DS930810のブログ

筆者は自然や自然現象に関心が相当あるので自然に関する記事(天文, 地理, 生物)を書いていきたいと思います。かつては1日2記事を適当な時間に投稿していましたが今のところは午後6時に1記事投稿する形にしています。

磁石に引き寄せられる金属 鉄, コバルト, ニッケル

 今回は磁石に引き寄せられる金属について書いて行きたいと思う。

目次

1. 磁石に引き寄せられる金属

1.1 原子番号26~28

 磁石に引き寄せられる金属で有名なものは鉄であり、鉄は非常に有名で実用性の高い金属である。そして、鉄以外の金属、例えばアルミニウムや銅などは磁石に引き寄せられることは無く、磁石を近づけても何も起こらない。

 しかし、磁石に引き寄せられる金属は鉄だけのようにも思えるが実は鉄以外にも引き寄せられる金属は存在しており、コバルト, ニッケルも磁石に引き寄せられる。

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 コバルトとニッケルの原子番号は27番と28番であり、鉄(26番)の右隣と更に右隣に位置している。

 そして、何故鉄とコバルト, ニッケルが磁石に引き寄せられるかと言うとこれらの金属が強磁性だからである。強磁性の場合は強い磁場を発生させる物質(磁石)に近づけるとその金属自体が磁石となり、結果として引き寄せられるようになる。

 このように磁石に引き寄せられる物質は強磁性を持つ物質であり、実を言うと金属単体だけではなく、合金の中にも強磁性を持つものがある。例えばサマリウム磁石(SmCo)5やネオジム磁石(Nd2Fe14B)も強磁性を持つため、磁石に引き寄せられるようになる。

1.2 強磁性とは

 強磁性とは電子のスピンが同一の方向を向いている状態のことであり、このことは非常に難しいため、簡略化して書いて行きたいと思う。

 電子は原子核を構成する素粒子であり、負電荷を持っている。そして、負電荷だけではなくスピンと言う方向も持っており、スピンには正と負の2種類がある。

 このスピンの方向が非常に重要となっており、スピンがすべて同一の方向を向いている状態のことを強磁性, 隣り合う電子同士が反対方向を向いているものを反強磁性, そして無秩序に並んでいる状態のことを常磁性と呼び、以下の様な状態となっている。

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 強磁性はスピンが全て同じ方向を向いているが故に磁石に引き寄せられる性質を持っており、鉄, コバルト, ニッケルやネオジム磁石などがこの性質となっている。

 そして、反強磁性はスピンの方向に規則性はあるものの反対方向を向いているため、お互いのスピンを打ち消し合うため、磁石に引き寄せられることは無く、クロムなどがこの反強磁性となっている。

 また、これらの強磁性や反強磁性を持っている物質の温度を上昇させると常磁性と言うスピンに秩序を持たない状態となり、この状態となると磁石に引き寄せられることは無くなる。しかし、全く影響が無いかと言うとそうでは無く、強磁場が加わるとある程度は磁化されるため、少しは引き寄せられるが力は非常に弱いため、動けるほど引き寄せられることは無い。

 この常磁性は温度を上昇した時に起こる無秩序な状態であるが常温でもこの常磁性の性質を持っている物質もあり、アルミニウムが常温で常磁性となっている。

 ちなみに反磁性と言う性質もあり、こちらは磁石を近づけると物質内の磁場を打ち消す方向に磁場が発生するがこの力も弱いため、磁石を近づけても離れるようなことは無い。そして、この性質を持つ物質には銅などがある。

 つまり、磁石に引き寄せられないアルミニウムや銅も全く同じ挙動を示しているわけでは無く、アルミニウムの場合は引き寄せられる力が非常に弱く、銅の場合は反対に磁石から離れようとしているわけだがこちらの力も弱く、両方とも動けるほどの影響を受けていないのである。

2. 鉄, コバルト, ニッケルのデータ

2.1 密度, 融点, 沸点

 初めに密度について書いて行きたいと思う。これらの金属は原子番号がそこまで大きくないのでタングステンのように極端に密度は大きくないが水などと比較すると非常に大きい。

 例えば鉄の密度は7.87 g/㎤とアルミニウムの3倍近くもあり、コバルトやニッケルはこれよりも更に大きくなっている。この理由はこれらの金属が遷移金属だからであり、遷移金属は典型元素よりも密度が高くなる傾向があり、密度の小さいアルミニウムは典型元素である。

 実際に典型元素の密度は同周期の遷移金属と比較しても小さくなっており、例えばアルミニウムと同じ族で鉄と同周期のガリウム(典型元素)の密度は5.90 g/㎤と鉄よりも小さくなっている。

↓ ガリウムの位置(黄色の部分)

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 また、遷移金属は融点も高くなる傾向があり、実際に4周期内の融点は高い順にバナジウム(V), クロム(Cr), 鉄(Fe), コバルト(Co), ニッケル(Ni)の順になっており、これらは全て遷移金属に分類されている。

 そして、沸点のほうも高くなる傾向はあるものの典型元素であるゲルマニウムの沸点は鉄よりも高く、一概に遷移金属のほうが沸点が高いとは言えない。

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 コバルトやニッケルは融点や沸点は鉄と大差はないものの密度は1 g/㎤ほど高くなっており、やや高密度の金属であることが分かる。

2.2 電子配置と化合物の色

 鉄やコバルト, ニッケルは遷移金属であるため、不完全に埋まったd電子がある。d電子とはd軌道と言う軌道を周回している電子のことであり、このd電子の影響で化合物に色がつく性質を持っている。

 例えば銅の場合は青色, コバルトはピンク, ニッケルは緑色のようになっており、鉄の場合はイオンの価数によって色が変わってくる。

 そして、これらの金属の電子軌道は以下の様になっている。

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 鉄とコバルト, ニッケルの電池配置はそこまで大きな違いは無く、3d軌道の電子数が違うだけであるがこの電子数の違いが化合物の色の違いを生み出しており、実際にこれらの化合物は先ほども書いたように全く色が異なっている。

 この理由は遷移金属が他の物質に配位する時、d電子の移動が起こることでエネルギー変化が起こり、この時の変化量によって特定の波長の色が吸収されるからである。

 そして、吸収されなかった波長の色がその金属の色として見えるようになり、ニッケルの場合は緑色の光が余るため、ニッケルの化合物は緑色に見えるのである。また、鉄原子は電子が2つ抜けた2価の陽イオンと3つ抜けた3価の陽イオンの状態があるが変化するエネルギー量が異なるため、それぞれ異なった色で見えるようになる。

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 上図はニッケルのd電子状態を表したものである。ニッケルは金属状態の時はd軌道のエネルギーはどの軌道も同じであるがイオン化すると光を吸収し、軌道が分裂するようになる(分裂前と後ではエネルギー量が異なっており、分裂後のエネルギー量は吸収した光のエネルギー分加わっている)。そしてこの時、吸収した光のエネルギー量, つまり波長の長さは金属によって異なっており、ニッケルの場合は緑色の光が余るようになる。

 この性質は遷移金属特有の性質なのでアルミニウムや亜鉛ではイオン化してもこの反応は起こらず、化合物の色は白色となり、水溶液は透明となる。

 このように鉄, コバルト, ニッケルはd電子が不完全に埋まった状態であるため、化合物に色がつくようになる。

 以上のことより、磁石に引き寄せられる3元素は共通点もあるが異なる点もあり、それは化合物の色を見れば一目瞭然である。

 以上、磁石に引き寄せられる金属についてでした。

 

参考文献

元素の周期性、物性(18-02-01-01) (密度, 融点 ,沸点)

http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=18-02-01-01