DS930810のブログ

筆者は自然や自然現象に関心が相当あるので自然に関する記事(天文, 地理, 生物)を書いていきたいと思います。かつては1日2記事を適当な時間に投稿していましたが今のところは午後6時に1記事投稿する形にしています。

南天のさいだん座 日本からは見づらいが興味深い恒星が多く...

 今回はさいだん座について書いて行きたいと思う。

目次

1. 南天の星座、さいだん座

1.1 さいだん座の位置

 さいだん座(Ara, 祭壇座)はさそり座の南に位置している星座であり、日本からだと半分程度しか見ることが出来ないため、日本での知名度はほとんどない。更にさいだん座には2等星以上の恒星も含まれておらず、一般的に知られている固有名を有する恒星も存在しないため、星座としての注目度も小さい。

 しかし、さいだん座には絶対等級の強い恒星や自転速度が非常に速い恒星が含まれており、星座として見てみるとあまり興味深くないが個々の恒星を見てみると意外に興味深く、観測する価値のある星座である。

f:id:DS930810:20181030133303j:plain

 さいだん座はさそり座の南, 望遠鏡座の西, じょうぎ座の東, くじゃく座の北西部に位置しており、みなみのかんむり座とも少しだけ接している。更にさいだん座の南にはふうちょう座, みなみのさんかく座が位置しており、さいだん座は大きさの割には様々な星座と接していることが分かる。

 そして、さいだん座は先ほども書いたように南に位置している星座なので3等星以上の恒星で東京から見える恒星は最も北に石ているα星のみであり、他の3等星であるβ, γ, ζ星は東京からは見ることができない。

1.2 さいだん座の明るい恒星と赤緯

 さいだん座の恒星はそこまで明るくないが3等星は4つあり、かに座やうお座のように暗い恒星ばかりで構成されているわけでは無い。

 しかし、先ほども書いたようにさいだん座は非常に南に位置している星座なので3等星の中ではα星のみしか観測できず、更にそのα星もかなり低い位置にしか南中しない。

そのため、さいだん座は日本から観測することは難しく、反対に南半球では逆転はするものの観測は容易であり、緯度によっては年中沈まない周極星座となる場合もある。

 そして、ここからはさいだん座の明るい恒星の明るさと位置について書いて行きたいと思う。

f:id:DS930810:20181030145236j:plain

 さいだん座の明るい恒星は全体的に見て絶対等級の明るい恒星が多く、δ星以外の恒星は全て絶対等級がマイナス1.5等を超えている。更に明るい恒星上位6位までの恒星の中で半数が超巨星(スペクトル型がⅠbのもの)であり、遠くにいる恒星が多いことも分かる。

 また、個々の恒星については2章で書いて行きたいと思うがここでは赤緯に注目していただきたい。赤緯とは恒星の緯度であり、同時に赤経は恒星の経度に相当する。そして、赤経は恒星がどの季節に見えるかを示しているが赤緯は緯度によって見える恒星を示しており、北半球では(緯度-90°)よりも赤緯の小さい恒星は見ることが不可能である。

 例えば新宿の緯度は北緯35.69°であるがこの緯度を先ほどの計算式に当てはめると赤緯-54.31'未満の恒星を見ることは不可能となる。そのため、新宿ではα星とθ星以外の恒星を見ることは不可能であり、α星やθ星もほぼ地平線上には上がらないようになる。

 恒星の南中高度を求める計算式は{恒星の赤緯-(緯度-90°)}であるのでさいだん座α星の新宿からの南中高度を求めたい場合はさいだん座α星の赤緯である-49.876°を恒星の赤緯の所に代入すれば求めることが出来る。

 そして、そこから求めると南中高度は4.434°となり、かなりすれすれで南中することが分かる。

 ちなみにこの値が0を下回ると観測が不可能となり、反対に90°を上回ると北中するようになる。

2. さいだん座の恒星

2.1 極端に自転速度の速いα星

 さいだん座α星はさいだん座の3等星の中で唯一東京から観測が可能な恒星であり、短い時間ではあるがさそり座の後半部が南中するタイミングで観測が可能である。そのため、さいだん座α星はさいだん座の恒星の中では最も観測しやすい恒星であるものの北緯40°を若干過ぎたあたりからは観測することが出来ず、北海道では観測が不可能である。

 そして、ここからはさいだん座α星の物理的な性質について書いて行きたいと思うがさいだん座α星はさいだん座の恒星の中では二番目に明るい恒星であり、最も明るい恒星はα星であるがその明るさの差はほぼゼロと言っても過言では無く、ほんの少しだけβ星のほうが明るい程度である。

 そのため、α星もβ星も小数点以下第二位までで表わすとどちらも2.84等星であり、同じ明るさとして見なされているがこれはあくまで平均的な明るさの話であり、実際にはα星もβ星も変光星であるため、これよりも明るくなることもあれば暗くなることもある(それ故、資料によってはこれらの恒星の明るさはばらつきがあり、α星の明るさを2.95等とするものもあるため、正確にα星の明るさが2.84等ということも無い)。

 ここまではさいだん座α星の明るさについて書いてきたがここからは距離について書いて行きたいと思う。さいだん座α星の距離は267.4光年であり、地球からの距離はそこまで遠くは無いが比較的明るいため、絶対等級はマイナス1.73等と比較的明るくなっている。

 更にα星はスペクトル型がB2の主系列星であるため、表面温度はかなり高く、20,000 Kを超えており、この表面温度は太陽の3.5倍以上にも及ぶ。そのため、α星が放出している電磁波は可視光が中心ではなく紫外線が中心となっており、全エネルギーで見ると絶対等級マイナス1.73等よりもはるかに明るい恒星である。

 また、α星の最大の特徴としては自転速度の速さにあり、その速さは375 km/sと自転速度の速いアルタイルやベガはおろか更に速いレグルスをも上回っているため、楕円形の恒星となっている。

f:id:DS930810:20181030135816j:plain

 さいだん座α星は著名な恒星の中で自転速度の速い恒星(太陽, シリウス以外)の自転速度をも凌いでおり、非常に自転が速いことが伺える。

 そして、さいだん座α星は正確な質量は不明であるがスペクトル型から太陽の8倍程度と推測できるので、将来的には超新星爆発を起こせるか起こせないかの境目にあり、起こせなかった場合には大規模な白色矮星になると考えられる。

 ちなみにζ星もβ星に似た恒星であるが規模はβ星と比べても小さく、超新星爆発も起こせそうにないため、本記事では省略させていただく。

2.2 巨大で明るいβ星

 次にさいだん座β星について書ていきたいと思う。さいだん座β星はさいだん座のなかでは最も明るい恒星ではあるものの先ほども書いたようにα星とほぼ明るさが変わらない恒星であるため、実質さいだん座の恒星で最も明るい恒星は2つあると言っても過言ではない。

 そして、β星はα星とは違い太陽よりも表面温度の低い恒星であるため、橙色の恒星として観測される。

 また、β星は地球からの距離がα星と比較すると明らかに遠く、その距離は645.9光年とα星の倍以上も離れている。そのため、β星の絶対等級はかなり強いものとなっており、マイナス3.64等と北極星とほぼ同じである。

 そのため、β星の直径は非常に大きく、太陽の130倍程度はあるのではないかと考えられており、この直径はα星はおろかリゲルよりも大きく、更に言うと水星軌道の大きさをも凌ぐほどである。

f:id:DS930810:20181030140947j:plain

 さいだん座β星(右)は太陽(左の矢印の先の小さな円)を圧倒的に凌ぐ直径を有しており、リゲルの直径をも上回っているが表面温度が低いため、絶対等級はリゲルよりもはるかに暗く、仮にリゲルがさいだん座β星の位置に輝いていればマイナス0.5等星として輝いているほどである。

 そして、さいだん座β星はα星とは地球からの明るさは似ているがそれ以外の点では真逆と言っても過言では無く、以下の点で真逆となっている。

  • 表面温度 (α: 高い β: 低い)
  • 直径 (α: そこまで大きくない β: 巨大)
  • 自転速度 (α: 極めて速い β: 遅い)
  • 年齢 (α: 若齢 β: 高齢)

 しかし、これらの特徴はある程度の質量を有するものではほぼ共通となっており、特別α星とβ星が真逆と言う訳ではない。更にβ星の質量もα星とほぼ同じてあると考えられているため、β星はα星の将来の姿であると考えられ、今後は超新星を起こすか白色矮星になるかはまだ分からない状況となっている。

2.3 1京キロメートルよりも遠く、自転も速いγ星

 次にさいだん座γ星について書いて行きたいと思う。γ星はさいだん座の恒星の中では4番目に明るい恒星であり、ζ星のほうが明るい。そして、同時にγ星はさいだん座の3等星の中では最も暗い恒星であり、その明るさは3.31等と決して明るいものでは無いが地球からの距離はα星やβ星と比較してもかなり遠く、1,000光年よりも遠い

 では、どれほど遠いかと言うと1,113光年も離れており、この距離は1京キロメートル(約1057光年)よりも遠く、ほぼ同じ遠さの恒星としてはほ座γ星がある。

f:id:DS930810:20181030142542j:plain

 ほ座γ星とさいだん座γ星を比較するとさいだん座γ星のほうが若干近いもののほぼ同じ距離であり、その距離の差は誤差レベルである。

 しかし、絶対等級に関してはほ座γ星のほうが強く、更にほ座γ星はO型(最も表面温度の高いスペクトル型, 30000 K以上)の超巨星とあまりに放射が強く高温の中心核がむき出しになったウォルフ・ライエ星(WC)との連星であるため、規模は圧倒的にほ座γ星のほうが強い。

 そのため、さいだん座γ星が見劣りするように見えるがあくまでほ座γ星と比較した場合であるためそのように見えるだけであり、さいだん座γ星も非常に明るい恒星であることには変わりはなく、絶対等級はマイナス4.36等と太陽の4,742倍にも及ぶ。

 そして、さいだん座γ星の表面温度はα星とほぼ同じであり、更に質量に関しては太陽の12-14倍程度はあると推測できるため、確実に超新星爆発を起こすことはでき、最終的には中性子星になると考えられる。

 更にさいだん座γ星の最大の特徴としては自転速度の速さにあり、普通超巨星の自転速度は遅いもののγ星の自転速度は最低でもベガよりかは速いことが分かっており、これは超巨星としては非常に特異である。

 このようにさいだん座は南にある上に日本からだとかなり見づらい星座であるが個々の恒星に着目してみると非常に面白い星座であり、観測する価値は十分あると考えられる。

 以上、さいだん座についてでした。