DS930810のブログ

筆者は自然や自然現象に関心が相当あるので自然に関する記事(天文, 地理, 生物)を書いていきたいと思います。かつては1日2記事を適当な時間に投稿していましたが今のところは午後6時に1記事投稿する形にしています。

白金と共にキログラム原器にも使用されているイリジウム

 今回はイリジウムについて書いて行きたいと思う。

目次

1. イリジウム

1.1 イリジウムとは

 イリジウム(Iridium)は原子番号77番の元素のことであり、その名は虹の女神であるイリス(Iris)にちなんでいる。そして、イリジウムは非常に重い原子であり、単体の中では密度がオスミウムに次いで大きく、その密度は20 ℃で22.56 g/㎤にも及ぶ。

 更にイリジウムは融点, 沸点共に高い金属であり、その高さはそれぞれ2443 ℃, 4437 ℃にも及び、これは全元素の中でもトップクラスに高い値となっている。

 しかし、周期表でイリジウムの左に位置している元素はいずれも融点, 沸点共に高く、イリジウムが特別高くなっているわけでは無い。

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 イリジウムの左隣には最も密度の大きい元素であるオスミウムがあるがオスミウムは密度が高いだけではなく、融点, 沸点共に高くなっており、その値はそれぞれ3045 ℃, 5012 ℃とイリジウムと比べても600 ℃ぐらい高い値となっている。

 このようにイリジウムは全金属中で二番目に重く、更に固体でいられる温度の範囲が非常に広い金属であるもののこれだけだとそこまで特徴のある金属の様には思えない。しかし、イリジウムはこれ以外にも様々な特徴があり、その一つとしてはキログラム原器に用いられていることである。

1.2 キログラム原器

 キログラム原器は正確には国際キログラム原器と呼ばれており、1 kgの定義に使われる合金である。そのため、地球上では全宇宙の質量はこのキログラム原器によって定められており、キログラム原器の質量はきっちり1 kgと定められている。

 つまり、キログラム原器は1.0000004 kgでもなければ0.9999994 kgでもなく、小数点以下には一切数値が出てこない訳である。

 そして、このキログラム原器はイリジウムと白金の合金となっており、どちらの金属も非常に反応性の小さな金属である。また、キログラム原器の合金の割合は白金が9に対してイリジウムが1となっており、白金が大半を占めているもののイリジウムも100 g含まれていることが分かる。

 更にこれらの金属は全元素の中でも最も重い部類に入っているため、キログラム原器の大きさは思った以上に小さくなっており、その大きさは高さ, 直径共に39 mmとそこまで大きくは無い。

 そのため、計算上ではキログラム原器の体積は46.59 ㎤と算出され、この体積で質量が1 kgであるため、キログラム原器の密度は21.46 g/㎤であることが分かる。しかし、これではイリジウムを含んでいるにもかかわらずキログラム原器の密度は白金の密度である21.45 g/㎤とほぼ同じ値になってしまう。けれどもこれは合金であることに起因していると考えられるため、そこまでおかしいとは考えられない。

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 上図は1 kgの水とキログラム原器の比較であるが密度が全く異なっているため、水のほうが圧倒的に体積が大きい。そして、キログラム原器が用いられる前は10 cm四方の水が1 kgの基準に使われており、そこからキログラム原器が用いられるようになった。

 しかし、キログラム原器は非常に反応性の低い金属同士の合金ではあるものの全く質量が変わらないわけでは無く、キログラム原器が製造されてから現在に至るまで質量が50 μgも増すようになった。そのため、これだとキログラムの大きさがキログラム原器が製造された1889年と比較して0.005 %も大きくなるのでキログラムの定義としては不適切となる。

 以上のことより、キログラム原器が1 kgの定義として使われるのは今年いっぱいまでであり、来年からはプランク定数が定義として用いられるようになる予定である。

2. 隕石に多く含まれる金属

 イリジウムは地球上にはほとんど含まれない金属であり、その埋蔵量は地殻中にわずか0.000003 ppmしか含まれないほどである。1 ppmとは100万分の1含まれているという意味である。例えば二酸化炭素は大気中に0.04 %含まれているので二酸化炭素は大気中に400 ppm含まれていると言える。

 つまり、ppmは非常に小さい単位であり、大気中にそこまで含まれていない二酸化炭素でさえ400と比較的大きな値を取るわけである。しかし、イリジウムの埋蔵量はそのppmをもってしてもわずか0.000003にしかならず、これは地殻全体のわずか3×10^-12の割合しか含まれていないことを意味している。

 要するにイリジウムは地殻中の埋蔵量が非常に小さいことを意味しており、地殻100万トンに対して3 gのイリジウムしか含まれていない。

 ちなみにppmは一般的に気体に対しては体積比を用い、液体, 固体に対しては重量比を用いることが一般的であるため、二酸化炭素の場合は空気1 Lに対して0.4 mL含まれていることを意味しているが密度は二酸化炭素のほうが空気よりも大きいため、質量に関しては0.04 %よりも大きい。

 このようにイリジウムは地殻にごくわずかな量しか含まれておらず、地球上ではイリジウムの埋蔵量が非常に小さいことが分かるが実はこの埋蔵量の小ささが隕石衝突の指標に使われているのである。その理由は隕石には多くのイリジウムが含まれているからであり、隕石が地上に衝突した場合はその層だけイリジウムが多く含まれるわけである。

 例えば1908年に起こったツングースカ爆発は長年原因が不明であったが衝突から105年たった2013年に現地で多量のイリジウムが発見されたことでこの爆発の原因が隕石であったことが証明されたほどである。

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 他にもユカタン半島の地層では6550万年前の地層で非常に多くのイリジウムが発見されたがこの時期はちょうど恐竜が絶滅した時期と重なるため、6550万年前に大規模な隕石による衝突が起こったことを意味している。

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 隕石が衝突した後、長い時間をかけて隕石が衝突した場所が堆積されて地層が形成されるがその隕石が衝突した層は他の場所と比較してもイリジウムが異常に多いため、隕石が衝突したことの証明になるのである。

 以上のことより、イリジウムはキログラム原器以外にも地殻の埋蔵量の少なさと隕石に多く含まれていることを利用して、隕石衝突の証拠としても用いられるのである。

3. イリジウム衛星

 最後に余談となるがイリジウム衛星について書いて行きたいと思う。イリジウム衛星は人工衛星の一つであり、その名称からイリジウム製のようにも思われそうであるが実はイリジウムが材料に使われているわけでは無い。

 では何故イリジウム衛星と言う名称かと言うとイリジウム衛星は当初、77個の衛星で通信を行う計画であり、イリジウムの原子番号が77番であることに由来している。

 つまり、イリジウム衛星のイリジウムとはイリジウムと言う元素ではなく、77を意味しているので「イリジウム=77」の意味で使われているのである。

 しかし、当初の計画では77個の衛星を打ち上げる予定ではあったものの最終的には66個の衛星を打ち上げることとなり、結果としてイリジウムと言う名称だけが残ってしまったのである。つまり、現在のイリジウム衛星は名称が誤っているとも言え、正確には原子番号66番にちなむジスプロシウム衛星のほうが正しいと言える。

 以上のことより、イリジウムにちなむ名称の衛星はあるがそこでのイリジウムは77を意味しているだけであり、更に現在の衛星の数からイリジウム衛星には全くイリジウムの要素が無いわけである。

 ここまではイリジウム衛星の名称の由来について書いてきたがここからはイリジウム衛星の面白い点について書いて行きたいと思う。イリジウム衛星は通信用の衛星であるが実はUFOと間違われる衛星としても有名である。

 その理由はイリジウム衛星には反射率の高い反射鏡が3つ備え付けられており、その反射鏡に太陽の光が当たると非常に明るい光を反射するからである。

 では、どれほど明るいかと言うと視等級がマイナス9等にも及ぶと言われており、この明るさは一般的な1等星の1万倍, 全天で最も明るいシリウスの1,000倍強, 金星の最大光度の50倍強にも及ぶほどである。

 そのため、イリジウム衛星は非常に明るい光を放つ衛星であり、その明るさから挑戦性爆発に見間違えられそうであるが光を放つ時間は十数秒と非常に短いため、超新星爆発とは明らかに異なっている。しかし、長さだけではUFOと見分けることは難しいため、UFOのように見えてしまうことは必然とも言える。

 このようにイリジウムとは直接的な関係はないもののイリジウムの名を冠する衛星は存在しており、イリジウムの認知度が比較的高いことが伺える。

 以上、イリジウムについてでした。

 

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