DS930810のブログ

筆者は自然や自然現象に関心が相当あるので自然に関する記事(天文, 地理, 生物)を書いていきたいと思います。かつては1日2記事を適当な時間に投稿していましたが今のところは午後6時に1記事投稿する形にしています。

珍しい夏季少雨気候

 今回は気候であまり見られない夏季少雨気候について書いて行きたいと思う。

目次

1. 夏季少雨気候とは

1.1 季節による降水量の違い

 降水量は季節によって異なり、例えば日本は太平洋側だと夏場の降水が多く、反対に冬場の降水が若干少ない傾向にある。そして、世界に視野を広げると季節による降水量の偏りが多い地域が多く、一般的に緯度30°前後は降水量による偏りが大きい傾向にある。その理由は大気の循環によるものが主となっており、緯度30°前後は亜熱帯高圧帯が張り詰めており、この高圧帯の直下となると降水量が極端に少なくなる。更にこの高圧帯は季節によって上下するため、冬場になると低緯度側に移り、低緯度側の降水量が減少し、反対に夏場になると高緯度側に移り、高緯度側の降水量が少なくなる。

 このように亜熱帯高圧帯は中緯度地域の降水量を大きく左右しており、この高圧帯が一年中張り詰めている緯度30°付近は乾燥地となっているがアラビア半島やアフリカ北部ではこの高圧帯の影響がより低緯度にまで及んでいる。

 しかし、この高圧帯以外にも降水量を左右する要因はあり、例えば山脈による降水の遮断、季節風、内陸における高気圧の発生などがある。例えば日本列島の太平洋側は夏になると梅雨前線や台風などの影響を受け、本来ならば降水量が亜熱帯高圧帯によって少なくなるはずが多量の降水がもたらされ、反対に冬場になると山脈から湿気が抜けた乾いた風により降水量がそこまで多くなくなる。けれども日本海側の場合は冬になるとシベリアからの寒気が日本海で多量の水分を吸収することで多量の降水をもたらし、結果として冬場の降水量が極端に多くなる。

 このように日本は季節風や台風による影響が大きい気候であり、このような気候は主に大陸東岸で見られる。この気候はモンスーン気候と呼ばれており、目立った乾季が見られない気候であり、太平洋側は冬場になると乾燥するが特に乾季とも呼べるほどではないため、年中湿潤な温暖湿潤気候(Cfa)に分類される。

 そのため、大陸東岸は年中亜熱帯高圧帯に覆われる緯度であったとしても季節風の影響が大きく、砂漠になることはない。

 しかし、大陸西岸は季節風の影響が小さく、緯度によって左右されるため、亜熱帯高圧帯に覆われる緯度では砂漠となり、その前後ではこの亜熱帯高圧帯の影響が非常に大きくなる。大陸西岸の気候で緯度が低い順に並べると熱帯雨林気候(Af), サバナ気候(Aw), ステップ気候(BS)を挟んで砂漠気候(BW), 地中海性気候(Csa), 西岸海洋性気候(Cfb)のようになっており、これ以上高くなると狭い範囲に亜寒帯気候(D)を挟んで寒帯(E)となる。

 この中で亜熱帯高圧帯の影響を大きく受ける気候はサバナ気候と地中海性気候であり、サバナ気候は冬場に降水が少なく地中海性気候は夏場に少なくなる。

1.2 夏季少雨気候

 ここまでは季節による降水量の変化について書いてきたがここからは夏場に降水量が少なくなる気候について書いて行きたいと思う。夏場に降水量が少なくなる気候は実は珍しく、目立った気候では地中海性気候しか見られない。

 地中海性気候は季節風の影響を受けづらい大陸西岸に分布しており、地中海性気候は亜熱帯高圧帯の中心よりも北側に位置しているため温帯に分類される。地中海性気候は夏場になると北上してきた亜熱帯高圧帯に覆われるため、砂漠並に降水量が少なくなり、最も少ない月の合計降水量は30 mmを下回る。その一方で冬場になると亜熱帯高圧帯から外れるため、降水量は多くなり、結果として冬場で最も降水の多い月の降水量の合計が夏場で最も少ない月の降水量の3倍以上となる。

 ちなみに新潟県の上越市は冬場の降水量が夏場と比較してもかなり多いが夏場の降水量が30 mmを余裕で上回っているため、夏季少雨型ではなく年中湿潤型に分類されている。あくまで上越市は夏季少雨では無く冬季多雪だからである。

 このように夏季に降水量が少なくなる地域は大陸西岸の中緯度地域のみが大気の循環によって起こり、残りの湿潤気候である熱帯や亜寒帯では大気の循環ではまず夏季に降水が小さくなるようなことは起こらない。

 そのため地中海性気候(温帯)以外で夏季に降水が少なくなるには地形が要因となる必要がある。このことについては次章で書いて行きたいと思う。

2. 熱帯, 及び亜寒帯で夏季に降水が少なくなる地域

2.1 熱帯夏季少雨気候

 熱帯夏季少雨気候とは熱帯気候(どの月の平均気温も18 ℃以上で降水が十分ある気候)の中で夏季に降水が少なくなる気候である。この気候と対をなす気候としては冬季の降水が少なくなるサバナ気候(Aw)があるが実はサバナ気候自体には冬季に降水が少なくなると定義されていないため、正確には対をなしてはいない。

 サバナ気候の定義は熱帯である

  • 最寒月の平均気温が18 ℃以上
  • 年降水量が乾燥限界以上

と言う条件に加えて「最小降水月の降水量が(100-0.04×年平均降水量)未満であるかつ60 mm未満」と言う条件も加わっている。最小降水月が60 mm以上であればどんなに降水量が偏っていても熱帯雨林気候(Af)となり、最小降水月の降水量が(100-0.04×年平均降水量)以上であるかつ60 mm未満であれば熱帯モンスーン気候(Am)となる。

 そのため、サバナ気候にはいつ降水量が少ないかについては言及されておらず、あくまで最小降水月と年降水量だけに着目しているだけである。

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 熱帯の降水量による気候の細分化は上図のようになっており、熱帯雨林気候は最小降水月が60 mmを超えていればこの条件に当てはまり(無論乾燥限界を上回る必要があるが)、最小降水月の降水量の関係上、年降水量は720 mm以上になる。また、サバナ気候は乾燥限界を上回る必要があるため、熱帯の最低条件である360 mmを上回らなければならず、サバナ気候の年降水量は360~2,500 mm以内に収まる。そして、熱帯モンスーン気候は1,000 mm以上の降水量を有する必要がある。

 以上が熱帯気候の降水量があるがサバナ気候に当てはまる地域の大半は冬季に降水が少ないため、便宜上は冬季少雨型となっているが夏季に降水が少ない場合は無理やり熱帯夏季少雨型(As)と言う気候を当てはめる場合もある。

 熱帯夏季少雨型はサバナ気候の条件に地中海性気候の「夏場の最小降水月の降水量が最大降水月の3分の1未満であるかつ30 mm未満である」と言う条件を加えたものである。熱帯の降水量の細分化は温帯や亜寒帯のものとは大きく異なるため、無理やり温帯の条件を加えるとかなりごちゃごちゃすることになる上に例えこの条件に当てはまっていてもサバナ気候と植生に差が出るわけでも無いため、実質この気候は必要ないとも言える。

 しかし、ここで紹介するからには一応この気候区の都市の雨温図を載せていきたいと思う。この気候区に当てはまる場所としてはスリランカのジャフナ(Jaffna)があり、ジャフナは緯度が低いため年中気温が高く、更に夏場の降水量も少ない。

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 ジャフナは北緯9°40'と赤道に近い緯度であるため年較差が小さく、季節よりも降水量によって最暖月が決まっていると言っても過言ではない気候である。そのため、いつ夏か冬かが明白では無いが一応6~8月を夏と置く。最も降水量が少ない月は6月であり、最も多い月は一応冬とも見れなくもない11月であるため、夏に降水量が少なくなっている。

 そして、年降水量は1,270 mmであるため、サバナ気候と熱帯モンスーン気候のボーダーは(100-0.04×1270)=49.2 mmとなっており、最小降水月の降水量がこれを下回っているためジャフナはサバナ気候型である。それに加えて夏季少雨型の条件も満たしているため、ジャフナは熱帯夏季少雨気候であることが分かる。

 しかし、先ほども書いたようにサバナ気候には特に季節に関しては言及されておらず、更に植生も夏季少雨であったとしてもサバナ気候と変わりが無いため、ジャフナはサバナ気候として定義されるほうが普通である。

2.2 亜寒帯夏季少雨気候

 亜寒帯夏季少雨気候(Ds)は亜寒帯の中で夏季に降水量が少なくなる気候のことである。そして、この気候は地中海性気候の中で標高が高い所で見られるため、高地地中海性気候と呼ばれるほうが一般的である。標高が高くなると標高10 km辺りまでは100 m当たり0.6 ℃の割合で気温が低くなり、地中海性気候の中で亜寒帯の条件である「最寒月の平均気温がマイナス3 ℃未満である」を最暖月の平均気温が10 ℃以上の状態のままで満たせばこの気候となる。

 けれどもこの気候は標高が高い所では無く、以下の条件を満たしていれば低標高でも当てはまる。

  • 最寒月の平均気温がマイナス3 ℃未満
  • 最暖月の平均気温が10 ℃以上
  • 年降水量が乾燥限界以上
  • 夏場の最小降水月の降水量が最大降水月の3分の1未満であるかつ30 mm未満

 温帯と亜寒帯では降水量の条件が同じであるため、熱帯の時とは異なりこの気候には違和感が無く、単純に冬の気温が寒い地中海性気候なだけである。そのため、この気候区は普通に受け入れられてもおかしくないが実はかなり限定的であり、その理由は亜寒帯は冬場になると降水量が相当少なくなるからである。

 亜寒帯は冬場になると気温がかなり下がり、飽和水蒸気量は気温が下がると格段に少なくなるため、亜寒帯の冬は降水量が非常に少なくなる傾向になる。その上夏場になると気温が上がるため降水量が多くなり、結果として亜寒帯では夏場に降水が多い地域が大半を占めている。

 以上のことより夏場よりも冬場に降水が多いこの気候はかなり条件が難しくなるため分布は非常に限られているが一応存在しなくはない。この気候は高地地中海性気候の名の通り、地中海性気候の分布する地域の標高の高い場所に位置しており、トルコのムシュ(Mus)が代表例である。ムシュは北緯38°44'に位置しており、標高が1,350 mと高いため、正に標高の高い地中海性気候となっている。

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 ムシュは最寒月の平均気温がマイナス7.4 ℃、最暖月の平均気温が25.3 ℃であるため亜寒帯に分類され、更に最暖月の平均気温が22 ℃を超えているため、亜寒帯の中で夏場に気温の上がるDa型に分類される。

 また、最小降水月は夏にあり、わずか3.8 mmと少なく、最も降水の多い月の30分の1強しか無いため、夏季少雨型に分類される。そのため、ムシュは亜寒帯冬季少雨気候(Dsa)に分類される。

 このように夏季に降水が少ない気候は温帯以外では限定的ではあるが一応は存在しており、地形によるもの、標高が高い所に少し分布するほどである。

 以上、夏場に降水が少ない月についてでした。

 

参考文献

ジャフナ Wikipedia (ジャフナの雨温図)

https://ja.wikipedia.org/wiki/ジャフナ

Mus Wikipedia 5.Climate (ムシュの雨温図)

https://en.wikipedia.org/wiki/Muş