DS930810のブログ

筆者は自然や自然現象に関心が相当あるので自然に関する記事(天文, 地理, 生物)を書いていきたいと思います。かつては1日2記事を適当な時間に投稿していましたが今のところは午後6時に1記事投稿する形にしています。

金をも溶かす王水 その理由は酸化力が非常に強いから

今回は王水について書いて行きたいと思う。

 

1. 王水とは

王水は非常に酸化力の強い液体のことであり、その酸化力は最も反応性の低い金属である金でさえ溶解するほどである。

金は全物質中で最もイオン化傾向が小さい金属であるので空気中に放置しても酸化することはまずありえず、様々な薬品とも反応をしない。

更に他の金属とは違い、外見も黄金色をしているので古代より高価な金属として知られており、それは現代でも変わらない。

そして、今回紹介する王水は非常に安定である金でさえ反応させるほどの酸化力があり、金を王水の中に混入すると溶解するほどである。

 

では、ここからは金が王水に溶解する理由について書いて行きたいと思う。

王水は濃硝酸と濃塩酸を1:3の割合で混合するとお互いが反応することにより生成し、この時以下のような反応が起こっている。

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王水は先ほども書いたように濃硝酸と濃塩酸を1:3の割合で混合することにより生じるがこれらの物質を反応させると塩素と塩化ニトロシルが1当量, 水が2当量発生し、この中では塩素と塩化ニトロシルが酸化性の強さに関与している。

塩化ニトロシルは上記のように塩素と窒素, 窒素と酸素が結合した3原子分子であり、窒素と酸素間は二重結合により結合している。

そして、塩化ニトロシル単体は黄赤色の気体であり、沸点はそこまで低くは無いが100℃にまで熱すると分解するようにあまり安定な気体ではなく、どちらかというと不安定な気体である。

不安定な気体ということは反応性が高い気体とも言えるので当然人体にとっては有害な気体であるので塩化ニトロシルは有毒物質である。

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このように塩化ニトロシルは100℃という低温でも簡単に分解するほどであり、塩素と一酸化窒素に分解する。

そして、塩化ニトロシルは不安定な物質であると同時に最強クラスの酸化力を有しており、この酸化力は先ほども書いたように王水の酸化力であるので金をも溶かすほどである。

では、実際に王水と金の間ではどのような反応が起きているのだろうか?

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王水と金との反応は以下のようになっており、総合的に見てみると金は塩化ニトロシル, 塩化水素, 塩素の3物質と反応しており、これらの物質はいずれも塩素を含んでいる。

そして、反応後は一酸化窒素とテトラクロリド金(Ⅲ)酸が生成しており、このテトラクロリド金(Ⅲ)酸こそが王水と発生した後の金である。

この物質は錯体と呼ばれている複雑な物質であり、アルミニウムを塩基と反応させた後に生成するテトラヒドロキソアルミン酸ナトリウムの中の陰イオンであるテトラヒドロキソアルミン酸イオンも錯体の一種である。

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上図の物質が錯体であり、錯体は中心金属イオンと配位子と呼ばれる分子, またはイオンが中心金属イオンを囲む形となっている。

そして、錯体はイオンになる傾向があるので陰イオンの場合は陽イオンが、陽イオンの場合は陰イオンが対イオンとなっており、電荷を釣り合わしている。

王水に溶かした後のテトラクロリド金(Ⅲ)酸は陰イオンであるので水素イオンによって電荷が釣り合っており、水分子を含んだ形となって溶液中に析出する。

また、名称のテトラクロリド金(Ⅲ)酸についてだがここでの「クロリド」は塩化物イオンのことを指しており(Chloride=Chlorine(塩素)+ide(陰イオン)の意),「テトラ」とは4, そして「金(Ⅲ)」は金の3価の陽イオン(Au3+)のことであるので名称全体では3価の金イオンが4つの塩化物イオンに挟まれた酸であることを意味している(酸とは水素イオンを生じるものであり、対をなしている陰イオンは「~酸」イオンと呼ばれることが多い, 例: 硝酸イオン, 硫酸イオン)。

 

以上のことをまとめると王水は塩化ニトロシルを含んだ複数の塩素を内包する物質が存在しており、これらの物質が金と反応することで金の酸化数が0から3に上昇し、イオン化することにより金は王水と反応するのである。

そして、イオン化するということは溶解しているということであるので金は王水に溶けるのである。

 

 

 

2. 他の物質との反応

ここからは他の物質との反応について書いて行きたいと思う。

王水は金と反応するので他の物質とも反応しそうに見えるが実は王水とは反応しない物質もあり、銀は王水とは反応しない。

ここで、銀と反応しない理由を書く前に金属のイオンになりやすさ、即ちイオン化傾向について書いて行きたいと思う。

イオン化傾向は以下のようになっており、リチウムが最もイオン化傾向が小さい、即ち最も反応性が高いとも言える。

Li>K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb>(H)>Cu>Hg>Ag>Pt>Au

このように金は最もイオン化傾向が小さく反応しずらい金属であり、銅以降の物質は水素よりもイオン化傾向が小さいので酸と反応しても水素が発生することは無い。

これらの物質がイオン化する状況は水溶液の酸化力によるものであり、例えば銅が硝酸と反応する時は水素ではなく一酸化窒素が発生し、これは酸の性質ではなく硝酸の強力な酸化力によって発生している。

そして、この反応は鉛(Pb)以前のイオン化傾向が水素よりも大きい物質では起こらないようにも見えるが実は起こっている。

けれども水素の脱イオン化のほうが優先されるので割合的には水素の脱イオン化のほうが圧倒的に大きく、そのため水素しか発生しないように見えるだけである(ほとんど水素しか発生していないが)。

 

このように酸化力の大きな物質とは水素よりもイオン化傾向が小さな金属でもイオン化することが可能となり、実際に王水はその反応を起こしているが実は銀とはあまり反応を起こさない。

王水中には塩素が多量に含まれており、この塩素が銀と反応をすることで安定な塩化物イオンが銀の表面に生じることになる。

そしてこの塩化物イオンが銀と王水との反応を妨げることになるので銀とはあまり反応を起こさず、表面だけが塩化物となるだけであり錯体を形成することも無い。

他にも原子番号73番のタンタルは酸に対する耐性が非常に強いので反応を起こすことも無く、原子番号77番のイリジウムの場合は粉末状にしないと溶解することは無い。

 

このように王水は酸化力は極めて強いものの全ての物質と反応することは無く、銀のように表面に塩化物を形成するものもあればタンタルのようにそもそも反応しないものもあり、結局は金属との相性が溶解するかしないかを決めていると考えられる。

まあ、リチウムのように反応性が極めて高いものはどのような物質とも反応すると言っても過言では無いが(イオン化傾向とは関係のない有機物とは反応しないことも多いが)。

 

 

 

以上、王水についてでした