DS930810のブログ

筆者は自然や自然現象に関心が相当あるので自然に関する記事(天文, 地理, 生物)を書いていきたいと思います。かつては1日2記事を適当な時間に投稿していましたが今のところは午後6時に1記事投稿する形にしています。

肉眼で観測できる恒星の中で最も遠い恒星はどの恒星か?

 今回は肉眼で観測できる恒星の中で最も遠い恒星について書いて行きたいと思う。

目次

1. 遠い恒星

1.1 恒星までの距離

 恒星は銀河系に2,000億個はあるといわれており、太陽もその内の一つに含まれている。しかし、恒星間の距離は極端に遠く、最も近い恒星間の距離も数光年程度も離れている。

 そのため、恒星自体は極めて明るいものの距離が数光年も離れているとその明るさも微々たるものとなり、最も明るいシリウスでさえ街灯の明るさをはるかに下回るほどとなる。

 ちなみに1光年は光が1年間かけて進む距離であるため、光の秒速である299,792,458 mの60倍の60倍の24倍の365.24倍の距離であり、この距離は大体9.46兆km程度である。当然この距離は惑星間の距離とも比較にならないほどであり、太陽の明るさでさえ1光年先からだとシリウスの3.2倍程度の明るさにまで暗くなる。

 このように1光年は非常に遠い距離であるものの太陽から最も近い恒星でさえ4.24光年離れているため、1光年は恒星界では非常に近い距離である。

 そして、恒星の明るさには非常に差があるため、暗い恒星は太陽の数万分の一程度の明るさしか無いが明るい恒星は太陽の数万倍以上の明るさを有しているため、数千光年先から見える恒星も存在している。

1.2 恒星の距離の測り方

 恒星間の距離は非常に離れており、距離の測り方など無いようにも思えるが測る方法は存在している。その方法とは太陽-恒星との距離と地球-恒星との距離がなす角度から測定する方法であり、以下の図のような方法で測定される。

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 地球軌道は緑色の円であり、太陽と恒星との距離は真ん中の赤線である。そして、この太陽と恒星の距離を示す線(真ん中の赤線)地球と恒星との距離を示す線(上の線)がなす角(θ)から距離を求めることができ、このθは視差(parallax)と呼ばれている。

 そして、ここからはこの視差を用いた距離の測定法について書いて行きたいと思う。

 初めに太陽-恒星, 地球-恒星の線に着目していきたいと思うがこれらの線の長さはほぼ同じであるため、2つの線による角の大きさθは微々たるものとなっている。それがどれほど小さいかと言うと最も近い恒星に当てはめた場合でさえ1°の60分の1の更に60分の1である1秒をも下回るほどである。

 そのため、この恒星との距離を測るには精密な測定法が必要である。そして、この太陽と恒星との距離は三角関数を用いて計算すると地球-太陽間の距離である1.496×10^8 kmをtanθで割った値となり、地球と恒星との場合はsinθで割った値となるがsinθとtanθはθの大きさが極めて小さくなるとほぼ同じ値となるため、どちらでもよくなる。また、sinθとtanθはθの値が極めて小さくなるとθと等しくなるため、恒星間の距離は1.496×10^8 km ÷ θとなる。

 以上が太陽(地球)と恒星間の距離の求め方であるがここで光年を用いると計算がややこしくなるため、恒星との距離の単位はこの視差から求められるパーセク(parsec)を用いることが多い。

 パーセクとはθの値が1秒である時の距離であり、この距離は大体30.8兆 kmであるため、光年に換算すると3.2616光年と光年よりも大きい値となる。しかし、これでもこの距離よりも近い恒星は無いため、恒星の距離を示す際の角は1秒の1,000分の1であるミリ秒(mas)が用いられることが多い。

2. 最も遠い恒星

2.1 主要な恒星の視差

 地球から見て最も明るい恒星はシリウスである。そして、シリウスの視差は379.21 masと非常に大きく、当然この大きさは全恒星の中でもトップクラスのものとなっている。

 そのため、シリウスとの距離は非常に近く、先ほど求めた計算式を用いて距離を求めていきたいと思う。視差が1,000 mas (1秒)の場合の距離は1パーセクであるため、379.21 masの場合の距離は1÷0.379.21=2.637 pcとなる(pcはパーセク)。

 そして、1 pcは3.2616光年であるため、これを光年に換算すると8.6光年となり、シリウスまでの距離が8.6光年であることが分かる。

 ちなみに視差を用いた恒星までの距離の計算式は以下の様になっている。

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 次にシリウスに次いで明るいカノープスまでの距離について書いて行きたいと思う。カノープスは地球から見た明るさが2番目であるが視差は10.55 masとシリウスと比べるとかなり小さいため、地球からの距離がかなり遠いことが伺える。

 そして、この視差から距離を求めていくと1000÷10.55=94.79 pcとなり、これは光年に換算すると309.16光年となる。

 そのため、カノープスはシリウスと比較すると非常に遠いことが分かり、この距離はベガ(視差130.23 mas)の12倍以上も遠いことが分かる。

 また、更に遠いリゲルは視差が3.78 masとさらに小さくなっており、これは264.55 pcであり、光年だと862.86光年となる。

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 上表は地球から見た恒星までの視差と距離であり、カノープスはマイナス1等星で最、リゲルは0等星、デネブは1等星、アルドラは2等星で最も遠い恒星である。そして、デネブやアルドラともなると地球からの距離が1,000光年以上も離れており、肉眼で見える恒星の中では最も遠い部類に入ってくるがこれよりも遠い恒星は少ないながら存在する。

2.2 最も遠い恒星までの距離

 地球から最も遠い恒星の視差は当然ではあるが極めて小さいものとなっており、1 mas, 即ち1ミリ秒をも軽々と下回るものさえも存在する。

 例えば4等星で最も遠い恒星であるケフェウス座ν星の視差はわずか0.48 masであるため、地球からの距離は2083.3 pc, 6795光年ととてつもなく遠い。

 当然、これほど遠くに位置しているにもかかわらず4等星(4.25等星)として輝いているため、絶対等級もマイナス7.34等ととてつもなく明るいものとなっており、この明るさは肉眼で観測できる恒星の中では7番目に明るいほどである。

 しかし、肉眼で見える恒星の中にはこの距離よりも遠い恒星が存在しており、カシオペア座ρ星という恒星は0.28 masしか視差が無いため、地球からの距離は10,000光年を超えているほどである。

 そして、地球から最も遠い恒星の視差は0.23 masであり、ここから求められる距離は4348 pc, 14181光年と信じられないほど遠く、ケフェウス座ν星の倍以上も離れている計算となる。

 では、この恒星が何かというとふたご座3番星(3 Geminorum)という恒星であり、ふたご座の領域で5.75等星として輝いている。そして、5.75等は6等星であるため、ギリギリではあるが肉眼で観測することが可能となっており、この恒星こそが肉眼で見える恒星の中で地球から見て最も遠い恒星ということになる。

 当然ではあるがこの恒星の絶対等級は極端に明るいものとなっており、可視光だけでもマイナス7.44等(太陽の8.1万倍)と凄まじいほどになっている。更にこの恒星のスペクトル型はB2タイプであるので表面温度は20,000 K程度と非常に高くなっており、全波長でのエネルギー量だと絶対等級はマイナス9等をも超えていると言っても過言ではないほどである。

 ちなみにふたご座3番星は下図の位置にある。

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 ふたご座3番星はオリオン座とのボーダーに近い所に位置しており(白い丸の位置)、η星のプロプス(Propus)と言う赤い3等星とふたご座1番星と言う黄色い4等星の間に位置している。

 以上が肉眼で観測できる最も遠い恒星についてであり、その距離はキロメートルに換算すると13.4京 kmと非常に大きな値となる。

 以上、肉眼で観測できる最も遠い恒星についてでした。