DS930810のブログ

筆者は自然や自然現象に関心が相当あるので自然に関する記事(天文, 地理, 生物)を書いていきたいと思います。かつては1日2記事を適当な時間に投稿していましたが今のところは午後6時に1記事投稿する形にしています。

最も南に位置する2等星 沖ノ鳥島からは観測できるのか?

最も北に位置している恒星は言うまでも無いが北極星であり、赤緯は89度と非常に高い。

そして、北極星は2等星であり最も有名であるかつ最も北に位置している2等星であるが最も南に位置している2等星は何なのだろうか?

 

1. 日本から見えない1等星

北天に位置している恒星には北斗七星のように比較的明るい恒星が多くあるが実は1等星以上の恒星は極端に北に位置しているものは存在していない。

1等星以上の恒星の中で最も北に位置している恒星はぎょしゃ座のα星カペラであり、カペラは北緯45度59分程度と高いと言えば高いが極端に高いわけでもなく、札幌市でも年がら年中見えるわけでは無い。

そして、2番目に赤緯が高い恒星は絶対等級が極端に強いことで有名なデネブであり、こちらの高さもカペラとは大差がない。

つまり、1等星以上の恒星の中には東京都から年がら年中見える恒星は存在しておらず、東京から年がら年中見える恒星の中で最も明るい恒星はおおぐま座のアリオトであり、この恒星は北斗七星で最も明るい恒星であると同時におおぐま座で最も明るい恒星である。

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アリオトは北斗七星のひしゃくの柄の中で最もひしゃくに近い所に位置している恒星であり、地球から見た明るさは1.77等と比較的明るく、この明るさは東京から一年中見える恒星の中では最も明るい。

また、二番目に明るい恒星は同じ北斗七星のドゥーベであり、この恒星はおおぐま座のα星であるが明るさ的にはε星のアリオトの次となる。

ちなみに北極星は東京都から年がら年中見える恒星の中では3番目に明るい恒星であり、地球から見た明るさは1.97等とドゥーベ(1.79等)と比較すると結構暗い。

 

ここまでは東京都から年がら年中見える恒星について書いてきたがここからは東京都から観測することが不可能な恒星について書いて行きたいと思う。

東京都(東京都庁)の緯度は大体35度41分程度であるので単純計算で考えると南緯54度19分よりも南の恒星は観測できない計算となる。

そして、この緯度よりも南に位置している1等星以上の恒星は太陽から5光年以内に位置している唯一の恒星であるリギル・ケンタウルス、リギル・ケンタウルスの隣で輝いているが距離が非常に遠く、そして強大な絶対等級を有しているハダル、エリダヌス川の終点であるアケルナル、南十字座で最も明るく、そして1等星の中で最も熱いアクルックス、同じく南十字座で輝くベクルックスの5つである。

ちなみに全天で2番目に明るく、そしてマイナス5等をも超える強大な絶対等級を有するカノープスは東京都からはギリギリ観測することは可能である。

このように東京都から見えない1等星以上の恒星は非常に多く、南の恒星には明るいものが数多くあるがこの中で最も南に位置しているものはどれだろうか?

それはアクルックスであり、この恒星は南十字の中でも南の方角の役割を果たしている恒星である。

 

しかし、これらの恒星は沖縄県あたりにまで行くと全て観測が可能な恒星ばかりであり、2等星の中には沖縄県でも観測が出来ない恒星も少なからず存在している。

では、それらの2等星はと言うと...

 

 

 

2. 巨大で南に位置しているK型輝巨星

全2等星の中で最も南に位置している恒星について書く前に2番目に南に位置している恒星について書いて行きたいと思う。

2等星の中で2番目に南に位置している恒星は南の三角座に位置しているアトリアという恒星であり、この恒星は南の三角座と言う聞いたことも無いような星座の中では最も明るく、1.91等もの明るさで観測することが可能である。

この明るさは北極星よりも明るく、そしてこの恒星は表面温度が太陽と比較するとかなり低いために橙色の恒星として観測することが可能である。

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アトリア(Atria)の位置はリギル・ケンタウルスとハダルと比較的近い位置にあり、地球から見た明るさも比較的明るいので南半球に行った際に見つけることはさほど難しくはないと考えられる。

 

そして、アトリアは地球からの距離が391光年程度と比較的遠く、この距離はハダルの距離とほぼ同じぐらいである(ハダルは392光年)。

そのため、アトリア-ハダル間の距離は130光年程度しか無く、アトリアからハダルを観測するとマイナス1.79等とシリウスよりも明るく観測することが可能となる。

また、アトリアは距離が離れている割には地球からの明るさも明るいので絶対等級もマイナス3.48等と相当強く、もう少し明るければ超巨星となっていたと考えられる(アトリアよりも若干明るい超巨星としてはほ座のスハイル(Suhail, λ Velorum)が挙げられ、この恒星のスペクトル型はK型であり、絶対等級はマイナス3.88等にも及ぶ)。

 

このようにアトリアは相当明るい恒星であるが表面温度は先ほども書いたように太陽と比較しても低く、スペクトル型はK2ⅡのK型(2番目に表面温度の低い型)輝巨星であるので直径は太陽の130倍にも及び、質量も太陽の7倍もある。

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上図がアトリアと太陽の大きさの比。

太陽はアトリア(巨大な橙色の球)の左にある黄色い小さな点であり、アトリアがいかに巨大な恒星であるかが分かる。

そして、このように中質量であるかつ高齢化が進行しているので今後は長い年月をかけず、ゆっくりとしぼんでいき、最終的には大規模な白色矮星になると考えられている。

 

ここまではアトリアの物理的性質について書いてきたが今度はアトリアの赤緯について簡潔に書いてきたいと思う。

アトリアの赤緯はマイナス69度ほどであるので地球から観測するには北緯21度よりも南の位置からしか観測することはできず、この位置は北回帰線よりも低い。

そのため、日本からアトリアを観測するには沖ノ鳥島に行くしか無く、しかも沖ノ鳥島は上陸不可能であるので実質日本領土からアトリアを観測することは不可能である。

このようにアトリアは非常に南に位置しており、日本から観測することは不可能であるが実はアトリア以上に南に位置している2等星もある。

 

 

 

3. 最南の2等星はアルゴ座で2番目に明るい

先ほどまでは2番目に南に位置している恒星について書いてきたが今度は最も南に位置している恒星について書いて行きたいと思う。

最も南に位置している恒星の赤緯はマイナス69度43分であるので実はアトリアとは大して赤緯は変わらないが実は沖ノ鳥島からも観測することが不可能であるので実質この恒星日本国土から唯一観測が不可能な恒星となる。

そして、その恒星とはかつて存在したがあまりにも大きすぎて3つの星座に分割されたアルゴ座の中で2番目に明るい恒星であり、この恒星はカノープスと同じりゅうこつ座に位置している恒星である(アルゴ座はりゅうこつ座, ほ座, とも座の3つに分割された)。

では、その恒星の名前は何かというとミアプラキドゥス(Miaplacidus)と言う名称であり、りゅうこつ座のβ星である。

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ミアプラキドゥスは画像下の恒星であり、偽十字と言われている南十字のまがい物の下に位置している。

ここで偽十字について簡単に説明していきたいと思うが偽十字は4つの2等星によってなっており、全てが2等星である上に大きさも大きいので本物と勘違いしやすく、中世では脅威となっていたほどである。

ちなみに恒星名はδ星のアルセフィナ(Alsephina)、ε星のアヴィオール(Avior)、ι星のアスピディスケ(Aspidiske)、そしてκ星のマルケブ(Markeb)の4つで構成されている。www.rigelultragiant.com

 ずいぶん前に書いた記事であるがよかったら参照してください。

※δ星の名称であるアルセフィナはつい最近発見した伝統的な名称であり、上記の記事ではこの名称は書いていないので一応注意していただきたい。

 

少し偽十字の話になってしまったがここからは元の話に戻っていきたいと思う。

この恒星は地球から見た明るさは1.68等と非常に明るく、この明るさは2等星の中でもアダーラ, カストル, ガクルックス, シャウラ, ベラトリックス, エルナトに次ぐ明るさであり、全天で28番目に明るい恒星である。

しかし、アルゴ座の主星は全天で2番目に明るいカノープスであるので主星と比較すると11パーセント程度の明るさしか無く、このことはおおいぬ座のアダーラでも同じことが言える(主星と比較すると暗いこと)。

更にアダーラの場合は絶対等級の面ではシリウスに圧勝であったがミアプラキドゥスの場合は絶対等級の面でも大幅に負けており、大体マイナス1.02等程度しかない。

 

ミアプラキドゥスは地球からの距離が大体113.2光年程度離れている恒星であり、先ほどは絶対等級は大したことは無いような趣旨で書いたがそれはあくまでカノープスと比較した場合の話であり、この恒星は絶対等級がマイナス1を超えている恒星の中では最も太陽系に近い恒星である。

つまり、ミアプラキドゥスよりも太陽系に近い恒星の中ではミアプラキドゥスよりも明るい恒星は無いのでミアプラキドゥスは113.2光年以内の恒星の中では最も明るい恒星である。

そして、ミアプラキドゥスの直径は太陽の6倍程度と推測されており、質量に関しては太陽の3.5倍程度であると推測されている。

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ミアプラキドゥスは太陽と比較すると大きいがアトリアのように相当な高齢の天体ではないので極端には大きくはない。

 

ちなみにミアプラキドゥスのスペクトル型はA1Ⅲ型の巨星であり、このスペクトル型はシリウスと同じA1型(シリウスは主系列星だが)であるので色だけ見るとシリウスのような青白として観測することが出来る。

 

 

 

以上、最も南に位置している2等星についてでした。