DS930810のブログ

筆者は自然や自然現象に関心が相当あるので自然に関する記事(天文, 地理, 生物)を書いていきたいと思います。かつては1日2記事を適当な時間に投稿していましたが今のところは午後6時に1記事投稿する形にしています。

空気の主成分である窒素, 酸素の液体状態での性質

 今回は液体窒素, 及び液体酸素について書いて行きたいと思う。

目次

1. 酸素と窒素の割合と融点, 沸点

1.1 大気組成

 窒素と酸素は空気中で最も多く含まれる気体であり、窒素は空気中の78%、酸素は21%も含まれている。そして、残りの気体はアルゴン, 二酸化炭素の順に多く、高温で湿度の高い所では水蒸気の割合も多くなっている。

 しかし、窒素と酸素以外の気体の割合はわずか1%に過ぎないため、窒素や酸素と比べると微々たるものとなっている。

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 けれども二酸化炭素の大気量は割合が非常に小さくても重要であり、産業革命前は0.028%だったが現在は0.04%となっており、これは無視できないほどの大きさである。そして、この二酸化炭素の大気組成に占める割合の急上昇が地球の平均気温に影響を及ぼしており、現在では過去と比較すると明らかに気温が上昇している。

 そのため、割合が小さくても二酸化炭素の割合は非常に重要であり、少しでもバランスを崩すと地球の環境が大きく悪化することが分かる。

 そして、二酸化炭素は常圧では液化しないものの圧力を上げると液化するようになり、液体二酸化炭素と言う状態もできるようになる。

 しかし、今回は常圧化で話を進めていきたいため、二酸化炭素については省略していき、酸素と窒素について書いて行きたいと思う。

1.2 窒素, 及び酸素の融点, 沸点

 二酸化炭素はマイナス77 ℃と比較的高温で固体となるため、冬のヴォストーク基地(南極)だと空気中の二酸化炭素はドライアイス化するが窒素と酸素の沸点は二酸化炭素と比較するとはるかに低いため、液化することは無い。

 では、どれほどの温度で液化するかと言うと窒素はマイナス195.8 ℃、酸素はマイナス183 ℃と非常に低く、当然ではあるが地球上にはこれほどまでに低温な場所は存在しない。そのため、空気中の窒素や酸素が液化することはまずありえず、これらの気体を液化するには人工的に温度を下げなければならない。

 そして、更に温度を下げると固体になるわけだがこの温度はさらに低くなっており、窒素はマイナス209.9 ℃、酸素はマイナス218.4 ℃と酸素のほうが固体になるにはより低温にしなければならないことが分かる。

 そのため、窒素の液体の範囲はかなり狭く、液体の温度幅は14.1 ℃しかないほどである。その一方で酸素の液体の範囲も狭いものの窒素よりかは広く、35.4 ℃の範囲で液体の状態でいることが出来る。

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2. 液体窒素

 液体窒素は窒素の温度がマイナス209.9~マイナス195.8 ℃の時の窒素の状態であり、普段使われる液体窒素の温度は沸点であるマイナス195.8 ℃の状態である。

 そして、窒素自体は無毒の気体であるが液体窒素は非常に危険であり、一歩間違えると重大な事故につながる危険性がある。なぜそうなるかと言うと窒素が液体になったとたんに有毒化するのではなく、「温度が極めて低い」「気化した時に体積が数百倍になる」ことが原因である。

 液体窒素は先ほども書いたように温度がマイナス195.8 ℃と極めて低く、この温度は北半球の寒極, サハ共和国のオイミャコンの最低気温であるマイナス71.2 ℃や地球の寒極であるヴォストーク基地のマイナス89.2 ℃をはるかに下回る温度であり、これほどまでに低温の物体に触れると凍傷を起こすようになる。特に多くの量の液体窒素を浴びると触れた部分が腐敗する危険性もあり、最悪の場合死に至る可能性も十分考えられるほどである。

 そのため、液体窒素は化学的に見ると無毒の物質だが物理的に見ると大変危険な物体となる。

 そして、もう一つの危険性である体積の膨張のほうは液体が気体になる時に分子間力が非常に小さくなるため、いままで束縛されていた気体が自由に飛び回るようになり、結果として空気中に混ざるようになる。

 当然このような事態になると空気中の窒素の割合が増え、結果として酸素の割合が小さくなるため、酸欠を起こすようになる。

 例えば25 ℃の環境で液体窒素1.12 kg(計算しやすくするため、このような中途半端な値とした)が全て気体になると空気中に放出される窒素の量は978.8 Lにも及び、この量は1 ㎥近くにも及ぶ。

 では、もしこの量の窒素が3 ㎥の密室中に放出されるとどのようになるのだろうか?

 3 ㎥中には酸素が630 L, 窒素が2,340 L含まれており、先ほどの978 Lの窒素が混入されると気体の合計量は3978.8 Lになる(正確には密室なので体積は3,000 Lのままであり、圧力が増える形となるが計算を楽にするため、便宜上3978.8 Lと置く)。そして、3978.8 L中に酸素は630 Lしか無いため、酸素の割合は15.83 %にまで減少し、酸素濃度が16 %を下回ると危険な状態になると言われているため、この濃度では大変危険な状態となる。

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 先ほどの説明は上図のように表わされており、1.12 kgの液体窒素を3 ㎥の密室に放出すると温度の関係上全てが気化を起こして、大気組成が大きく変わるようになる。そして、当然ではあるが液体窒素の量が増えるとますます酸素の割合が小さくなり、更に危険な状態となるため、液体窒素をエレベーターで運搬する時はエレベーターに乗ってはいけない。

 このように液体窒素は毒性はないものの急激に気化すると酸素濃度が小さくなり、非常に危険な状態となるため、安全な物質とは言えない。

3. 液体酸素

3.1 液体酸素とは

 液体酸素は酸素が液体となった状態のことであり、沸点はマイナス183.0 ℃と液体窒素と比較すると高めであり、融点も窒素よりも低いため、比較的広範囲で液体でいることが出来る。

 しかし、液体酸素はそこまで有名では無く、その理由は液体酸素が液体窒素とは違い有毒性だからである。酸素分子は二重結合で原子同士が結合しており、三重結合で結合している窒素と比較すると反応性は高くなっている。

 そのため、酸素はこの反応性の高さから呼吸に用いることができ、もし酸素の反応性が低ければ生命体が生まれることも無かったほどである。

 けれども、この反応性の高さは裏を返せば有害なものともなっており、液体酸素は有機物に触れると爆発的に反応を起こし、これは明らかに危険である。

 このことより、液体酸素は物理的(温度が低いことによる凍傷など)だけではなく、化学的にも危険な物質であり、こちらもエレベーター内でこぼすと酸素濃度が高くなり、酸素濃度が高くなると低くなった時とは反対に酸素中毒になる危険性がある。

 また、酸素の大気中の割合は窒素と比べるとかなり小さいため、同じ量の酸素をこぼした時の影響は窒素以上に出るようになる。

 そのため、酸素濃度は高すぎても低すぎても危険であり、液体酸素の場合は酸素の空気中の割合が小さいこともあって、窒素と同じ量でも大気中に及ぼす影響は大きくなる。

3.2 磁石に引き寄せられる液体酸素

 液体酸素は液体窒素とは異なり、反応性の高さが危険なものとなっているが実は液体酸素には液体窒素には見られない特徴がある。

 それは液体酸素が強い磁場を起こす磁石に引き寄せられることであり、この理由は液体酸素が常磁性だからである。常磁性とは電子のスピン(電子の方向)がバラバラの状態のことを指しており、強い磁場をかけるとバラバラであったスピンの状態が一定方向を向くため、磁石に引き寄せられるようになる。

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 そして、液体酸素が常磁性な理由は分子内に不対電子があるからであり、この不対電子が常磁性の性質を生み出している。

↓ 酸素分子の電子状態

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 酸素分子の結合状態は上図のようになっているがこの図は難しいため、簡潔に説明していきたいと思う。

 この図の中心部(点線に囲まれた部分)は酸素分子の電子状態となっており、スピンには上向きと下向きがある。そして、電子対(↑↓)ばかりの状態では常磁性は示さないが不対電子(↑)がある状態では常磁性を示し、酸素分子は上の赤丸の所に不対電子があるため、常磁性を示すようになる。

 ちなみに窒素の場合は不対電子が無いため、常磁性を示すことは無く、磁石に引き寄せられることも無い。

↓ 窒素分子の電子状態

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 また、この図の※の部分は反結合軌道となっており、何もついていないところは結合性軌道となっている。そして、「結合性軌道の電子数-反結合性軌道の電子数」の半分が何重結合かを示しており、窒素分子の場合は「結合性軌道の電子が10, 反結合性軌道の電子が4」なので結合状態は(10-4)/2 = 3重結合となっている。

 また、酸素分子は「結合性軌道の電子が10, 反結合性軌道の電子が6」なので結合状態は(10-6)/2 = 2重結合となっている。

 このように酸素分子は分子内に不対電子が存在しており、その不対電子が常磁性を示す、つまり、強い磁場をかけると磁場を出している物質に引き寄せられるようになるのである。

 以上、液体窒素, 及び酸素についてでした。

 

参考文献

元素の周期表、物性 (18-02-01-01) 表3 融点および沸点 (窒素, 及び酸素の融点, 沸点)

http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/18/18020101/03.gif