DS930810のブログ

筆者は自然や自然現象に関心が相当あるので自然に関する記事(天文, 地理, 生物)を書いていきたいと思います。かつては1日2記事を適当な時間に投稿していましたが今のところは午後6時に1記事投稿する形にしています。

原子中の陽子と電子はどれほどの力で引き合っているのか?

 今回は水素原子中に存在している陽子と電子の引き合う力の大きさについて書いて行きたいと思う。

目次

1. 軽水素中の電子と陽子

1.1 電子と陽子

 かつて原子はこれ以上分割できない最小単位であると考えられてきたが実は原子核を中心に電子が周回している構造であることが分かった。そのため、原子は最も簡単な単位ではなく、更に細分化することができ、大きく分けると陽子, 電子, 中性子に分けることが出来る。

 そして、この中で陽子と中性子は原子核を構成する粒子であり、陽子は電荷が+1.602×10^-19 C, 中性子は0であることが分かった。更に陽子と中性子は細分化することが可能となっており、陽子はアップクォーク(電荷が陽子の2/3倍)が2つとダウンクォーク(電荷が陽子の-1/3倍)1つによって構成され、中性子はアップクォーク1つとダウンクォーク2つによって構成されている。

 そのため、上記のように陽子の電荷は+1.602×10^-19 Cとなっているが中性子の電荷は打ち消し合い、0となっている。

 また、原子核を周回している電子はそのものがレプトン(Lepton)と言う素粒子の形態であるため、これ以上細分化が不可能となっており、質量も陽子や中性子と比較すると非常に軽い。しかし、質量が非常に軽いにもかかわらず電荷の絶対値は陽子と全く同じであり、符号が真逆なだけである。

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原子核構成粒子

 また、陽子, 中性子, 電子の質量と電荷は以下の表の様になっている。

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 陽子と中性子はほぼ同じ質量であり、中性子のほうが若干重い程度である。しかし、電子はそのものが素粒子である上に軽粒子と呼ばれているレプトンそのものであるため、質量が陽子や中性子と比べると非常に軽くなっている。

 しかし、電荷の大きさに関しては1,837倍も重い陽子と全く同じであるため、単位質量あたりの電荷の大きさは極めて大きいことが分かる。

 ここまでは原子を構成する粒子について書いてきたがここからはこれらの粒子が及ぼす力について書いて行きたいと思う。

1.2 軽水素の構造

 ここからは軽水素の構造について書いて行きたいと思う。軽水素とは原子核に中性子を持たない水素原子のことであり、全原子の中で最も簡単な構造をしている。

 軽水素は陽子のみから構成されている原子核をただ一つの電子が周回している形となっており、非常に分かりやすい構造となっている。

 また、軽水素の原子核(陽子)と電子は5.3×10^-11 m離れており、この距離は軽水素の大きさに相当する。

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軽水素原子の構造

 軽水素原子の構造は上図の様になっており、いたってシンプルなものとなっている。

 そして、上図では大きさが正確では無いため、陽子の実際の大きさはそこまで小さくないように見えるが実は陽子の大きさは非常に小さく、直径がわずか1.75×10^-15 mしか無い。このことより、軽水素の原子核(陽子)の大きさは軽水素元素の大きさの60,000分の1程度しかない。

 つまり、原子核は非常にスカスカな構造をしており、これは宇宙に存在している物質がほぼ何もない空間からできていることを意味している。そのため、物質を押し縮めようとすればかなり押し縮めることが可能であり、限界近くまで押し縮めた物質としては中性子星がある。

 中性子星は超新星爆発後にできる残骸であり、中性子がぎゅうぎゅうに詰められた構造となっているため、密度がきわめて高くなっている。そして、この密度の高さは陽子や中性子の密度の高さと同じであると言っても過言ではなく、このことに関しては以下の記事を参照していただきたい。

www.rigelultragiant.com

  以上が軽水素の原子核の構造であり、軽水素の限らず原子は極めて高密度な陽子, 中性子, 電子とほぼ何もない空間からなっていることが分かる(電子は余りにも質量が軽いため、体積を測定する方法は無いため、密度は不明であるが非常に高密度であることは想像できる)。

2. 陽子と電子間にかかっている力の大きさ

2.1 静電気力

 静電気力は電荷を有する物質にかかる力であり、斥力と引力の二種類がある。斥力は電荷の符号が同じときにかかる力であり、正電荷同士、または負電荷同士の時にかかる。その一方で引力は電荷の符号が逆の時にかかる力であり、陽子と電子の間には正にこの引力がかかっている状態となっている。

 そして、静電気力は2つの物質の電荷の積に比例し、距離の二乗に反比例する形となっているため、静電気力の式は以下の様になっている。

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静電気力_式

 上式のQとqはそれぞれの物質の電荷、rは電荷間の距離を示しており、k0は定数を示している。そして、この定数の大きさは8.9876×10^9 N m^2 / (A^2 s^2)とかなり大きく、この値は後述する万有引力定数と比べても比較にならないほど大きな値となっている。

 そして、ここからは軽水素原子核中の陽子と中性子の間にかかっている静電気力について書いて行きたいと思う。ここで今回使う値は陽子の電荷, 中性子の電荷, 及び両者の距離であり、それぞれ大きさは+1.602×^-19 C, -1.602×10^19, 5.3×10^-11 mである。

 この値を実際に上式に当てはめると陽子, 電子にかかっている静電気力の大きさは8.211×10^-8 Nであり、符号が逆であるため、引力となっている。

 また、電子の質量は9.019×10^-31 kgであり、ニュートンの式F=maから電子にかかる加速度の大きさを求めると9.104×10^22 m/s^2ととてつもない値であることが分かる。

 この値は停止している物質がわずか3.293×10^-15秒後に光速に達するほどの大きさであり、地球上の重力加速度の9.290×10^21倍の大きさである。

 つまり、電子は陽子からとてつもないほどの力で引き寄せられており、反対に電子も陽子をとてつもない力で引いていることが分かる。勿論このままだと一瞬で電子が陽子に激突するので陽子の周りをとてつもない速度で周回しなければならなくなる。

 陽子の周りを周回する、つまり電子が円運動をすると速度に応じた遠心力が働くため、非常に高速で周回すれば陽子に激突することも無くなる。では、どれほどの速さで周ればよいかと言うと2,196,682 m/s, 光速の0.733 %の速度で周れば激突することも飛び出すことも無く、陽子の周りを周回することができる。

 そして、この値は光速よりも普通に小さいため物理学的に反することも無い。

 けれどもこの速さは非常に小さな電子にとってはとてつもないものとなっており、1秒間に陽子の周りを6596兆回周回するほどである(地球の赤道でさえ18秒強で1周できるほどの速度)。

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陽子を周回する電子

 このように電子は陽子からとてつもないほどの大きさの力を受けており、その力に拮抗するために非常に高速度で陽子の周りを周回している。

2.2 万有引力

 万有引力は静電気力と比較すると非常に小さな力である。そして、万有引力の式は基本的には静電気力と同じで力を及ぼし合う物質の質量の積に比例し、距離の二乗に反比例する。

 しかし、万有引力には負の値が無く、更に引力しか存在しないため、反発することは無い。また、静電気力の比例定数に当たる万有引力定数は6.67408×10^-11 m^3/(kg s^2)とかなり小さいため、静電気力のようなとてつもない力が働くことは普通は無い。

 そして、ここからは陽子と電子の間にかかる万有引力の大きさを求めていきたいと思う。

 陽子と中性子の質量は1.673×10^-27 kg , 9.109×10^-31 kgであるので両者の距離である5.3×10^-11 mから万有引力を求めると3.621×10^-47 Nと静電気力と比べると無いに等しいぐらいに小さく、電子にかかる加速度も3.975×10^-17 m/s^2と微々たる程度である。

 この大きさは静電気力の2.290×10^39分の1程度であり、もはや万有引力は無視できるほどである。

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 以上のことより、原子核の陽子と電子にかかる力は静電気力が支配的となっており、万有引力は無いに等しいぐらいに小さい。

 そして、その静電気力の大きさはとてつもなく大きく、電子にかかる加速度は重力加速度とは比べ物にならないほど大きく、電子は陽子の周りを猛烈な速度で周回しなければならないほどである(地球の赤道周回を18秒強で一周するほどの速度)。

 以上、陽子と電子の間にかかっている力についてでした。