DS930810のブログ

筆者は自然や自然現象に関心が相当あるので自然に関する記事(天文, 地理, 生物)を書いていきたいと思います。かつては1日2記事を適当な時間に投稿していましたが今のところは午後6時に1記事投稿する形にしています。

風船はどこまで上昇するのか? 実は風船の重さの影響が大きい

 今回は風船がどこまで上昇できるかについて書いて行きたいと思う。

目次

1. 風船と浮力

1.1 気体の密度

 風船が上昇する原因は浮力にあり、浮力は風船の内部にある気体と大気密度の違いにより生じる。例えば口で膨らました風船は上昇することは無いがヘリウムを入れた風船は上昇する。この理由は単純にヘリウムの密度が小さいからであり、ヘリウム風船は口で膨らました風船と同じ体積でも質量は7分の1以下である。

 そして、浮力は風船の体積と大気密度に比例するため、同じ体積の場合は同じだけ浮力が働くようになり、口で膨らました風船は重力がわずかに浮力に勝っているため上昇することは無く、反対にヘリウムの場合は浮力が重力を上回っているため、上昇するのである。

 ここまでが風船の上昇する原理について簡単に書いてきたがここからは気体の密度について書いて行きたいと思う。

 気体は固体や液体とは異なり、分子間の束縛が非常に小さいので自由に飛び回ることが出来る。そして、気体の密度は単純に分子量に比例しているため、分子量が2の水素の密度は分子量が32の酸素の密度の16分の1しかない(細かく見れば分子間力や気体の体積などが影響するため、完全に分子量に比例しているわけでは無いがその影響はかなり小さい)。

 これは固体や液体とは大きく異なっており、液体の場合は水よりもはるかに分子量が大きいジエチルエーテル(CH3CH2OCH2CH3)のほうが水よりも密度が小さく、単純に密度が分子量に比例しているわけでは無い。

 このように気体は液体などとは異なり、密度はほぼ分子量に比例しているがこれは気体の状態方程式により導くことが出来る。

 気体の状態方程式はPV = nRTで表される方程式のことであり、ここでのPは圧力, Vは体積, nは物質量, Rは気体定数、そしてTは温度である。ここでの物質量とは分子が6.02×10^23 個ある状態のことであり、6.02×10^23 個ある時の質量のことを分子量と呼ぶ。

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 気体の密度はこのように求めることが出来、物質量とは気体の質量を分子量で割った値なので圧力と体積の積は左下の式のようになる。そして、この式の両辺を圧力で割ると左中の式となり、更に質量を体積で割った値、即ち密度を算出すると圧力と分子量の積を気体定数と温度の積で割ったものとなる。

 以上のことから気体の密度は圧力と分子量に比例し、温度に反比例することが分かる。つまり、気体の密度はその気体の分子量に依存することが分かる。

 そして、この計算式から空気の密度を求めていきたいと思う。ここで地表の温度を15 ℃(288 K), 大気圧を101.3 hPaとおくと空気の分子量(正確には混合気体なのでこのようには言わないがここでは便宜上このように書きたいと思う)は28.966なので密度は以下の様に求めることが出来る。

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 空気の密度は1.23 mg/㎤と1 ㎤当たりにわずか1.23 mgの質量しか無いことよりかなり小さいことが分かる。そして、この計算式を用いてヘリウムの密度を求めると0.169 mg/㎤と空気よりもはるかに小さいことが分かり、この密度の差が風船を浮かせるために必要なものとなる。

1.2 浮力の大きさ

 ここからは風船の浮力について書いて行きたいと思う。風船の浮力は空気の密度と風船の体積、及び重力加速度の積の大きさであり、これが重力に勝れば風船を浮かせることができる。

 そして、風船にかかる力は以下の様になっている。

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 風船にかかる力は重力と浮力であり、重力は風船の質量に比例している。ここでの風船の質量は風船自身の質量と風船内の気体の質量の合計であり、風船の質量を無視する場合と無視しない場合では答えが若干異なってくる。

 風船の質量を考慮する場合は式が複雑になり、風船内の気体の密度が空気の密度よりも若干小さくても重力のほうが勝ることもあるため、その場合は風船が浮かぶことも無い。その一方で風船の質量を0とした場合は気体の密度が空気の密度よりも少しでも小さくなると浮力が重力に勝るようになり、上昇するようになる。

 また、風船内の圧力は風船の押し戻す力があるため、大気圧よりも若干大きくなるがこれまで考慮すると計算が出来なくなるほど複雑化するのでここでは大気圧と風船の内圧の大きさは等しいものとして見なす。

2. 風船はどこまで浮くのか

2.1 ヘリウム

2.1.1 風船の質量を考慮しない場合

 初めにヘリウムを用いた場合について書いて行きたいと思う。ヘリウムの密度は0.169 mg/㎤と空気よりもはるかに小さいため、浮かぶことが出来る。そして、今回は風船の質量を考慮しない場合で考えていきたいと思う。

 風船の質量を考慮しなければ単純に気体にかかる力だけで考えることが出来るため、計算は簡単になる。

 風船の地表での体積を1 L、空気密度を1.23 mg/㎤と置くと風船にかかる力は以下の様になる。

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 風船の質量が無かった場合は重力加速度の6.28倍と言うすさまじい加速度で上昇していき、上昇すればするほど大気圧が小さくなっていく分風船の体積が膨張するので風船はやがて破裂するようになる。例えば風船が地表の2倍の体積まで耐えられるとすると大気圧が半分となる6.5 km上空で破裂することとなる。

 このように風船は膨張するため、破裂するようになるが仮に風船の体積が変わらない場合はどうなるのだろうか?

 空気密度は高度が高くなればなるほど小さくなっていくため、体積が変わらない場合は浮力は段々と小さくなっていく。そして、大気密度がヘリウムの密度と等しくなった時、風船の上昇は止まりその後は風船内部から大気が抜け落ちることで段々と下降していき、やがて地表に到達するようになる。

 大気密度がヘリウムと同じ所は上空16 kmであるため、上空16 kmに到達すると風船にかかる重力と浮力が釣り合うようになる。

 このように風船の体積が変化しない場合は変化する場合と違い破裂することは無いため、通常よりも高くまで浮かび上がることができる(上空16 kmまで上昇すると低温の影響で風船が破裂するようになるがここまで考えると非常に難しくなるため、ここでは破裂しないと見なす)。

2.1.2 風船の質量を考慮した場合

 ここからは風船の質量を考慮した場合で考えていきたいと思う。現実にある風船には質量があるため、先ほどのように重力加速度の6.28倍もの加速度で上昇することは無い。そのため、今回は風船の質量を考慮していきたいと思う。

 風船の質量は大体2 g程度であるため、ここでは2 gを風船の質量として用いていきたいと思う。

 しかし、風船の体積が1 Lの場合だと重力のほうが勝ってしまい、風船が下降してしまうため、ここでは風船の体積を3 Lとして考えていきたい(風船に質量が無い場合は体積に影響しないため、2.1.1の場合は1 Lであっても3 Lであっても答えは変わらない)。

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 風船の質量を考慮すると浮力の影響が大きくなっていき、体積が大きければ大きいほど加速度は上昇する。そして、体積が3 Lの場合の加速度は重力加速度の47.2%ほどとなり、風船に質量が無い場合と比較するとかなりか速度が遅くなることが分かる。

 ちなみに風船が浮くために必要な体積は風船の質量をMb, 空気の密度をρair, 風船内の気体の密度をρとおくと{Mb/(ρair-ρ)} ㎤ (重さの単位mg, 体積の単位㎤の場合)必要となり、風船の質量が2 gの場合は1.885 Lもの体積が必要となる。

 そして、風船3 Lの場合だと空気密度が0.836 mg/㎤の所まで上昇することが出来、その高さは上空4 km弱となる。

2.2 アンモニア

2.2.1 風船の質量を考慮しない場合

 今度はアンモニアを用いた場合について書いて行きたいと思う。アンモニアは空気よりも軽いため、風船に入れれば浮くものの実際には風船の質量が大きく邪魔をするので浮かせるには大きな体積が必要となる。

 アンモニアの分子量は17.0306 g/㎤であるため、15 ℃, 1気圧下ではおよそ0.721 g/㎤となるため、今回はこの値を使っていきたいと思う。

 そして、力の関係は以下の図のようになっている。

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 アンモニアの場合はヘリウムよりかは幾分か重力が大きくなるため、上昇力も弱まり、重力加速度の0.706倍程度の加速度で上昇していくこととなる。そして、この上昇は風船の体積が変わらない場合、上空5 km強で浮力と重力加速度が釣り合うようになる。

2.2.2 風船の質量を考慮した場合

 風船の質量を考慮するとヘリウムの時以上に浮力が必要となり、風船の質量が2 gの場合だと最低でも3.929 Lもの体積が必要となる。この体積は3 Lよりも多いため、先ほどのヘリウムの場合と同じように考えると上昇することはできなくなるため、今回は5 Lの体積の変化しない風船で考えていきたいと思う。

 そのように考えると以下の様に力がかかる。

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 このように風船の体積が5 Lあったとしても加速度は重力加速度の9.72%にしかすぎず、非常にゆっくりと飛んでいくこととなる。そして、この体積でヘリウムを入れると加速度は重力加速度の6.26倍の加速度で上昇するようになり、もはや風船の質量を無視できるほどとなる。 

 以上のことより気体の種類によって大きく加速度は変わり、また風船の体積が大きくなると風船の質量が無視できるほどの加速度を得ることが出来るようになる。

 

参考文献

大気の密度分布 (高度による大気密度)

http://zakii.la.coocan.jp/physics/32_density.htm