沖縄の緯度は大規模な砂漠の形成される所である

 前回は日本のほぼ北端、北緯45度について書いてきましたが今回は沖縄と同じ緯度の気候について書いていきたいと思います。沖縄は緯度が日本の中で最も低く(最南端は東京都の方が低い)、高温多湿な気候となっていますが実は沖縄と同じ緯度の場所には砂漠が多く、沖縄は砂漠のできやすい緯度に位置しています。

1. 砂漠のできやすい緯度

 砂漠と言うと日本にはなじみのないものであり、実際に日本には砂漠はありません。そのため、砂漠と言うと非常に珍しい地形のようにも思われがちでありますが実は世界中には砂漠はかなり多く存在しており、実際に南極を除くすべての大陸に砂漠は存在します(実際は南極の降水量は極めて少なく、世界最大の砂漠と言われていますが気候上寒帯に属しているため、ここでは砂漠としては扱いません)。

 そして、砂漠はどの緯度に多いかというと実は台湾から沖縄にかけての緯度に最も多く存在しており、下の地図を見れば分かります。

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世界最大の砂漠地帯は那覇の緯度周辺に位置している

 世界最大の砂漠地帯は北アフリカからアラビア半島にかけての地域であり、この2つの面積を合計するとヨーロッパよりも広いです。そして、緯度で言うと大体北緯12~33度にかけて広がっており、これは大体北回帰線の周辺部に相当します。

 では、なぜこの地域に広大な砂漠地帯が形成されるかというとこの地域は地球規模の大気の循環によって高気圧が生じやすくなっているからであり、高気圧が生じると雲ができにくくなります。そのため、これらの地域はほかの地域と比較すると極端に降水量が少なく、結果として広大な砂漠地帯が形成されます。

 そして、緯度的に見ると熱帯から亜熱帯にかけての地域であるため、この地球規模の高気圧は亜熱帯高圧帯と呼ばれ、日本近海に位置している太平洋高気圧もこれに属しています。

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地球の大気循環

 地球は上図のように大気が循環しています。では、なぜこのような循環が起こっているかというと空気の重さは温度によって異なるからであり、温度が高いほど空気は軽くなります。そのため、気温の高い赤道では空気が軽いため、上昇気流が発生し、反対に温度の低い極では下降気流が発生します。

 そして、赤道付近で生じた上昇気流は緯度の高い方向に向かっていくようになるが極地まで到達することは無く、緯度30度あたりのところまで到達した後に下降気流となり、地表に降りてきます。これこそが先ほど紹介した亜熱帯高圧帯であり、ここまで向かうまでに水分を落としていったため、乾燥した空気が下降気流として発生します。

 そのため、この亜熱帯高圧帯が発生する緯度では降水量が非常に少なくなり、大規模な砂漠地帯が形成されるようになります。

 ちなみに極で発生した下降気流も緯度の低い方向に向かっていき、大体緯度60度ぐらいで上昇気流となるため、これらの地域では比較的降水量が多くなります。これは亜寒帯低圧帯と呼ばれ、気圧は低くなっているものの気温自体が低いため赤道直下のような豪雨地帯(緯度的に見ると豪雪地帯)にはなりません。

 このように大気の循環が大規模な砂漠地帯を生み出しますが必ずしもこれらの緯度全域で降水量が少なくなるわけではありません。実際に沖縄の降水量は、かなり多い方であり、一見すると先ほどの説明と矛盾しているように思えますがこれは季節風の影響で降水量が多くなっているからであり、季節風大陸の東部で影響が大きくなっています

 そのため、沖縄はかなり湿潤な気候となっており、降水量も非常に多くなっています。そして、実際にサハラ砂漠と沖縄の気候の違いについて紹介していきたいと思います。

 

2. サハラ砂漠の都市と沖縄の気候、降水量の違い

 ここからはサハラ砂漠内に位置している都市とほぼ同じ緯度に位置している那覇の気候を比較していきます。サハラ砂漠は世界的に見ても非常に降水量の少ない地域であり、特にサハラ砂漠の北東端に位置しているエジプトは世界一降水量の少ない国であります。

 エジプトはピラミッドで有名な国であり、そのピラミッドがある都市ルクソール(Luxor)は年間の降水量が1 mmと極めて少なく、雨が降る日も年一回あるかないかと言われています。更に降ったとしても非常に少ない量であり、この降水量から逆算するとピラミッドがあった時代から現在までの合計降水量はせいぜい尾鷲市1.3年分程度にしか過ぎません。

 このように降水量の極めて少ないエジプトの中でもルクソールはとりわけ降水量が少なく、5年間の合計降水量が日本の1日分にしか過ぎない程度でありますが気温の方はどうなのでしょうか?

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ルクソールの位置

 ルクソール北緯25度41分、東経32度39分に位置しており、緯度だけで見ると那覇よりも少し低い程度であります。しかし、気候は那覇とは全く異なっており、那覇と比較すると冬は非常に寒く夏は非常に暑い気候となっています。

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ルクソールの年間の気温

 ルクソールの気温の特徴は以下の通りです。

  • 昼夜の気温差(日較差)が非常に大きい
  • 1年の気温差(年較差)も緯度の割にはかなり大きい

 ルクソールは日較差、年較差共に非常に大きいことが特徴であり、真夏(7月)の平均最低気温と真冬(1月)の平均最高気温がほぼ同じであるほどです。

 そして、4月から10月の7ヶ月間は平均最高気温が35 ℃を超えており、特に6月から8月までは40 ℃を超えているほどです。その一方で最低気温に関しては意外に低く、12月から2月にかけては一桁となっており、特に1月に関しては5.4 ℃と北緯25度代とは思えないほど低くなっています。この気温は札幌よりも高緯度に位置しているモナコよりも低いほどです

 そのため、ルクソールは夏場になると信じられないほど高温となり、反対に冬場になると緯度の割には相当な寒さとなります。しかし、日較差が大きいため真夏でも夜は急激に気温が下がり、反対に真冬でも昼は急激に気温が上がります。

 ちなみにルクソールの年平均気温は24.3 ℃と那覇の23.1 ℃よりも1.2 ℃高く、これは夏の灼熱の影響で平均が底上げされているからです。

 また、ルクソール那覇の最高気温、最低気温を比較すると非常に興味深いことが分かります。

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紫:ルクソール 緑:那覇

 上図はルクソールの最高気温と最低気温、および那覇の最高気温と最低気温を比較したものでありますがどこ一つとして交わっている場所は無く最低気温は常にルクソールの方が低く、反対に最高気温はルクソールの方が高くなっています

 特に最高気温は夏場(というよりも春)になるとルクソールが圧倒的に高く、冬場はルクソールの方が圧倒的に低くなっています。

 このように那覇は日較差も年較差も小さいため、ルクソールの曲線に挟まれる形となり、同じ緯度でも気温の傾向が非常に異なっていることが分かります。これは那覇が海に囲まれており、冷めにくく熱しにくい環境になっているのに対しルクソールは砂漠な上に内陸(東にユーラシアがあるため)という熱しやすく冷めやすい環境になっているからです。

 ちなみに那覇の年間降水量は2,041 mmもあり、これは西暦が始まってから現在までのルクソールの合計降水量よりも多いほどです。