が高いため、真冬になると極端に気温が下がり、一日中氷点下の真冬日が連続するほどです。例えばタクラマカン砂漠よりも北に位置しているトルファンという都市では真夏の気温は40 ℃を当たり前のように超える真冬になると氷点下10 ℃を当たり前のように下回ります。そのため、タクラマカン砂漠、およびその周辺部では灼熱と極寒の両方を味わうこととなり、灼熱のみのサハラやアラブよりも過酷な環境だといえます。

 更にタクラマカン砂漠よりも北に位置しているゴビ砂漠は夏の気温こそタクラマカン砂漠よりも低いものの冬の気温はタクラマカン砂漠に輪をかけたかのように低くなり、砂漠であるにもかかわらず氷点下20 ℃は当たり前の世界となります。そのため、ゴビ砂漠は世界で最も寒い砂漠であり、極端に降水量は少ないが冬場に降水があった場合は雪が溶けることも無く、まるで雪原のような世界となるほどです(南極や北極も降水量の少なさから砂漠と呼ばれることもあるがあくまで寒帯であるため、ここでは砂漠とは呼びません)。

 では、ここからはゴビ砂漠の町の町について紹介していきたいと思います。ゴビ砂漠の人口は過酷さ故に非常に少ないが一応町は存在しています。例えばモンゴル側で比較的人口の多いものにはダランザドガド(ウムヌゴビ県)、サインシャンド(ドルノゴビ県)、マンダルゴビ(ドンドゴビ県)などがあります。

 そして、今回はサインシャンドについて書いていきます。サインシャンドは北緯44度54分、東経110度8分に位置しており、サハラ砂漠と比較するとかなり北部に位置しています。

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サインシャンドの位置

 サインシャンドはモンゴルの南東部に位置しており、日本とも比較的近くにあります。しかし、気温に関しては日本のどの地域よりも寒く、真冬になると極寒で有名なハルビンとほぼ同じぐらいにまで気温が下がります。

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サインシャンドの気温と降水量

 サインシャンドの降水量は夏も少ないが冬になると夏とは比にならない少なくなり、ほぼ降水が無くなります。そして、年間の合計降水量もわずか111 mm程度しか無いため、低温砂漠気候(BWk, 年間の平均気温が18 ℃を下回る寒冷な砂漠。ちなみにサインシャンドの年平均気温は3.6 ℃)に分類されます。

 そして、サインシャンド最大の特徴は冬季の極端な低温であり、特に12月と1月の平均最低気温は氷点下20 ℃をも下回るほどです(平均最低気温が氷点下の月は7ヶ月にも及ぶ)。しかし、季節の進みは非常に早く、夏場は短いものの7月にもなると平均最高気温は30 ℃近くにもなり、熱帯地方と大差が無くなります。けれども夜間になると急激に冷え込み、熱帯夜になることはまずありません。

 このようにサインシャンドは冬場になるととてつもないほどの低温になり、一般的な砂漠のイメージとはかけ離れた世界となるが夏場になると期間は短いものの昼間はかなり暑くなり、猛暑日になる日もあります。

 

3. ゴビとサハラ

 最後にゴビ砂漠サハラ砂漠を比較していきたいと思います。

 始めに気候とは関係はありませんが実はゴビ砂漠サハラ砂漠の意味について書いていきます。ゴビ砂漠のゴビ(Govi)とはモンゴル語で砂漠や荒れ地を意味しており、サハラ(Sahara)とはアラビア語で砂漠を意味しています。つまり、ゴビもサハラも同じような意味であり、両方とも「砂漠砂漠」という意味であります(モンゴル語ではゴビゴビ、アラビア語ではサハラサハラ)。

 このことより、ゴビ砂漠サハラ砂漠はそもそも名称自体がおかしく、実際に現地では単にゴビ、サハラと呼ばれています。

 更にゴビ砂漠はもう一つ大きな間違いがあります。それは名称のスペルであり、英語でゴビ砂漠は「Gobi Desert」と呼ばれています。ここで再びモンゴル語でゴビと表記しますがゴビとは「Govi」であり、英語表記とは異なっています。これは推測でしかないもののおそらく間違った名称が広まったのでは無いかと考えられ、英語でも「v」と「b」の区別があまりつかない可能性も十分考えられます。

 

 では、ここからはサハラのルクソールとゴビのサインシャンドの気温を比較していきます。

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ルクソールとサインシャンドの年間平均気温

 サインシャンドはルクソールと比較して季節による寒暖差が非常にはっきりしており、最も暖かい月と最も寒い月の平均気温の差、即ち年較差が40.8 ℃と極めて大きな値となっています。そして、夏場の気温はサインシャンドの方が幾分か低くはなっていますが冬場になると30 ℃ほどの差が出ており、サインシャンドの冬がいかに寒いかが分かります(ここまで来ると寒いと言うよりも痛いレベルであるが...)。

 ちなみにルクソールの年較差は18.5 ℃と緯度の割にはかなり大きい方ではあるがサインシャンどの半分も無く、これは冬場の気温があまり下がらないからであります。

 以上のことより、砂漠と聞くと暑いイメージがありますがゴビ砂漠のような高緯度の砂漠ともなると冬場は極寒となり、氷の砂漠のような環境になります。

 

ルクソールと亜熱帯砂漠の記事(ルクソールの気候をより詳しく書いてあります)

www.rigelultragiant.com