DS930810のブログ

筆者は自然や自然現象に関心が相当あるので自然に関する記事(天文, 地理, 生物)を書いていきたいと思います。かつては1日2記事を適当な時間に投稿していましたが今のところは午後6時に1記事投稿する形にしています。

降水量の多い地域とその偏り

 今回は降水量について書いて行きたいと思う。

目次

1. 降水量と気候

1.1 季節による降水

1.1.1 降水量の概要

 降水量で初めに考えないといけないことは最低限の降水量があるかどうかについてであり、降水量がある一定の値を超えていないと樹木が生育できず、更に降水量が少ないと草さえも生えない不毛の地となる。

 そして、その降水量の基準となるのは乾燥限界と言う値であり、乾燥限界は蒸発量のおおよその目安である。この蒸発量が降水量を下回れば湿潤な気候として見なされるが上回ってしまった場合は出ていく水の量のほうが多くなり、結果として樹木が生えなくなる。

 更に降水量が乾燥限界の半分を下回ると草も生えない砂漠と化し、このようになるともはやサボテンのような乾燥に強い植物しか生育できなくなり、普通の農業も不可能となるため居住には適さなくなる。

 このように乾燥限界は気候を決める上で非常に重要となるがこれを決めるには夏に乾燥するか冬に乾燥するかについて考えなければならないのでここでは季節による降水の偏りについて書いて行きたいと思う。

1.1.2 冬季少雨型(w型)

 初めに冬に降水が少ないタイプについて書いて行きたいと思う。冬に降水量が少ない気候は夏に降水が多く、冬に降水が少ないことになるが実を言うとこれは世界中の大半の地域で当てはまる。その理由は冬の気温は低く、気温が低いと空気中に水分をあまり多く含むことが出来ないため、降水量が低下するからである。更に季節風の影響が大きい大陸東岸だとより乾燥するため、全体的に降水量が少なくなる。

 このように冬の降水量が少ないことは普通であるため、多少冬に降水が少ないだけでは冬季少雨型とはならず年中湿潤型となる。例えば関東平野の冬はかなり乾燥するが夏の降水量と極端に差が無いため、関東平野は降水量に偏りがあるとはみなされず、高崎市のような冬の降水量が他の地域と比較すると著しく少ない所のみ冬季乾燥型として見なされる。

 そのため、冬季少雨型となるには冬の最も降水量の少ない月の降水量夏の最も降水量の多い月の降水量10分の1未満にならなければならない。

 そのような気候になれば冬季少雨型(w型)となり、前述した高崎市はこの条件に当てはまっているため、高崎市は温帯冬季少雨気候(Cwa)に分類されている。

 そして、このように気候になるには以下の様な条件が必要である

  • 砂漠の南部に隣接しており、冬場になると亜熱帯高圧帯の影響を大きく受ける
  • 高緯度の内陸部に位置しており、冬になると高気圧が発生する
  • 山脈などの影響で冬の降水が妨げられる

 一番上の条件に当てはまる気候はサバナ気候(Aw)と亜熱帯型の温帯冬季少雨気候(Cwa)であり、AwとCwaの違いは単純に最寒月の平均気温が18 ℃を上回るか否かである。ちなみにサバナ気候は便宜上冬季乾燥型となっているが熱帯では季節の判断が難しいため、この判定に季節は関わっていない。しかし、砂漠の南の地域のサバナ気候は間違いなく冬季少雨型となっている。

 次に高緯度の内陸部について書いて行きたいと思う。高緯度では全体的に降水量が少なくなり、冬場になると気温が極端に下がるため、場合によっては降水量が0に近くなる。そして、大陸の大きさが大きくなると大陸の中心部の冷え込みは極限となり、空気密度が高くなるため高気圧が発生する。

 そのため、高緯度の大陸の内陸部では高気圧の影響で冬場の降水量が極端に少なくなり、これはシベリアの内陸部で顕著となっている。

 この気候は冷帯冬季少雨気候(Dw)と呼ばれており、気温によってDwa(ハルビン, 平壌), Dwb(イルクーツク), Dwc(オホーツク, チタ)の様に分けられており、最寒月の平均気温がマイナス38 ℃を下回る地域ではDwd(サハ共和国の一部)となる。

 ちなみにカナダでは北アメリカ大陸の大きさがユーラシア大陸と比べて小さく、更にハドソン湾の影響からDw気候はほぼみられず、この気候は北アジア, 東アジアの北部にほぼ集中している。

 そして、最後の山脈によって冬季の降水が妨げられる地域には関東平野があるが関東平野の殆どの地域では南岸低気圧などの影響があるため、冬季少雨とはならず、比較的北部に位置している高崎市などがこれに当てはまっている。

1.1.3 夏季少雨型(s型)

 夏季少雨型は冬季少雨型とは裏腹に夏場の降水量が極端に少なくなる気候のことであり、この気候は世界的に見てもかなり珍しい。そのため、夏季少雨型の基準はかなり緩めとなっており、夏の最も降水量の少ない月の降水量冬の最も降水量の少ない月の降水量3分の1になってさえすれば夏季少雨型として扱われる。

 そして、この降水型の地域は降水量が比較的少なめとなっており、冬場になると気温の低さもあり極端に降水が多くなることは無い。また、この降水型は夏場に降水が少ないことが重視されており、冬場の降水が極端に多いが夏の降水もそこそこある上越市のようなところは降水量に3倍以上の差があるものの夏季少雨型ではなく年中湿潤型として見なされている。

 この夏場に降水量が少なくなる原因は山脈が原因となることもあるがほとんどの場合は砂漠の北に隣接しており、夏場になると亜熱帯高圧帯の影響を受ける地域が当てはまっている。そのため、この気候が見られる地域は大陸西岸の緯度30~40°当たりにかけて集中しており、この気候は地球規模の大気の循環によって起こっているため、世界的に見ても珍しいものとなっている。

 この気候で代表的なものには地中海性気候(Cs)があり、最暖月の平均気温によってCsa, Csbに分けられ、更に夏が短いものにはCscがあるがこれは非常に珍しく、明白にこの気候である地域はゼロと言っても過言ではない。

 ちなみにこの気候の冷帯型は高地地中海性気候(Ds)と呼ばれており、こちらは地中海性気候と比べてもかなり珍しいものとなっている。

 また、冬季少雨型でも夏季少雨型でもない気候は湿潤気候(f気候)と呼ばれている。

1.2 乾燥限界

 乾燥限界は年間の水分の蒸発量の目安になっている値であり、気温が高ければ高いほど蒸発しやすいため、気温の高い地域ではこの乾燥限界の値は大きくなっている。

 また、夏に降水の多い冬季少雨型は水が蒸発しやすい夏に降水が多くなるため、判定が上がり、反対に夏に降水の少ない夏季少雨型は水が蒸発しやすい夏に降水が少ないため、判定が下がるようになる。ちなみにこの中間にあたる年中湿潤型の判定は夏季少雨型と冬季少雨型の中間となっている。

 そして、上越市のように冬場の降水量が夏場と比べて多くなっているが夏場の最小降水月が30 mmを上回っている湿潤気候の場合は年中湿潤型か夏季少雨のどちらが用いられるかは不明であるがまず乾燥限界に引っかかることは無いため、議論する必要はない。

 乾燥限界の判定法は大雑把に書くと上記のようになっているが具体的な判定法は以下の様になっている。

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 冬季少雨型は乾燥限界が非常に高くなっており、年平均気温がかなり高いものの降水量が600 mm以上もあるパキスタンのラホールや、年平均気温が氷点下で非常に極寒であるシベリアのウラン・ウデなども乾燥限界を下回っているほどである。

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 年降水量の多いラホールや極寒のウラン・ウデでも乾燥限界に引っかかっており、これらの地域は半乾燥気候(ステップ気候)に分類されている。ちなみにラホールは亜熱帯高圧帯とモンスーン、ウラン・ウデはシベリア高気圧の影響で冬季に降水量が少なくなっている。

 反対に夏季少雨型の乾燥限界は非常に緩やかであり、降水量の少ない地中海性気候では冬季少雨型や年中湿潤型で判定すると間違いなく乾燥限界を下回るようになる所でも乾燥限界を上回るほどである。

 このように乾燥限界は降水量の季節による偏りによって判定が変わるものの年降水量が1,000 mmを超えればまず引っかかることは無くなり、日本には乾燥限界を下回る地域は存在しない。

 また、降水量が乾燥限界の半分を下回ると砂漠気候(BW)に、乾燥限界の半分以上であるかつ乾燥限界未満の場合は半乾燥気候(ステップ気候)に分類される。更に年平均気温が18 ℃以上の場合は高温乾燥気候(h型)となり、18 ℃未満の場合は低温乾燥気候(k型)に分類される。

 そして、高温乾燥気候はサハラ砂漠のような亜熱帯砂漠に多く、低温乾燥気候はゴビ砂漠のような高緯度の内陸砂漠に多く見られる。

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 乾燥帯の判定は上図のようになっており、厳密に言うと年平均気温がマイナス14 ℃を下回るとどうやっても乾燥限界が0 mmを上回ることが無いため、低温乾燥気候の年平均気温はマイナス14 ℃~18 ℃の範囲となる。

2. 極端な降水量の地域

2.1 日本一降水の多い市

 日本で最も降水量の多い市町村は三重県の尾鷲市であり、これはかなり有名である。日本の降水量は全体的に見ても非常に多く、筆者が知る限りでは1,000 mmを下回る地域は長野市のような内陸部ぐらいである(それでも932.7 mmもあるが)。

 そのため、日本の降水量はどこに行っても多く、乾燥帯が無いほどであるが特にその中でも降水量が多いのは尾鷲市であり、尾鷲市の年降水量は3848.8 mmもある。この降水量は横浜市の倍以上もあり、これほどの降水をもたらす原因は南東のモンスーンに起因している(日本列島自体がモンスーン気候であり、そのため降水量が多くなっている)。

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 尾鷲の降水量は横浜と比べて非常に多く、特に9月の降水量は700 mm近くと極端に多くなっている。そして、最も降水の少ない1月でさえ100.7 mmと100 mmを超えており、降水量に偏りこそあるものの年間を通して降水が多いことが分かる。

 また、尾鷲の降水量は3~11月にかけて多くなっており、この間の降水量は横浜で最も降水の多い月である9月の降水量を上回っている。

 このように尾鷲の降水量は極端に多いが世界には尾鷲の降水量の倍以上の降水量の地域もあり、その地域はインドにある。

2.2 世界で最も降水の多い地域

 尾鷲の降水量は非常に多いが世界には尾鷲の倍以上の降水量の地域もあり、その地域はインドにある。

 インドは日本よりも緯度が低いため、国土のほぼすべての地域が熱帯, または亜熱帯に属しており、日本と比較するとかなり高温である。

 更に日本と大きく違う点は降水量に極端な偏りがあることでインドはヒマラヤ山脈やモンスーンの影響を受け、夏場の降水量が極端に多く、反対に冬場の降水量が極端に少なくなっている。例えばインドの大都市であるムンバイでは冬場になると降水がほとんどなくなるが夏場になるとひと月で800 mmを超える月もあり、夏場の間(6~9月)に年間降水量の95%以上の降水があるほどである。

 このようにインドの降水量には大きな偏りがあるが世界で最も降水量の多い地域もインドにあり、そこでも大きな偏りがある。その降水量が最も多い地域はチェラプンジ(Cherrapunji)であり、チェラプンジは北緯25.3°とインドの中では比較的高緯度に位置しているため、亜熱帯性の気候をしている。

 そして、チェラプンジは雨季になると異常と言えるほどの降水があり、最も降水の多い7月の降水量は3,272 mmと尾鷲市の年降水量の85%もの降水があるが最も降水の少ない月である1月の降水量はわずか11 mmしかなく、その比は300倍近くにも及ぶ。

 このようにチェラプンジは降水量が極端に多いだけではなく偏りも極端であり、これは尾鷲市には見られない特徴である。では、チェラプンジ, 尾鷲, 横浜の降水量を比較していきたいと思う。

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 チェラプンジの雨季の降水量は尾鷲でさえかすんでしまうほど多く、年降水量も10,000 mm以上と非常に多い。その反面、乾季の降水量は極端な年降水量から見ると異常と言えるほど少なく、1月の降水量に至ってはグラフ上に表示されないほど少ない。

 そして、この降水量はどれほど偏っているかは下の円グラフで示したいと思う。

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 チェラプンジの降水量は6~8月にかけて特に多く、7月の降水量は全体の27.78%も占めている。その一方で11~2月にかけての降水量は異常と言えるほど少なく、最も少ない1月の降水量は全体の0.0934%にしかすぎないほどである。

 このように世界で最も降水量の多い場所は一定期間に弾丸のごとく降水があり、その期間だけで年間の降水の大半を占めるほどである。

 以上、降水量が多い地域とその偏りについてでした。

 

参考文献

横浜市 Wikipedia 2.2 気候 (横浜市の降水量)

https://ja.wikipedia.org/wiki/横浜市

尾鷲市 Wikipedia 1.1 気候 (尾鷲市の降水量)

https://ja.wikipedia.org/wiki/尾鷲市

Cherrapunji Wikipedia 2.1 Climate (チェラプンジの降水量)

https://en.wikipedia.org/wiki/Cherrapunji