今回はアルミニウムについて書いて行きたいと思う。
現代ではアルミニウムは1円玉をはじめとして様々なところで利用されており、鉄と並ぶほど重要な金属となっています。
1. アルミニウムとは
アルミニウムは現代では見ないことがないほどあふれた金属であり、いろいろな用途で活用されているがアルミニウムがどのような金属であるかはあまり知られていない。
アルミニウムは元素の一つであり、原子番号は13番と非常に小さく、金属元素中ではリチウム, ベリリウム, ナトリウム, マグネシウムに次いで小さい。
そして、これほど原子番号が小さいということは重さも当然軽く、アルミニウム原子の重さは1 mol (6.02 × 10^23 個)あつまった時で27 gしかなく、この重さは原子番号が倍である鉄の半分を若干下回っている。
更にアルミニウムの密度は結晶構造の関係から金属としてはかなり小さく、水の2.7倍ほどしか無く、それに対して鉄の密度は7.87 g/㎤とアルミニウムの3倍近くもある。
つまり、アルミニウムは鉄などの金属と比較するとかなり軽い金属であり、外見だけ見るとそこまで変わらないが金属としては非常に軽い部類に入る。
しかし、アルミニウムは軽いだけではなく、強度が弱い、酸などに弱いなどの弱点があるが強度のほうは合金化されることによってある程度は克服されている。
ここで、アルミニウムと鉄はよく比較されていると思われるが実際には鉄とアルミニウムは
- 金属であること
- 原子番号が13の倍数であること
- 有名であること
以外にはまるで共通点が無く、実際には全く関係のない金属である。
では、アルミニウムと鉄には関連性がない理由について書いて行きたいと思う。
まず第一の理由としてはアルミニウムは典型元素であり鉄は遷移元素であるという点にある。
典型元素は電子軌道にd電子が関わらない元素のことであり、d軌道とは原子にある軌道の1つである。
原子の軌道は小さい順からs, p, d, f とあり、d軌道は3番目に小さく、第三周期から現れるものである。
しかし、アルミニウムは第三周期の金属であり、一見3d軌道がかかわっているようにも見えるがエネルギーの関係より3d軌道は空の状態であるためアルミニウムの軌道は小さい順から1s, 2s, 2p, 3s, 3p となっており、それぞれ電子が2, 2, 6, 2, 1つ入っている状態となっている。
それに対して鉄の場合は小さい順から1s, 2s, 2p, 3s, 3p, 4s, 3d となっているために3d軌道にも電子がしっかりと入っているため鉄は遷移金属である。
このようにアルミニウムの場合は原子番号が小さすぎるために電子の数も少なく、そのため3d軌道には電子が1つも無いが鉄の場合は原子番号が大きく、電子数も多いので3d軌道に電子が6つも入っている状態となっている。
また、電子は1軌道当たり最大で2つ入ることが出来るが軌道は1電子のほうが安定であるので同列の場合にはなるべく電子が2つそろわない状態となるために鉄の3d軌道には電子が1つの軌道が4つ、2つの軌道が1つとなっている。
そして、このことが金属の陽イオン化した時の色に関係しており、陽イオンとなる際には3d軌道内でもエネルギー順位が変わり、その時に光を吸収することにより遷移金属の陽イオンは色がつくようになっている。
このように書くと訳が分からなくなるが簡潔に言うと3d軌道内に電子が入っている状態の金属原子(10個の場合を除く)は陽イオンになった際に色がつくと言う訳である。
そのためにd軌道に電子が無いアルミニウムイオンには色が無く、鉄イオンには色があるのである(Fe^2+イオンは淡緑色、Fe^3+イオンは黄褐色)
そして、他にも融点も大きく異なり、アルミニウム金属の融点は660 ℃程度に対して鉄金属の融点は1540 ℃ほどにも及び、鉄のほうがより液体になりにくいのである。
更に族も異なり、アルミニウムは13族で同じ族の元素にはホウ素, ガリウム, インジウム, タリウム, ニホニウムがあるのに対して鉄の場合はルテニウム, オスミウム, ハッシウムがある。
このように一般的に使用されている二金属も元素の観点から見ると全く異なることが分かる。
2. 酸にもアルカリにも溶ける金属
アルミニウムの特徴としては酸にもアルカリにも溶ける性質を持っており、どちらに溶かした場合にも水素を発生する。
このように書くと金属が溶けて両方とも水素が発生するので同じような反応が起こっているようにも見えるが実際には全く異なる反応が起きている。
では、初めに酸に対する反応について書いて行きたいと思う。
アルミニウムを酸に溶かした時の反応はかなり単純であり、他の金属の場合にも同様の反応が起こる。
アルミニウムを酸に溶かした時に起こる反応は水溶液中に多量に存在する水素イオンがアルミニウムと反応することによって電子を獲得し、水素分子となると同時にアルミニウムは電子を失うこととなるので陽イオンと化す。
このようにアルミニウムは溶けているのではなく、電子を水素イオンによって奪われ、単純にアルミニウムイオンとなっているだけである。
そして、金属によっては陽イオンへなりづらいものもあり、陽イオンへのなりやすさのことをイオン化傾向と呼び、イオン化傾向が大きい順に書くと
Li, K, Ca, Na, Mg, Al, Zn, Fe, Ni, Sn, Pb, H, Cu, Hg, Ag, Pt, Au
となっており、アルミニウムは金属の中でも比較的陽イオンになりやすい傾向があり、水素よりも陽イオンとなる傾向があるため水素イオンが多量に存在する酸に混入すると水素に変わり陽イオンとなるのである。
つまり、この時発生する水素はアルミニウムよりもイオン化しづらいが故に発生したものであり、水素よりもイオン化傾向が大きい金属は酸と反応すると水素を発生し、陽イオンと化すのである。
また、水素よりもイオン化傾向が小さい元素を強酸に混入した時も反応が発生する場合もあるがあれらの反応は水素イオンが水素分子に還元されている反応ではなく、また別の反応である(例: 金と王水の反応)。
以上が酸との反応であるが今度はアルカリとの反応について書いて行きたいと思う。
アルカリとの反応はどの金属とも起こるのではなくアルミニウム以外には亜鉛などの金属でも発生し、逆にリチウムとアルカリは反応をすることは決してない。
その理由は酸との反応とは全く異なる反応が起きているからであり、酸との反応と比較すると若干複雑な反応が起きているのである。
アルカリ水溶液中には多量の水酸化物イオンが存在しており、当然この水酸化物イオンと反応するわけだがその反応とは
2 Al + 2 OH^- + 6 H2O → 2 Al(OH)4 + 3 H2
であり、確かに水素は発生しているがアルミニウムイオンにOHが4つもくっついた状態となっている。
このOHが4つくっついたイオンは「テトラヒドロキソアルミン酸イオン」と言う名称であり、アルミニウムイオンに水酸化物イオン(OH)が配位した状態となっている。
つまり、この反応は金属イオンに水酸化物イオンが配位する反応であり、アルミニウムは水酸化物が配位する金属であるためこの反応が起こるのであり、このような性質を持つ金属のことを「両性金属」と呼び、アルミニウム, 亜鉛, 錫, 鉛が知られている。
このようにアルミニウムとアルカリは反応するが酸との反応とは違い、水素は副産物的に発生するだけに過ぎない。
けれども水素が発生する以外にも共通点があり
- アルミニウム2原子から3分子の水素が発生する
- アルミニウムがイオンとなる
と言うものである。
また、言うまでも無いが一円玉を酸やアルカリと反応させることは犯罪であるので決してやらないようにしましょう。
以上、アルミニウムについてでした。