全ての1等星が見れる範囲はどこからどこまでなのだろうか?

 先日は日本から見て最も明るい周極星(1年中見ることのできる恒星)はなんなのかについて書いてきましたが本日は全ての1等星を見ることのできる範囲について書いていきます。

 

1. 赤道に近いほど多くの恒星が見え、恒星の場合は天の赤道に近いほど見える範囲は広くなる

 周極星として見える恒星の範囲は緯度が高くなればなるほど広くなりますが反対に見ることのできない恒星の範囲も広くなり、北極点の場合だと天の赤道よりも北の恒星は全て周極星となりますが南の恒星は全く見えなくなります。

 反対に赤道直下だと全ての恒星が観測可能となりますが反対に周極星となる恒星は全くなくなるため、一年中見ることのできる恒星は存在しなくなります。

 そして、恒星の方に話を移しますと天の赤道に近い恒星ほど地球から見える範囲は広くなり天の赤道直下に位置している恒星は地球上のどの場所からでも見ることができますが反対に周極星として見える場所は一切なくなります

 例えば2等星で最も天の赤道に近いオリオン座のミンタカ(三つ星の一つでリゲル寄りの恒星)の赤緯-00°17′57″とほぼ天の赤道直下に位置しておりミンタカを見ることのできる範囲は北緯89°42′03″よりも南の範囲であります。これは北極点から33.2 kmまでの範囲のみで見えず、これ以外の範囲では見ることが可能となっています。

 つまり、ミンタカが見れない範囲は地球上のわずか0.0007 %の面積だけとあり、それ以外の場所ではミンタカを見ることが可能となっています。

 反対にミンタカを周極星としてみるためには南緯89°42′03″よりも南に行く必要があり、ミンタカを周極星としてみることのできる範囲はほぼ無いといえます(こちらも0.0007 %)

 その一方で天の赤道から最も遠いポラリス赤緯+89°15′51″なので南緯00°44′09″よりも南の位置では見ることができなくなり、これは地球の総面積の49.4 %に相当します。つまり、ポラリスを見ることのできる範囲は地球の総面積の半分強程度しかなくポラリスは最も周極星として見える範囲は広いものの同時に見えない範囲もかなり広いことが分かります。

 ちなみにポラリスを周極星としてみるためには北緯00°44′09″よりも北に行けば良く、この範囲は勿論地球上の49.4 %に相当します。

 以上のことより、ポラリスが周極星でも一年中見えないわけでも無い範囲はわずか1.2 %にしか過ぎず地球上の大半の地域ではポラリスが周極星、または一年中見えない恒星となっています。

 

2. 1等星が見える範囲

 次に1等星がどこまで見えるかについて書いていきます。昨日は最も北に位置しているカペラと最も南に位置しているアクルックスについて書いてきましたが本日は21個全ての1等星について書いていきます(-1等星、0等星も無論含んでいる)。

 1等星の見える範囲と周極星として見える範囲は以下の表にまとめました。

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 この表から天の赤道に最も近い恒星は赤緯+05°13′29″のプロキオンであることが分かり、反対に天の赤道から最も遠い恒星は赤緯-63°05′57″のアクルックスであることが分かります。

 そして、天の赤道よりも北に位置している恒星は10個南に位置している恒星は11個であるため、ほぼ均等に分かれています。しかし、南側に位置している恒星の方が明るいものが多く、現に最も明るい恒星であるマイナス1等星であるシリウスカノープスは両方とも南側に位置しています。

 また、ここからはこの表の見方を例を挙げて書いていきます。ここでは最も明るい恒星であるシリウスについて書いていきますがシリウス赤緯-16°42′58″であり、見ることのできる範囲は北緯73°17′02″以南となっています。

 これはシリウス北緯73°17′02″よりも南に位置している地域で見ることが可能であることを意味しており、これよりも北に位置している場所ではシリウスを見ることはできません

 しかし、これほどまでに緯度の高い地域はシベリアの北端やグリーンランド北部程度と非常に限られているため、地球上のほぼ全ての陸地でシリウスを見ることが可能となっています。

 また、周極星として見える範囲は南緯73°17′02″以南と書いていますがこれは南緯73°17′02″よりも南の地域ではシリウスは一年中沈まないことを意味しており、この範囲に含まれる陸地は南極大陸しかありません。つまり、南極大陸以外の陸地ではシリウスはかならずどこかで沈むこととなり、一年中見えることは決してありません。

 以上がシリウスの例となりますがここからはどの恒星も見える範囲について書いていきます。最も広範囲で見ることの難しい恒星は高緯度側の恒星であるため、北はカペラ南はアクルックスであります。そして、これらの恒星を見ることのできる範囲はそれぞれ南緯44°00′07″以北北緯26°54′03″以南であるため、この両方の条件を満たしていればどの恒星も見ることが可能となります。

 つまり、南緯44°00′07″~北緯26°54′03″の範囲にあればどの恒星も見ることが可能となり、全1等星を見るために移動する必要性は無くなります。更に南緯26°54′03″以南であれば周極星として見える恒星が存在してくるため、南緯44°00′07″~南緯26°54′03″の場所であれば全ての1等星を見ることが可能となる上に周極星として見える恒星も存在するようになります

 その一方で北半球で周極星として見える1等星が存在するようになるには北緯44°00′07″以北である必要があるため、これよりも南にいれば周極星として見ることのできる恒星は無くなります。加えて北緯26°54′03″以北ではアクルックスが見えなくなるため、全1等星を見ることが不可能となり北緯26°54′03″~北緯44°00′07″の範囲では周極星が無くなる上に全1等星を見ることも不可能となります

 残念ながら日本の大半の地域もこの範囲に位置しているため、このような状況となり、北緯35°地点ではアクルックス, リギル・ケンタウルス, ハダル, アケルナルを全く見ることはできず、周極星となる恒星もありません。

 このように最も北にある恒星の赤緯は最も南にある恒星のものと比較すると低いため、南半球のほうが1等星の観測には有利となります。

日本で一年中見ることのできる恒星の中で最も明るい恒星はどの恒星なのか?

 本日は一年中見ることにできる恒星、つまり周極星について書いていきます。

 

1. 一年中見える周極星 

 周極星とは一年中観測することのできる恒星のことであり、いかなる時でも地平線下には沈みません。例えば現在の北極星であるこぐま座α星は北半球のほぼ全域で周極星となる恒星であり、日本ではどの季節でも観測することができます。

 しかし、反対にこぐま座α星は南半球のほぼ全域で観測することは不可能であり、その理由はいかなる時でも地平線から上に出ないからであります。

 このようにとある地域で周極星である恒星は別の地域では必ず見えない恒星となっており、高緯度側に位置している恒星ほど周極星である範囲が広くなっています。それは同時に見えない地域も広いことも意味しています。

 例えば赤道直下では周極星となる恒星は存在しませんが同時に一年中見ることのできない恒星も存在しておらず、どの恒星でも観測することは可能となっています。

 その一方で北極点では天の赤道よりも北に位置している恒星は全て周極星となっていますが反対に天の赤道よりも南に位置している恒星は一年中観測することはできません。当然南極点ではこの逆となっており、天の赤道よりも南に位置している恒星は一年中観測することはできますが反対に天の赤道よりも北に位置している恒星は一年中観測することはできません

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A,Bの両メッシュがかぶっている部分は一年中見える範囲で両方ともかぶっていないところは一年中見えない範囲である

 上図は恒星が見える範囲を図示したものであり、A地点にいる場合に見える範囲は黄色のメッシュで示しています。そして、半日たって反対方向に移動した地点をBとします。B地点で見える範囲は緑のメッシュで示しています

 このとき、両方ともかぶっている範囲はいかなる時でも見ることのできる領域であり、この領域に位置している恒星は周極星として見えます反対に両方とも無いところはいかなる時でも見えることはできません

 これが恒星の見える範囲を説明したものでありますがここからは緯度によって周極星として見える範囲の計算式を書いていきます。

 まず北半球について書いていきます。北半球で緯度θ度の地点での周極星の範囲の式は以下のようになっています。

90-θ 度以上

 この式の意味を例を挙げて書いていくと北緯30度で周極星として見える範囲は赤緯(恒星の緯度)60度以上であることを意味しており、北緯30度では赤緯が60度以上の恒星が一年中見えます。また、北緯45度の場合は赤緯45度以上北緯60度以上の場合は赤緯30度以上、そして、北緯90度、つまり北極点では赤緯0度以上、要するに天の赤道より北の恒星を一年中見ることが可能となっています。

 また、南半球での式は

θ-90 度以下

となっており、南緯30度(θ=30)では赤緯-60度以下の恒星が一年中見え南極点では赤緯0度以下の恒星、つまり天の赤道よりも南の恒星を一年中見ることができます

 

2. 各地点での周極星

2.1 1等星以上の恒星が周極星として見える限界緯度

 1等星以上の恒星の数は21個あり、この中で最も北に位置している恒星は御者座のカペラであり、最も南に位置している恒星は南十字座のアクルックスであります。そして、カペラの赤緯+45°59′53″であり、アクルックスの赤緯-63°05′57″であります。

 そのため、カペラの場合は北半球で優勢となっており、反対にアクルックルは南半球で優勢になっているため、それぞれの緯度に合わせた計算式を用いていきます。

 初めにカペラについて書いていきますがカペラを一年中見ることのできる緯度の南限を北緯θと置くと以下の式が成り立ちます。

90°-θ = 45°59′53″ 

 この式を逆算しますとθは44°00′07″となり、ほぼ北緯44°線上となります。つまり、北緯44°よりも北の地点ではカペラを一年中見ることができ、この緯度の範囲には日本もほんの一部ではありますが含まれています。

 また、この緯度よりも少し北に位置している都市にはフランスのボルドー(44°50′19″)やイタリアのヴェネツィア(45°26′15″)、カナダのオタワ(45°25′29″)、満州ハルビン(45°45′)などがあります。

 つまり、これらの都市からではカペラがギリギリではあるが一年中見ることができ、これは1等星以上の恒星を一年中見ることが可能であることを意味しています。

 次にアクルックスについて書いていきます。アクルックスの場合も南半球の式を同じように用いて求めますと周極星の北限は南緯26°54′03″となり、これよりも南の地点ではアクルックスが一年中見ることができます

 そして、これ以上書きますと記事が長くなるのでこの緯度に位置している代表的な都市の紹介は省きますがアクルックスの方がカペラよりも天の赤道からの距離が遠いため、南半球で1等星以上の恒星が周極星として見える範囲は広くなります。

 反対にこれらの緯度に挟まれた地域では1等星以上の恒星を周極星としてみることは不可能となっており、日本のほぼ全域もこの範囲の中に入っています。

2.2 日本で最も明るい周極星

 日本は意外に広範囲であり、南は南回帰線よりも南に位置しており、北は北緯45°よりも北に位置しています。そのため、どこが日本かというとかなり困るため、初めに東京から書いていきます。

 しかし、東京といってもまだ範囲が広いため、今回は新宿区役所の位置で考えていきます。新宿区役所の緯度は北緯35°41′38″であり、この緯度では前述したようにカペラを周極星としてみることはできません。

 そのため、新宿区役所からだとどの1等星も周極星では無く、必ずどこかで地平線上に沈んでしまいます。つまり、最も明るい周極星は必然的に2等星以下の恒星となりますがここで2等星で最も北に位置している恒星から考えていきます。

 2等星で最も北に位置している恒星は言うまでも無く北極星であり、北極星赤緯は+89°15′51″であるため、北緯0°44′09″よりも北の位置で周極星として見えます。つまり、北極星は東京はおろか非常に赤道に近いシンガポールでも周極星となります(ほぼ地平線上となるため本来の明るさでは見えないが)。

 しかし、2等星の中には当然北極星よりも明るい恒星も存在しており、新宿区役所からの周極星で北極星よりも明るいものは2つあります。

 それは両方とも北斗七星の恒星であり、おおぐま座αのドゥーベおおぐま座ε星のアリオトであります。ドゥーベの地球から見た明るさは1.79等、アリオトは1.77等であるため、アリオトのほうが若干ではあるが明るく、新宿から見て最も明るい恒星はアリオトになります。

 ちなみにアリオトの赤緯は+55°57′36″、ドゥーベは+61°45′04″であるため、周極星として見える範囲はそれぞれ北緯34°02′24″以上、北緯28′14′56″以上となります。つまり、北緯34°02′24″よりも緯度の低い九州ではアリオトは周極星としては見えず、最も明るい周極星はドゥーベとなり、更に緯度の低い沖縄ではポラリス(北極星)が最も明るい周極星となります(九州では一部アリオトが周極星となる)。

 以上のことより、日本で最も明るい周極星は緯度によって4通りもあり、北端近くではカペラ東北や関東などではアリオト四国、九州ではドゥーベ(一部アリオト)、そして沖縄ではポラリスが最も明るい周極星となります。

 また、参照までにドゥーベとアリオトの位置を図示します。

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ドゥーベとアリオトの位置

 

現在の北極星よりも天の北極に近づいた恒星はどのような恒星なのだろうか?

 本日は現在の北極星以上に天の北極に近づいた恒星について書いていきます。

1. 年月をかけて変化していく北極星

 北極星とは天の北極上に位置している恒星のことであり、この天の北極上に位置している恒星は動くことはありません。

 しかし、完全に天の北極上に位置する恒星は存在せず、現在の北極星も若干ずれているため、現在の北極星も全く動かないわけでは無く若干ではあるが天の北極を中心に動いており、真の北極星とは言えません(そのため、天の北極に最も近いある程度明るい恒星のことを北極星と呼ぶ)

 加えて地球の天球に対しての地軸の延長線上、つまり天の極点(天の北極、南極)は歳差運動という運動によって変化するため、北極星も永遠に同じ恒星というわけでは無く長い年月をかけるとだんだんと変化していきます

 例えば現在の北極星こぐま座α星でありますが年月をかけると天の北極の位置も変化しますので当然北極星も変化します。現在から100年後までにかけてはこぐま座α星は天の北極に更に近づくようになりますがこれよりも後になると天の北極からは遠ざかるようになり、1,100年後になるとケフェウス座γ星がこぐま座α星よりも天の北極に近づきます

 そのため、1,100年後になるとこぐま座α星はもはや北極星では無くなり、代わりにケフェウス座γ星が北極星となります。そして、その後も天の北極の位置は変わり続けるため、北極星も代々変わっていき、ケフェウス座γ星の後はケフェウス座β星、その後はケフェウス座α星、デネブ、はくちょう座δ星、ベガ、りゅう座α星、こぐま座β星の順に変わっていき、25,800年後には再びこぐま座α星が北極星となります。

 このように北極星は地球の歳差運動により代々変化していきますが長い年月がたつと恒星自身の移動も無視できなくなるため、この周期が永遠に続くわけではありません

 例えば60,000年前には現在の時点で天の北極とは全く関係の無い位置にあるアルクトゥルス北極星であったことがあります。

 以上のことより、このような経緯があるため数十万数百万年前の北極星の予想を立てることは非常に難しく、せいぜい数万年程度しか立てられません。

 そして、今回はこの数万年間で天の北極に最も近づいた恒星について書いていきます。

 

2. 最も天の北極に近づいた恒星はどのような恒星なのだろうか?

 現在の北極星は実は過去や未来を見通しても非常に天の北極近くにある恒星であり、これほど天の北極近くにある恒星は非常に珍しいです。現にベガは前述したように天の北極にかなり近づきはするものの極端に近づくわけでは無く、ベガよりも天の北極に近づくであろうはくちょう座δ星も現在の北極星と比較するとそこまで近づきません。

 しかし、現在知られている肉眼で観測できる恒星の中には唯一現在の北極星以上に天の北極に近づいた恒星があります。

 その恒星とはりゅう座α星のトゥバンであり、現在の赤緯+64度22分33秒とそこまで天の北極には近くはないものの5,000年前には非常に天に北極近くにまで近づいたことがあります。そして、前述したように最も近づいたときは現在の北極星が最も天の北極に近づくであろう100年後よりも更に近づいており、正確な数値は不明であるが限りなく天の北極近くにあったと考えられています。

 また、5,000年前はピラミッドのあった時代であり、ピラミッドは明らかにトゥバンを意識した作りになっていることが判明しています。そのため、ピラミッド時代ではトゥバンが北極星として非常に重要であったことがうかがえます。

 では、ここからは天の北極に最も接近した恒星であるトゥバンについて詳しく書いていきます。トゥバンはりゅう座のα星であり、α星は一般的に最も明るい恒星につけられるため、トゥバンはかなり明るい恒星のようにも思われます。

 しかし、トゥバンはα星であるにも関わらず同星座内ではそこまで明るい恒星では無く8番目に明るい恒星にしか過ぎません。そのため、トゥバンの明るさは3.67等3等星にさえ入らないほど暗く、お世辞にも目立つ恒星とは言えません。

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現在のトゥバンは天の北極とはそこまで近くはない

 そのため、現在のトゥバンは地球から見た明るさもそこまで明るくは無く、天の北極ともそこまで近くないため、そこまで面白い恒星とは言えません。

 けれども過去のトゥバンは4等星であったにもかかわらず最重要の恒星とされていたため現在からの計算と合わせて確実に天の北極と至近距離にあったことは間違いなく、現在知られている中では最も天の北極に近づいた恒星であることは確実視されています。

 では、最も北極星に近づいた恒星、トゥバンの恒星としての明るさはどれほど明るいのでしょうか?

 その答えは極端に明るい恒星ではありませんしかし、だからといって極端に暗いわけでもない中級程度の恒星であり、ベガと比較すると明るいもののポラリス(現在の北極星, こぐま座α星)よりかは暗い恒星であります。

 トゥバンは地球から303光年離れたところに位置している恒星であり、これは433光年離れているポラリスと比較すると近めであります。しかし、トゥバンは地球から見た明るさが3.67等と1.97等のポラリスの21%程度の明るさしかありません。

 その理由は前述したようにトゥバンの明るさがポラリスと比較するとかなり暗いからであり、トゥバンの恒星の実際の明るさを示す指標である絶対等級はマイナス1.17等太陽と比較すると250倍程度の明るさとなります。

 その一方でポラリスの絶対等級はマイナス3.64等もあり、太陽と比較すると2,450倍近くもあるため、トゥバンの明るさはポラリスの10分の1強しかありません。

 けれども現在25光年先に位置しており、天の北極に近づく恒星の一つであるベガは絶対等級が0.60等と暗く、太陽と比較しても50倍弱程度の明るさしか無いため、トゥバンはベガと比較すると明るい恒星と言えます

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トゥバンをベガの位置に置くとシリウスよりも明るくなるがポラリスの位置に置くとかなり暗くなる

 上表はベガ、トゥバン、ポラリスの3恒星を他の恒星の位置に置いたときの明るさを示したものであります。例えばトゥバンは303光年先からだと3.67等星であるがベガの位置、つまり25光年先に置くとマイナス1.75等シリウスよりも明るくなり、反対に433光年離れたポラリスの位置に置くと4.44等と暗い4等星並の明るさになります

 反対にベガをトゥバンの位置に置くと5.45等と非常に暗い恒星となり、肉眼で観測することが困難なほどになりますがポラリスをトゥバンの位置に置くと1.20等と堂々と1等星となり、ポラリスが非常に明るい恒星であることが分かります。

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トゥバンをベガの位置に持って行くと非常に明るくなり、反対にポラリスの位置に持って行くと暗くなる

 最後にトゥバンの表面温度について書きます。トゥバンのスペクトル型はA0であるため、トゥバンはスペクトル型がA0の巨星となります。更にベガのスペクトル型はA0なので巨星か主系列星(Ⅴ)と状態は違うものの両者ともにA0型であるためトゥバンとベガの表面温度は同等となります(大体シリウスと同じ青白い恒星である)。

 そのため、トゥバンとベガは同じ色の恒星として見え、トゥバンをベガの2.26倍先から見ると明るさを含め全く同じように見えます

 このように天の北極に最も近づく恒星、トゥバンはポラリスよりかはだいぶ暗いもののベガと比較すると明るい恒星であり、表面温度はベガと同じ程度の青白い恒星であります。

リゲルと双璧をなす一等星、デネブ

 先日はとてつもなく強大な1等星(正確には0等星)であるリゲルについて書きましたが本日はそのリゲルと双璧をなすほど明るい恒星であるデネブについて書いていきます。

1. 群を抜いて遠い夏の大三角形の恒星デネブ

 デネブは夏の代表的な恒星の一つであり、ベガとアルタイルと共に夏の大三角形を形成しています。そして、デネブははくちょう座に属している恒星であり、はくちょう座の中で最も明るい恒星であります。

 しかし、デネブは夏の大三角形の中では最も暗い恒星であり、その明るさは1.25等と1等星以上の恒星の中ではレグルス, ベクルックスに次いで暗く、全天で19番目に明るい恒星となっています。そのため、デネブは夏の大三角形の恒星の中ではそこまで存在感は無く、ベガやアルタイルの陰に隠れがちとなっています。

 けれども、デネブが暗い理由は地球からの距離が非常に遠いからであり、実は全ての1等星の中では群を抜いて遠い恒星であります。デネブは地球からの距離が1,412光年も離れており、この距離は2番目に遠いリゲルよりも550光年も遠く、1.64倍も離れています

 その一方でアルタイルとベガは地球からの距離が非常に近く、アルタイルは16.7光年、ベガは25光年しか離れていません。つまり、デネブはアルタイルの84.6倍、ベガの56.5倍も離れており実際の明るさはこれら2つの恒星とは比にならないほど明るくなっています

 では、デネブはアルタイルやベガと比較するとどれほど明るいのでしょうか?

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デネブはベガやアルタイルと比較すると比にならないほど明るい

 デネブは前述したようにベガやアルタイルと比較すると極端に距離が遠いため、実際の明るさはこれら2恒星とは比にならないほど明るく、その明るさは太陽の5万倍以上もあります

 当然この明るさは銀河系全体で見てもトップクラスの明るさとなっており、肉眼で見える恒星全体の中でも上位20番以内に入っているほどです。そのため、デネブは極端に明るいことで有名なリゲルと双璧をなす恒星とも言えます。

 では、デネブとリゲルはどちらの方がすごいのでしょうか?

 

2. リゲルとデネブはどちらが強大か?

 デネブは1等星以上の21恒星の中で最も遠い恒星であり、21恒星の中で唯一1,000光年以上も離れています。それと同時に唯一1京キロメートル以上離れている恒星でもあり、地球からは1.336京キロメートル離れています。

 そのため、デネブは太陽の5万倍以上という明るさを有しているが21恒星の中ではそこまで明るい方ではありません。しかし、それでも1等星として見えていることを考えると太陽の5万倍という明るさがどれほど凄まじいかが分かります

 また、前述したようにオリオン座のリゲルはデネブと匹敵する恒星として知られており、こちらは863光年とデネブと比較すると近場にあるため、21恒星の中ではかなり明るい恒星となっています

 では、ここからはリゲルとデネブのスペックを比較していきたいと思います。

 初めにスペクトル型から書いていきます。スペクトル型とは恒星の表面温度と状態を示す指標であり、表面温度は高い順からO, B, A, F, G, K, Mの順となっております。そして、リゲルとデネブのスペクトル型はそれぞれB8Ⅰa, A2Ⅰaであり、このスペクトル型からリゲルの方が表面温度が高いことが分かります。

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アルファベットが同じ場合は数字が若いほど高温である

 上図は有名な恒星のスペクトル型を示したものであり、夏の大三角形の恒星はいずれもA型星であることが分かります。そして、アルファベットが同じ場合は数字が若いほど高温であるため、夏の大三角形の恒星の表面温度はベガ>デネブ>アルタイルの順となっています。そして、シリウスとベガは上表からも分かるようにリゲルよりかは低温ではありますがデネブよりも高温であることが分かります。

 また、アルファベットと数字の次に来るⅠaとは恒星の状態を表したものであり、このⅠaとは極めて明るい超巨星であることを示しております。

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スペクトル型と恒星の状態

 恒星のスペクトル型と状態の関係は上表のようになっており、質量が同じなら左に行くほど明るくなります。しかし、左に行けば行くほど必ず明るくなると言うわけでは無く、例えばスピカとさそり座λ星はさそり座λ星の方が明るい恒星であるにも関わらず右に位置していますがこれはさそり座λ星の方が重い恒星であるためです。

 けれどもⅠaとⅠbではⅠaの方が明るい恒星と言え、現にリゲルやデネブはカノープスよりも明るい恒星であります。

 このようにリゲルとデネブとではリゲルの方が表面温度が高くなっていますが直径に関してはデネブの方が1.5倍近くもあり、リゲルの直径は太陽の78倍、デネブは114倍ほどと推測されています

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リゲルやデネブは非常に大きく、地球軌道と比較してもかなり大きいことが分かる

 リゲルやデネブは1億キロメートル以上もあるため非常に巨大であり、その大きさは太陽とは比にならないほどであります。更に表面温度も太陽と比較するとかなり高いため、単位あたりの放射エネルギー量も大きく、巨大な直径との相乗効果で極端な明るさとなっています。

 このようにリゲルとデネブは巨体さに加えて表面温度も高めであるため、太陽の5万倍以上という凄まじい明るさとなっており、1,500光年先からでも1等星として見える明るさを有していますがどちらの方が明るいのでしょうか?

 その答えは僅差でリゲルの方が明るく絶対等級はリゲルがマイナス6.98等で太陽の53,000倍デネブがマイナス6.93等で50,600倍となっています。そのため、21恒星の中ではリゲルが最も明るい恒星で次いでデネブが明るい恒星となっています。

 そして、ここで僅差と書きましたがこれはあくまでリゲルとデネブのような極端な明るさを有している恒星間での話であるため実はこの僅差も非常に大きく、両恒星は北極星程度の明るさの差を有しています

 つまり、デネブ+北極星=リゲルの明るさというわけであり、デネブやリゲルからしてみると僅差でしか過ぎない差も太陽からしてみると非常に大きな差と言えます。

 以上のことより、リゲルとデネブではリゲルの方が若干明るく、最強の21恒星はリゲルということになります。

オリオン座で最も明るいリゲルは銀河系全体から見てもトップ級の恒星である

 本日はオリオン座で最も明るい恒星であるリゲルについて書いていきます。

1. リゲルとは

 リゲルはオリオン座の恒星の一つであり、明るい恒星の多いオリオン座の中でも最も明るい恒星であります。そして、リゲルはよく1等星として紹介されることが多いが正確には1等星ではありません。リゲルの地球から見た明るさは0.13等星、つまり1等星よりも明るい0等星に属しています。

 0等星はマイナス0.5~0.5等星までの明るさの恒星であり、リゲル意外にはリギル・ケンタウルス, アルクトゥルス, ベガ, カペラ, プロキオン, ベテルギウス, アケルナルが0等星に該当しています。

 そして、リゲルは全天で7番目に明るい恒星であり、この明るさは明るいことで有名なベガよりもわずか9パーセントほどしか暗くはありません。そのため、リゲルの近くには全天で最も明るい恒星であるシリウスが位置しているため、そこまで明るい恒星としての印象はあまり大きくはありませんが実際はベガに匹敵するほどの明るさを有しており、冬の代表的な恒星となっています。

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リゲルの周辺の恒星は明るいものが多い

 リゲルの周辺には明るい恒星が数多くあり、すぐ近くには冬の大三角形があります。冬の大三角形おおいぬ座シリウスこいぬ座プロキオン、及びオリオン座のベテルギウスの3恒星から形成されており、この中にはリゲルは含まれていません。

 そして、この中でプロキオンベテルギウスはリゲルよりも暗いがシリウスは地球から見た明るさが最も明るく、リゲルの4.37倍の明るさで見えるため、シリウスと比較すると前述したようにそこまで明るくは見えません(これはシリウスが明るすぎるだけであり、決してリゲルが暗い恒星というわけではない)。

 このようにリゲルはシリウスと比較すると暗い恒星であるがシリウスを除くと冬の恒星の中でもトップレベルで明るい恒星であります。しかし、リゲルはシリウスとは大きく異なる点があり、それは次章でも紹介するように地球からの距離であります。

 

2. 太陽の5万倍以上も明るい恒星

 リゲルは全恒星の中でも非常に明るい恒星であり、その明るさは前述したようにベガと大差がありません。そのため、リゲルはシリウスやベガと同じように地球からの距離が非常に近い恒星のようにも思われます。

 しかし、実際は地球からの距離が非常に遠い恒星であり、驚くべきことに21恒星(1等星以上の恒星)の中では2番目に遠い恒星であります。つまり、21恒星の中でリゲルよりも遠い恒星はただ一つだけであり、それ以外の恒星は全てリゲルよりも近いです。

 では、リゲルがどれだけ地球から離れているかというと863光年も離れており、この距離はシリウスの100倍以上も離れています。そのため、リゲルは距離が非常に遠いにもかかわらず全天でトップレベルに明るい恒星に君臨しており、その理由はリゲルの明るさがとてつもなく明るいからであります。

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リゲルまでの距離は非常に遠い

 ここで話を北極星に持って行きたいと思います。北極星は明るいことで有名な恒星であり、地球からの距離が433光年とかなり遠くに位置しています。しかし、北極星はこれほど離れているにもかかわらずほぼ2等級の明るさを有しており、非常に明るい恒星であることがうかがえます。

 実際に北極星の明るさは非常に明るく、その明るさはシリウスの100倍強、太陽の2,400倍ほどもあり、絶対等級(恒星の実際の明るさ、5等増えると100倍の明るさになる)はマイナス3.64等(太陽は4.83等)もあります。

 しかし、これほど明るい北極星もリゲルと比較すると比較にならないほど暗く、リゲルの5パーセントの明るさも有していません。

 では、極端に明るい北極星をも軽々と驚愕するリゲルはどれほどの明るさを有しているのでしょうか?

 リゲルの平均絶対等級はマイナス6.98等と北極星よりも3.34等も明るく、この明るさは北極星の21.7倍も明るく、太陽と比較すると53,000倍の明るさを有します。そのため、仮にリゲルをシリウスの位置に持って行くとマイナス10等級に迫る明るさとなり、北極星の位置にあった場合でも地球から見たシリウスに匹敵する明るさとなります。

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リゲルは北極星の位置にあった場合でも地球から見たシリウスに匹敵する明るさとなる

 上表はシリウス, 北極星, 及びリゲルの位置を他の天体に持って行ったときの明るさを示したものであります。例えばリゲルをシリウスの位置に持って行った場合はマイナス9.88等となり、北極星の位置に持って行った場合はマイナス1.37等になることを示しています。

 そして、非常に明るい北極星でさえリゲルの位置に持って行くと3.47等と暗い3等星程度にしか見えず、リゲルがいかに遠いところにあるかが分かります。

 このようにリゲルは明るさが他の恒星とは桁違いなため、北極星でさえ暗くなるほどの位置にあるにも関わらず全天でトップ級の恒星として見え、計算上リゲルは16,220光年先まで見える結果となります。

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リゲルは16,000光年先からでも見える

 つまり、リゲルは10,000光年先からでもまだ見ることができ、地球から見ることのできる恒星で最も遠いものは14,000光年離れているため、リゲルは地球から見ることのできる前恒星から見ることが可能な恒星となっています。

 実際にリゲルはただ一つを除く全ての1等星以上の恒星から1等星以上の明るさで見ることができ、非常に多くの恒星から明るい恒星として認識することができます。

 しかし、実は1等星以上の恒星でリゲルに匹敵する恒星が存在しており、その恒星とははくちょう座のデネブであります。デネブはリゲルに負けず劣らず凄まじい恒星であり、こちらも太陽の5万倍以上の明るさを有しています。

 そして、デネブとリゲルはお互いの距離が非常に離れており、両恒星間の距離は2,009光年も離れています。そのため、デネブから見たリゲルはさすがに1等星には見えず、1.97等星と地球から見た北極星程度の明るさとなります(2,000光年以上離れていても北極星並みの明るさに見えることを考えるとリゲルのすさまじさが余計に分かる)。

 そのため、リゲルはデネブただひとつからは1等星としては見えず、先ほど書いた「ただ一つを除く」とはデネブのことを指します。

 このようにリゲルの明るさは規格外であり、北極星とも比にならないほどでありますが21恒星の中では群を抜いてはおらず、その理由はデネブという強力なライバルがいるからであります。

北海道の北に位置している島、樺太はどれほど寒いのか?

  年末から年明けに欠けてパソコンが使えない環境であったため、更新が途絶えたため、久しぶりの更新になります。そして、本日は北海道の更に北新している島である樺太について書いていきます。

1. 樺太とは

 樺太とは北海道よりも更に北に位置している細長い島であり、樺太という名称はアイヌ語にちなみます。また、樺太は世界的に見るとサハリンという名称で呼ばれることの方が多く、こちらは満州語にちなみます。

 そして、樺太の環境は非常に過酷であり、居住が難しいこともあるためそこまで大きな島のようには思われていませんが実は樺太は台湾の倍以上の面積を有しており、北海道に迫るほども大きさがあります。

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地球を球体としてみた地図での台湾と樺太

 上地図は三次元的に表した地図であり、正確な面積を示しており、確かに樺太の面積は台湾よりも大きく見えます。

 また、樺太は一見するとシベリアの島のようにも思われがちでありますが実はシベリアではありません。シベリアとはロシアの北アジア全体のように思われがちでありますが実はこれよりも範囲が狭く、カムチャツカ半島ウラジオストクなどはシベリアではなくシベリアの範囲はもう少し狭くなっています。

 では、樺太はどこの島かというと満州の島という見方があります。満州とは一般的な考えだと中国の東北部のイメージがありますが実はロシアの一部も満州に含まれており、沿海州全域、アムール州全域、ハバロフスク地方の南部は外満州(中国の方は内満州)に属しています。それに加えて樺太満州の一部という考え方もあり、前述したように樺太の別名であるサハリンも満州語に由来しています。

 

2. 極寒の島

2.1 樺太の気候

 樺太は北海道よりも北部に位置しているため、当然北海道よりも気温は低くなっていますが実はその気温は想像以上に低く、北海道とは比にならないほどであります。そのため、樺太は南部でさえ北海道で最も寒い地域よりも気温が低くなっており、北部ともなると年平均気温が氷点下になるほどです。

 北海道の気候の大半は冷帯湿潤気候(Dfb)となっており、全体的に見ても寒冷な気候であるが南端部は夏の気温が高く冬場もそこまで冷え込まない温暖湿潤気候(Cfa)となっており、全域が寒冷地というわけではありません。

 しかし、樺太の場合は温帯が一切存在しておらず全域が冷帯となっています。樺太の気候は簡単に言うと南部が冷帯湿潤気候(Dfb)であり、北部が夏の短い亜寒帯湿潤気候(Dfc)となっており、北部の方が夏の気温も冬の気温も低くなっています。

 では、ここからはDfb, 及びDfc気候について書いていきます。Dfb気候の特徴は暖かい月が比較的多いことであり、以下の条件を満たしています。

  • 最寒月平均気温がマイナス38 ℃~マイナス3 ℃以下 (冷帯Dであるかつ冬季極寒dでは無い)
  • 最暖月平均気温が10~22 ℃ (寒帯Eでないかつ夏期高温aでは無い)
  • 降水量が乾燥限界以上 (乾燥帯Bでは無い)
  • 冬季の最も少ない降水月の降水量が夏期の最も多い月の10分の1以上である (冬季少雨wでは無い)
  • 夏期の最も少ない降水月の降水量が冬季の最も多い月の3分の1以上である (夏期少雨sでは無い)
  • 平均気温が10 ℃以上の月が4~11ヶ月である (夏期の短いcでは無い)

 この中で一番下の条件がbとcを分けるものとなっており、仮に平均気温が10 ℃以上の月が1~3ヶ月の場合は夏の短い亜寒帯湿潤気候(Dfc)となり、前述したように樺太北部がこの気候に属しています。

 このように樺太の気候は比較的簡単なものとなっており、高山部を除くとDfbとDfcの二種類しかありませんがここからは実際に樺太の気候について書いていきます。

2.2 南部と北部の気候

 樺太の中で最も人口の多い都市であるユジノサハリンスクは北緯46分58度に位置しています。そして、この都市は樺太の居住地の中では人口が唯一10万人を上回っており、気候も樺太の中ではかなり温暖であります。

 しかし、あくまで樺太の中での話なので北海道とは比にならないほど寒く、日本一寒い居住地で知られている陸別町よりも最寒月が低くなっています(最寒月最低気温は陸別の方が低い)

 そのため、比較的温暖なユジノサハリンスクでさえ非常に寒くなっており、樺太が北海道とは比にならないほど寒いことが分かります。

 けれども北樺太ユジノサハリンスクとは比にならないほど寒く、北緯51度49分に位置しているノグリキは年平均気温が氷点下1.4 ℃とウランバートルよりも寒く、冬場の気温もほぼ同緯度のシベリア内陸の都市イルクーツクと同じぐらい低くなっています。

 では、ここからはユジノサハリンスクとノグリキの気温について書いていきます。

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樺太の気候は非常に過酷なものとなっている

 ユジノサハリンスクの最寒月である1月の平均気温はマイナス12.2 ℃であり、この気温は緯度の割に非常に低く、更に最暖月である8月の気温も17.3 ℃と低いため、年平均気温はわずか2.8 ℃しかありません。しかし、10 ℃を超える月は6~9月の4ヶ月間あるため、ユジノサハリンスクの気候は亜寒帯湿潤気候(Dfc)ではなく、夏期が冷涼な冷帯気候(Dfb)となっています。

 それに対してノグリキはユジノサハリンスクと比較しても非常に気温が低く、最寒月である1月の気温はマイナス18.2 ℃と同緯度のロンドンよりも20 ℃以上も低く、更に最暖月の8月でさえ15 ℃を下回っているため、年平均気温でさえ氷点下となっています。加えて10 ℃以上の月は3ヶ月しか無いため、気候は亜寒帯湿潤気候となっており、ノグリキが極めて寒いことが分かります。

 最後にユジノサハリンスク、ノグリキ、及び日本一寒い都市である北見の気温をグラフで比較していきます。

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日本一寒い都市北見も樺太と比較すると温暖である

 北見と樺太は地理的に近く、特に間に山脈等も無いため気温の傾向としては似たようなものとなっています。しかし、気温に関しては樺太の気温の方が明らかに低くなっており、日本一寒い都市である北見でさえ樺太と比較するとかなり暖かい気候であることが分かります。

 そのため、北海道は日本の中では群を抜いて寒いものの樺太と比較すると非常に暖かく、樺太の気温がいかに低いかが分かります。

 以上のことより、北海道の北に位置している島、樺太は地理的には北海道と近いものの気候に関しては大陸性が強くなっており、北海道とは比較にならないほど寒冷であることが分かります。

北京の気候は3つの気候のほぼ境界線に位置している

 本日は中国の首都、北京の気候について書いていきます。

1. 気候区分

 一般的な気候区分であるケッペンの気候区分は大まかに分けると熱帯, 乾燥帯, 温帯, 冷帯, 寒帯の5つに分けられています。そして、これらの気候はアルファベットが振り分けられており、熱帯(A), 乾燥帯(B), 温帯(C), 冷帯(D), 寒帯(E)となっています。

 更にこれらの気候は細分化されており、例えば熱帯の場合は熱帯雨林気候(Af), サバナ気候(Aw), 熱帯モンスーン気候(Am)のようになっています。

 そのため、気候区分は細かく分けると非常に多くなっており、熱帯は3種類、乾燥帯は4種類、温帯は9種類、冷帯は12種類、寒帯は2種類の計30種あります。

 このように気候区分は非常に多くの種類がありますが本日はこの中の乾燥帯と温帯、及び冷帯について書いていきます。

 

2. BCD気候

2.1 乾燥帯(B)

 乾燥帯とは夏の平均気温だけで見ると樹木が生育できるものの降水量が少ないため樹木が生育できない気候のことであります。そのため、地球上に存在する乾燥帯は降水量が少ないという共通点はあるものの気温に関してはまちまちであり、サハラ砂漠のように灼熱の所もあればゴビ砂漠のような極寒の所もあります。

 また、乾燥帯と言っても降水量が比較的多いところでは樹木が生育することは不可能ですが草程度なら生育することが可能となっているところもあります。そのような気候のことをステップ気候と言い、記号で書くとBSとなります。

 その一方で降水量が非常に少ないところでは草原さえ生育することのできない気候となり、そのような気候のことを砂漠気候と呼び、記号はBWとなります。

 そして、乾燥帯か否かを決める上で重要となってくるのが乾燥限界であり、この乾燥限界を下回った場合、乾燥帯になります乾燥限界の式は季節の降水量の偏りによって決まり、夏期に降水が少ない場合は数値が小さくなり、反対に冬季に降水が少ない場合は数値が大きくなります。また、乾燥限界の式は以下の通りであります。

夏期少雨型(s型): 年平均気温×20

年中湿潤型(f型): (年平均気温+7)×20

冬季少雨型(w型): (年平均気温+14)×20

 上式が乾燥限界を決める式であり、この乾燥限界の0.5~1.0倍までの場合はステップ気候0.5倍未満の場合は砂漠気候に分類されます。

2.2 温帯(C)

 温帯気候とは樹木が生育できるほど夏の気温が高く冬の気温も寒すぎもなく暑すぎもなく、更に降水量も十分多い気候のことであります。そして、日本の大半もこの気候に属しており、一見すると温帯は多そうに見えますが実は5大気候の中では最も面積の狭い気候であり、地球上で見てみると温帯気候は珍しいと言えます。

 また、温帯気候の条件は以下の通りであります。

  • 最暖月平均気温が10 ℃以上
  • 最寒月平均気温がマイナス3~18 ℃
  • 降水量が乾燥限界以上

 この条件をクリアすると温帯気候となり、更に最暖月の平均気温や降水の季節による偏りで細分化されます

 例えば最暖月平均気温が22 ℃以上の場合は夏期高温型(a)となり、10~22 ℃の場合は夏期温暖型(b,c)となります

 また、夏に降水が少ない場合は地中海性型(Cs)偏りが小さい場合は温暖湿潤型(Cf)冬に少ない場合は温暖冬季少雨型(Cw)となり、乾燥限界もこの型によって式が異なります。勿論乾燥限界を下回った場合は乾燥帯となるため、温帯の場合は乾燥限界を上回っている必要があります

2.3 冷帯(D)

 冷帯は樹木の生育が可能な気候の中で最も寒い気候であり、温帯と比べると冬の気温がかなり低いという特徴があります。そのため、冷帯の条件は以下のようになっています。

  • 最暖月平均気温が10 ℃以上
  • 最寒月平均気温がマイナス3 ℃未満
  • 降水量が乾燥限界以上

 冷帯と温帯の違いは単純に冬の気温が暖かいか寒いかの違いであり、最寒月平均気温がマイナス3 ℃未満の場合は冷帯、マイナス3 ℃以上の場合は温帯となります。

 そのため、気候の細分化も温帯とほぼ同じであり、こちらも最暖月平均気温の違いによって夏期高温型(a)と夏期冷涼型(b,c,d)の違いとなります。

 当然降水量の方も同じであり、夏に降水が少ない場合は高地地中海性型(Ds)、偏りが小さい場合は冷帯湿潤型(Df)、冬に少ない場合は冷帯冬季少雨型(Dw)となります。

 しかし、ただ一つ違いがあり、それはdの存在であります。dとは最暖月平均気温がマイナス38 ℃を下回っているという極めて寒い気候のことであり、定義上矛盾するため、温帯にはありません。このdに属している場所はヤクーツクやオイミャコンの様に極めて寒い所に限られており、アジアにしかありません(Dfd, Dwdのように書かれる)。

 

3. 北京は非常に絶妙な気候となっている

 ここからは世界的に見ても珍しい3つの気候の境界となっている都市、北京の気候について書いていきます。

 北京は中国の首都であり、北緯39度55分、東経116度23分に位置しています。この緯度はほぼ北緯40度線上に位置しており、日本で言うと秋田県あたりになりますが北京は秋田県よりもやや寒い気候となっています。また、東経からも分かるように北京は意外に西側に位置しており、日本で北京よりも西に位置しているところはありません。

 そして、北京から西に目を向けてみるとゴビ砂漠が迫っていることからも分かるように北京の降水量は比較的少なく、日本の地域で北京よりも降水量の少ないところはありません

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北京は地図上から見ても分かるようにゴビ砂漠が近い

 このことより、北京は冬の気温で言うと温帯と冷帯の境界線上年間の降水量に関して言うとほぼ乾燥限界と同じ量であるため温帯, 冷帯, 乾燥帯の3つの気候の境界線上にあり、非常に絶妙なものとなっています。

 では、北京はどのような気候をしているかをここから詳しく書いていきます。北京の年間の気温と降水量は以下のようになっています。

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北京は季節による寒暖差と降水量の差が激しい気候である

 北京は季節による寒暖差がかなり激しい気候であり、冬場の日平均気温は氷点下でありますが夏場になると東京とほぼ変わらない気温となります。加えて一日の気温差である日較差も大きく、真冬は相当冷え込みますが最高気温は意外に高く、平均最高気温が氷点下である月は存在しません

 また、降水量は日本と比べるとかなり少なく、年間の合計量でも532 mmしかありません。更に降水量に関しても季節による差がかなり大きく最も降水量の多い7月の降水量と最も少ない12月の降水量の比は80倍も異なっており冬場の降水量が非常に少ないことが分かります。

 そして、ここからは北京の気候について書いていきます。気候を決める上で重要なデータは以下のデータであります。

年平均気温: 12.9 ℃

年間降水量: 532 mm

最暖月平均気温: 26.7 ℃

最寒月平均気温: -3.1 ℃

最大降水月降水量: 160.1 mm (7月)

最小降水月降水量: 2.0 mm (12月)

 

 初めに乾燥限界を決めていきます。北京の最大降水月は7月の夏にあり、7月の降水量は最小降水月の12月(冬)の80倍もあるため、北京は冬季少雨型(w型)に属しています

 w型の乾燥限界の式は年平均気温に14を足した値に20をかけて算出されるので北京の乾燥限界は(12.9+14)×20 = 538となり、年降水量を若干上回ります(つまり、乾燥限界にギリギリ届いていない)。

 そのため、北京はギリギリ乾燥帯に属するようになり、更に年平均気温が18 ℃を下回っているため、低温ステップ気候(BSk)に属しています。

 このように北京は乾燥帯に属していますが非常にギリギリであり、仮に降水量が6 mm上回っていると乾燥限界を超えるため、乾燥帯では無くなります

 そこでもし、北京が乾燥帯で無くなると今度は温帯か冷帯かの判定がなされるがこちらも非常に絶妙なものとなっています。温帯と冷帯の境目は最寒月平均気温がマイナス3 ℃以上か否かであります北京の最寒月平均気温はマイナス3.1 ℃であるのでギリギリ冷帯(冷帯冬季少雨気候, Dw)に属することとなります

 また、最暖月平均気温は26.7 ℃であり、22 ℃を余裕で超えているため、夏期高温型(a)に属しています。

 以上のことより、北京の気候は乾燥帯であるBSk、温帯であるCwa、及び冷帯であるDwaのほぼ境界上にあり、現在の状況だとBSkに属していますが少しでもずれるとすぐCwaやDwaになるほどきわどいものとなっています。

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北京の気候はBSkだが少しでもずれるとCwaやDwaとなる